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by nicoxz

円急落158円台、衆院解散観測で財政懸念が再燃

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はじめに

2026年1月13日、東京外国為替市場で円相場が急落し、一時1ドル=158円90銭台をつけました。これは2024年7月以来、約1年半ぶりの円安水準です。

この急激な円安の引き金となったのは、高市早苗首相が通常国会の冒頭で衆院解散を検討しているとの報道でした。市場では、選挙に伴う一段の財政出動が財政悪化につながるとの懸念が広がり、円売りが加速しています。

本記事では、円急落の背景にある政治・経済要因と、日本の財政状況への市場の警戒感について詳しく解説します。

円急落の経緯と市場の反応

1月9日の報道が転機に

円相場の急落は、1月9日のニューヨーク市場から始まりました。読売新聞が高市首相の衆院解散検討を報じると、円は対ドルで一時0.8%安の158円18銭まで売られました。これは2025年1月以来の安値水準でした。

その後も円安圧力は継続し、日本が休日だった12日には158円20銭近辺まで下落。そして13日の東京市場では158円92銭近辺まで円安が進行し、昨年来の安値を更新しました。

なぜ衆院解散報道で円が売られるのか

衆院解散と円安の関係は、高市政権の経済政策に対する市場の評価と密接に関連しています。高市首相は「責任ある積極財政」を掲げており、与党が衆院選で勝利すれば、さらなる財政出動が進むとの見方が広がっています。

実際、2025年10月の自民党総裁選で高市氏が勝利して以降、円相場は約10円ほど円安・ドル高方向に動いています。市場は高市政権の財政拡張路線に対して、継続的に警戒感を示しているといえます。

日本の財政状況と市場の懸念

過去最大122兆円の予算案

2026年度予算案は一般会計歳出総額122兆3092億円と、前年度比6.2%増で過去最大となりました。物価高や人件費高騰への対応に加え、高市政権の積極財政方針を反映した結果です。

国債費は31兆円に達し、新規国債発行額も前年を上回る見込みです。市場へのネット供給額は前年度比約8%増の約65兆円となり、過去10年余りで最大規模に膨らむ見通しです。

長期金利の急上昇

財政への懸念は債券市場にも波及しています。2026年1月5日、10年物国債利回りは一時2.125%まで上昇し、約27年ぶりの高水準を記録しました。10年物国債の表面利率も28年ぶりに2.1%となっています。

専門家の分析によると、政策金利と長期金利のスプレッドが急拡大している現状は、通常の利上げ局面では見られない異常な事態です。これは投資家が財政拡張に対して強い警戒感を抱いていることの表れとされています。

「世界最悪の国債市場」との評価

ブルームバーグの分析では、2025年のパフォーマンスが世界の主要債券市場で最悪だった日本は、2026年も苦難が続くと予想されています。高市政権の積極財政と日銀の国債買い入れ縮小が、市場にダブルパンチを与えているとの見方です。

為替介入への警戒と日銀の金融政策

財務省の牽制発言

円安が進行する中、片山さつき財務相は足元の動きを「ファンダメンタルズに基づかない投機的な動き」と指摘しています。「為替介入を含めた行動を取れる」との発言も行い、市場への牽制を強めています。

2024年には160円の大台超えで為替介入が実施されており、2026年も同水準は重要な節目として意識されています。

日銀は利上げを継続

日銀は2025年12月の金融政策決定会合で政策金利を0.75%に引き上げました。30年ぶりの金利水準であり、金融正常化を着実に進めています。

しかし、市場では日銀の利上げペースが緩やかにとどまるとの見方から円売りが優勢となっています。日米金利差の縮小にもかかわらず円安が進む状況は、財政不安がより強く作用していることを示唆しています。

注意点・今後の展望

冒頭解散が実施された場合

高市首相が通常国会冒頭で解散に踏み切った場合、衆院選は「1月27日公示・2月8日投開票」または「2月3日公示・15日投開票」が候補となります。2月の衆院選は36年ぶりの異例事態です。

選挙実施となれば、2026年度予算案の審議が中断し、年度内成立が困難になります。予算成立の遅れは物価高対策などの政策実行にも影響を及ぼす可能性があります。

今後の為替見通し

三井住友DSアセットマネジメントは、目先はドル高・円安方向に振れやすい状況が続くものの、年後半には緩やかにドル安・円高方向へ転じると予想しています。ニッセイ基礎研究所は2026年末の円相場を149円程度と見込んでいます。

ただし、財政拡張観測が強まれば円安圧力が長期化する可能性もあり、為替動向は政治情勢に大きく左右される状況が続きそうです。

まとめ

円相場の1年半ぶりの安値更新は、衆院解散報道をきっかけに財政懸念が再燃した結果です。高市政権の積極財政路線に対する市場の警戒感は根強く、過去最大の予算案と国債増発が円売り・債券売りの要因となっています。

今後は通常国会での解散判断が最大の焦点となります。政治日程と財政政策の動向を注視しながら、為替市場の変動に備える必要があるでしょう。

参考資料:

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