Tech Research Lab

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by nicoxz

TSMC好決算でNYダウ反発、AI半導体需要の強さ示す

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はじめに

2026年1月15日、米国株式市場はTSMC(台湾積体電路製造)の好決算を受けて大きく反発しました。世界最大の半導体受託製造企業であるTSMCが発表した2025年10-12月期決算は、売上高・利益ともに市場予想を上回り、AI半導体需要が引き続き堅調であることを示しました。

この決算発表は、AI関連投資への不安が広がっていた市場に安心感をもたらし、半導体セクター全体を押し上げる結果となりました。本記事では、TSMCの決算内容、市場への影響、そして今後のAI半導体市場の見通しについて詳しく解説します。

TSMCの2025年10-12月期決算の詳細

市場予想を上回る業績

TSMCは2025年10-12月期において、売上高337億ドル(約1兆460億台湾ドル)を達成しました。これは市場予想の1兆340億台湾ドルを大きく上回る数字です。粗利益率は62.3%、営業利益率は54%と、いずれも高い水準を維持しています。

2025年通期では、売上高が前年比31.6%増という驚異的な成長を記録しました。この成長の大きな原動力となったのが、AI向け半導体の需要拡大です。

AI加速器が売上の中核に

魏哲家CEOによると、AI加速器(アクセラレーター)の売上高は2025年の総売上高の十数パーセント(high-teens)を占めるまでに成長しました。さらに重要なのは、この分野の2024年から2029年までの年平均成長率が50%台半ばから後半に達する見込みであるという点です。

先端プロセス技術への投資も着実に進んでいます。2025年10-12月期のウェーハ出荷では、3nmプロセスが約28%、5nmが35%、7nmが14%を占めました。先端技術(7nm以下)が2025年通期のウェーハ売上高の77%を占めており、最先端半導体への需要集中が鮮明になっています。

2026年の強気な見通し

過去最大級の設備投資計画

TSMCは2026年の設備投資を520億〜560億米ドルと発表しました。これは2025年から少なくとも25%程度の増加となり、過去最大級の投資規模です。この大規模投資は、AI半導体需要が今後も継続的に拡大するというTSMCの強い自信を反映しています。

2026年の売上高についても30%近い成長を見込んでおり、これはアナリスト予想平均を上回る水準です。経営陣は2026年第1四半期の売上高を346億〜358億ドルと予想しており、前年同期比約38%増という高成長が続く見通しです。

次世代プロセス技術の量産

技術面では、2nm(N2)プロセスが2025年第4四半期に量産を開始しました。さらに進化したN2PおよびA16プロセスは2026年下半期に量産予定となっています。これらの最先端プロセス技術は、次世代のAIチップに不可欠であり、TSMCの技術的優位性を維持する上で重要な役割を果たします。

米国株式市場への影響

主要指数の動き

TSMC決算発表を受けた2026年1月15日の米国株式市場は、幅広いセクターで上昇しました。ダウ工業株30種平均は118.30ポイント(0.24%)上昇し、49,267.93ドルで取引を終えました。

S&P500指数は0.55%上昇して6,964.54ポイント、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.84%上昇して23,670.02ポイントとなりました。特筆すべきは、小型株で構成されるラッセル2000指数がS&P500を10営業日連続で上回ったことで、これは1990年以来最長の記録となりました。

半導体関連株の急騰

TSMCの米国預託証券(ADR)は5.6%以上上昇しました。この好決算を受けて、半導体セクター全体に買いが広がりました。

エヌビディアは2%上昇、ブロードコムとマイクロンはそれぞれ1.4%と1.9%上昇しました。特に半導体製造装置メーカーの上昇が顕著で、アプライドマテリアルズ、ラムリサーチ、KLAがいずれも7%以上の上昇を記録しました。

欧州市場でもオランダのASMLホールディングスが8%近く上昇し、時価総額が5,000億ドルを突破する場面がありました。

金融セクターも好調

同日発表されたゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの決算も市場予想を上回り、金融セクターの上昇に寄与しました。ゴールドマン・サックスは四半期配当の引き上げも発表し、投資家心理を改善させました。

AI半導体需要の現状と展望

需要は依然として旺盛

Counterpoint Researchのシニアアナリスト、Jake Lai氏は「AI需要は依然として非常に強く、サーバー業界全体のチップ需要を牽引している」と分析しています。2026年はAIサーバー需要のさらなる「ブレイクアウトイヤー」になるとの予測も出ています。

TSMCの決算が示したのは、AI半導体市場の成長が一時的なブームではなく、構造的な需要拡大であるということです。データセンターの拡張、生成AIの普及、エッジAIの発展など、複数の要因が重なり、半導体需要を押し上げています。

生産能力の逼迫

一方で、魏哲家CEOは「生産能力は非常にタイトな状況が続いている」と述べており、増産が需要に追いついていない現状も明らかになりました。この需給ギャップは、TSMCにとって価格交渉力の維持につながる一方、顧客企業にとってはチップ調達の課題となる可能性があります。

注意点・展望

地政学リスクへの警戒

TSMCの業績は好調ですが、投資家は地政学的リスクにも注意を払う必要があります。台湾海峡をめぐる緊張や、米中間の半導体を巡る対立は、TSMCの事業に影響を与える可能性があります。

TSMCは米国アリゾナ州や日本での工場建設を進めていますが、依然として生産能力の大部分は台湾に集中しています。サプライチェーンの分散化は進んでいるものの、完全なリスク軽減にはまだ時間がかかります。

中国向け規制の影響

前日の1月14日には、中国税関当局がエヌビディアのAI向け半導体「H200」の輸入許可について不透明な姿勢を示したとの報道があり、一時的に市場が動揺する場面がありました。米国の対中半導体輸出規制は今後も強化される可能性があり、これがTSMCや半導体業界全体に与える影響については引き続き注視が必要です。

まとめ

TSMCの2025年10-12月期決算は、AI半導体需要の堅調さを改めて証明する内容となりました。売上高・利益ともに市場予想を上回り、2026年の設備投資計画と売上高見通しも強気な数字が示されました。

この決算発表を受けて米国株式市場は反発し、特に半導体関連株が大きく上昇しました。AI技術の発展に伴う半導体需要の拡大は今後も続くと予想されており、TSMCはその中心的な受益者としての地位を維持しています。

ただし、地政学リスクや規制環境の変化には引き続き注意が必要です。投資家は短期的な株価変動だけでなく、中長期的な業界動向を見据えた判断が求められます。

参考資料:

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