トランプ政権、イラン反政府デモ介入を強化
はじめに
イランで2025年末から続く大規模な反政府デモが激化する中、トランプ米大統領が軍事介入を繰り返し示唆し、国際社会の注目を集めています。「デモ参加者を殺害すれば軍事的措置を取る」と警告し、14日以内の弾圧停止を求める最後通告を突きつけました。
1月初旬にベネズエラのマドゥロ大統領を拘束したトランプ政権は、イランでも体制変革を視野に入れた動きを見せています。イラン政府は米国とイスラエルがデモの背後にいると主張し、攻撃を受ければ反撃すると警告しています。
本記事では、イラン反政府デモの現状とトランプ政権の対応、今後の中東情勢への影響について解説します。
イラン反政府デモの経緯
経済危機から政権打倒要求へ
2025年12月28日、テヘランのバザール(市場)で始まった抗議活動は、急速にイラン全土に拡大しました。当初はインフレや食料品価格の高騰、イラン・リヤルの急落に対する経済的不満が発端でしたが、数日のうちに現在の政治体制の終焉を求める運動へと発展しました。
デモは大都市だけでなく地方の小都市にも広がり、学生、労働者、女性、少数民族など幅広い層が参加しています。フォーリン・ポリシーの分析によると、2022年のマフサ・アミニ抗議運動と異なり、今回は社会改革ではなく明確な政権交代を求めている点が特徴的です。
死者500人超、弾圧強まる
2週間に及ぶ治安部隊との衝突で、500人以上が死亡したと伝えられています。危機感を深めた最高指導者ハメネイ師はデモを「トランプを喜ばせるだけだ」と非難し、治安部隊に「退くな」と檄を飛ばしました。
検事総長はデモ参加者に「神の敵」というレッテルを貼り、死刑に値すると威嚇しています。1月6日には、イラクのシーア派民兵組織約800人が抗議活動の鎮圧支援のためにイランに派遣されたと報じられました。
トランプ政権の対応
軍事介入を繰り返し示唆
トランプ大統領は1月5日、「以前のように人々を殺害し始めたら、米国の強烈な打撃を受けるだろう」と述べ、イラン政府がデモ隊を弾圧すれば軍事介入する可能性を示唆しました。
さらに「14日以内の鎮圧停止」という事実上の最後通告を突きつけ、欧州の米軍拠点では大型輸送機(C-17)の配備が確認されるなど、具体的な軍事介入の準備が観測されています。
経済制裁も強化
トランプ大統領は1月12日、「イランと取引する国は米国とのあらゆるビジネスに25%の関税を課す」と表明しました。イランの石油輸出を阻止し、収入源を断つ圧力をかける狙いがあります。
「遅かれ早かれ、我々はあなた方の石油輸出を阻止する」というトランプ氏のメッセージは、軍事と経済の両面からイランを追い詰める姿勢を鮮明にしています。
デモ隊への支援表明
トランプ大統領は1月13日、イランの抗議者に対し「まもなく支援が届く」と述べ、デモの継続を促しました。米国が体制変革を支援する姿勢を明確にした発言として受け止められています。
ベネズエラ攻撃との連続性
マドゥロ大統領拘束の衝撃
2026年1月初旬、米国は「西半球の民主主義とエネルギー安全保障の回復」を名目に、特殊部隊を投入してベネズエラのマドゥロ大統領を拘束しました。この電撃的な軍事行動は世界に衝撃を与え、トランプ政権の「ドンロー主義」(西半球支配戦略)を象徴する出来事となりました。
共和党支持層の7割がベネズエラ攻撃を支持しているとの調査もあり、トランプ政権は国内の支持を背景に強硬姿勢を維持しています。
イランでも体制変革を狙う
イランの抗議者たちは、ベネズエラでの成功を見て勢いづいています。「自由」を求めるデモ隊は、マドゥロ大統領の拘束と重ね合わせ、ハメネイ師の排除まで要求する事態に発展しました。
トランプ政権がベネズエラに続いてイランでも体制変革を成功させれば、国際秩序に大きな影響を与えることになります。一方で、ベネズエラとイランでは状況が大きく異なり、イランへの軍事介入ははるかに複雑で危険を伴うとの指摘もあります。
イラン政府の反応
米国とイスラエルを非難
イラン指導部は、デモの背後に米国とイスラエルがいると主張しています。外部からの「陰謀」だとして弾圧を正当化する一方、国内の経済問題や政治への不満には向き合っていません。
イラン政府は米国から攻撃を受ければ、中東各地の米軍基地などに反撃すると警告しています。2025年6月には、米軍によるイランの核関連施設への空爆に対し、カタールの米軍基地への報復攻撃を行った経緯があります。
対話の余地も示唆
強硬姿勢を見せる一方で、イラン政府は対米交渉の準備があるとも表明しています。経済制裁の解除や核合意の再交渉を念頭に置いた発言と見られますが、トランプ政権が応じるかは不透明です。
2025年6月の核施設空爆
米軍がイランを空爆
2025年6月22日、米軍はイスラエルの要請に基づき、イランの核関連施設3カ所を空爆しました。これに対しイランは24日にカタールの米軍基地へ報復攻撃を行いましたが、外交ルートを通じて事前に通報するなど、エスカレーションを避ける配慮も見せました。
米国防総省は、この空爆でイランの核兵器開発は「1〜2年遅れた」と評価しています。停戦は翌25日に発効しましたが、両国間の緊張関係は続いています。
今後の展望
軍事介入のリスク
トランプ政権がイランへの軍事介入に踏み切れば、中東全体が不安定化するリスクがあります。イランはベネズエラとは比較にならない軍事力を持ち、周辺地域にシーア派民兵組織のネットワークを持っています。
ホルムズ海峡の封鎖や中東各地の米軍基地への攻撃など、報復の選択肢も多く、原油価格の高騰など世界経済への影響も懸念されます。
体制崩壊の可能性
一方、デモが継続・拡大し、治安部隊の離反などが起きれば、イラン・イスラム共和国体制の崩壊につながる可能性もあります。ただし、体制崩壊後の権力の空白が新たな混乱を招くとの懸念も指摘されています。
日本への影響
イランをめぐる緊張は、エネルギー安全保障の観点から日本にも影響を与えます。中東依存度の高い日本にとって、ホルムズ海峡の安定は死活的に重要です。事態の推移を注視する必要があります。
まとめ
イランで続く大規模反政府デモに対し、トランプ政権は軍事介入を示唆して圧力を強めています。ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束したばかりのトランプ政権は、イランでも体制変革を視野に入れた動きを見せており、中東情勢は緊迫の度を増しています。
500人以上の死者を出しながらも続くデモは、イラン国民の体制への不満の深さを示しています。軍事介入か、体制崩壊か、あるいは外交的解決か、今後の展開は予断を許しません。中東の安定と世界のエネルギー安全保障に大きな影響を与える事態として、引き続き注視が必要です。
参考資料:
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