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by nicoxz

未婚女性6割超が子ども望まず仕事不安が少子化に映す構造の深層

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はじめに

「子どもを望まない未婚女性が6割を超え、初めて男性を上回った」というロート製薬の調査結果は、単なる価値観の変化として片づけにくい重さがあります。背景には、結婚観や家族観の多様化だけでなく、働き方、賃金、家事育児分担、妊娠出産に関する情報不足が折り重なっています。

実際、女性の就業は拡大しています。それでも「仕事を続けながら産み育てられる」という安心感が十分に高まっていないなら、出生意欲が弱まるのは不思議ではありません。本稿では、妊活白書2025の数字を出発点に、なぜ女性の不安が男性を上回ったのか、どこに制度の詰まりがあるのかを整理します。

調査が映した変化の中身

子どもを望まない理由の中心にある仕事と経済

ロート製薬の「妊活白書2025」によると、18〜29歳の未婚男女で「将来、子どもが欲しくない」と答えた割合は62.6%に達し、女性は64.7%で初めて男性を上回りました。さらに、子どもを望む若年未婚層でも、第一子を30歳までに望む割合は2018年の39.0%から2025年には25.2%へ低下し、希望年齢の後ろ倒しが進んでいます。

注目すべきは、女性が男性より強く不安視している項目です。調査では「経済的な負担」と「仕事のキャリアへの支障」が大きく、子どもを持つかどうかだけでなく、情報収集の開始時期や妊活着手の遅れにも影響していました。つまり、出産・育児そのものへの拒否というより、出産後の生活設計が読めないことが抑制要因になっていると読み取れます。

就業拡大と安心感不足のねじれ

総務省の労働力調査をみると、女性の就業はこの数年で着実に広がってきました。女性の就業拡大そのものは進んでいます。にもかかわらず出生意欲の改善につながっていないのは、就業機会の拡大と、出産後もキャリアを損なわず働けることが、まだ同義ではないからです。

国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査でも、未婚者の結婚や出産に関する希望と現実の間には、経済基盤や就業の安定、生活コストの問題が横たわることが繰り返し示されてきました。若年層にとって、子どもを持つかどうかは「気持ち」の問題というより、雇用と家計の耐久力の問題になっています。

女性の不安が強まりやすい理由

キャリア形成期と出産適齢期の重なり

ロートの調査では、30代前半で出産した妊活経験女性の4割超が、希望していた時期より妊活開始が遅れたと答えています。背景には知識不足に加え、仕事の都合やキャリアアップの優先がありました。これは、企業で責任が増え始める時期と、妊娠しやすさを意識しやすい時期が重なっていることを示します。

この重なりが男性より女性に重く出やすいのは、妊娠・出産による身体的負担を女性が直接負うからだけではありません。人事評価、異動、昇進、復職後の配置、時短勤務の受け止められ方まで、実務上の影響を先回りして考えやすいからです。制度が存在しても、使った後に不利益がないと信じられなければ、不安は解消しません。

家事育児分担と情報不足の二重負担

もう一つの論点は、出産後の家庭内負担です。内閣府の男女共同参画白書は、就業継続や仕事と生活の調和を大きな政策課題として位置付けています。日本では女性就業率が上がっても、家事育児の負担配分が十分に対称化していないことが長年の課題です。そのため、女性は「働き続けるか」「子どもを持つか」という二択に近い圧力を感じやすくなります。

加えて、妊活白書2025では、子どもを望む未婚男女でも半数以上が妊娠や出産に関する情報収集を始めておらず、自治体の検査費用支援や保険適用の認知も低いとされました。知識不足は、意思決定を遅らせるだけでなく、不安を必要以上に大きく見せます。情報の不足と職場の不透明さが重なると、最も合理的な選択が「今は持たない」になりやすいのです。

注意点・展望

このテーマで避けるべきなのは、「若者が子どもを欲しがらなくなった」と価値観だけに還元する見方です。今回の調査は、女性が自立を望むようになった結果というより、自立したまま家族形成できる制度がまだ弱いことを映しています。子どもを望まない選択そのものを否定するのではなく、望む人が断念しなくて済む環境整備が論点です。

今後の政策で重要なのは、手当の増額だけではありません。長時間労働の是正、管理職候補期の柔軟配置、男性育休の実効性、妊活やプレコンセプションケアの早期情報提供、転職や非正規雇用を挟んでも使いやすい支援制度が必要です。仕事と出産の両立を「本人の頑張り」で回す限界が、すでに意識調査に表れ始めています。

まとめ

未婚女性で「子どもを望まない」が男性を上回ったのは、個人の価値観が急に冷え込んだからではありません。仕事を続けるほど、出産後のキャリア中断、家計負担、家庭内負担の偏りが具体的に見えてくる構造が背景にあります。

少子化対策を本気で進めるなら、出生数の議論だけでは足りません。若い女性が「産むかどうか」を悩む前に、「産んでも働き続けられるか」を不安に思っている現実を直視する必要があります。出産希望の後ろ倒しと未婚女性の意識変化は、日本の雇用制度と家族政策の継ぎ目が、まだ十分つながっていないことを示しています。

参考資料:

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