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by nicoxz

認知症の血液検査が身近に、富士レビオやロシュが承認目指す

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はじめに

アルツハイマー型認知症の診断が、より身近で簡単になろうとしています。これまで診断には高額なPET検査や侵襲性の高い脳脊髄液検査が必要でしたが、採血だけで診断できる血液検査薬の開発が急速に進んでいます。

国内ではシスメックスが先行して承認を取得し、H.U.グループ傘下の富士レビオが2025年11月に厚生労働省へ承認申請を行いました。スイスのロシュ・ダイアグノスティックスも日本市場への参入を目指しています。本記事では、認知症血液検査の最新動向と、患者や医療現場にもたらす変化について解説します。

なぜ血液検査が注目されているのか

従来の診断方法の課題

アルツハイマー型認知症の確定診断には、これまで主に2つの方法が用いられてきました。

アミロイドPET検査: 脳内に蓄積したアミロイドβを画像で直接確認できる精度の高い検査です。しかし、1回の検査費用は15万〜30万円と高額で、保険適用でも3割負担で約4.5万〜7.5万円かかります。また、放射性薬剤を使用するため実施可能な施設が限られ、1施設あたり1日3例程度しか検査できないという効率性の問題もあります。

脳脊髄液検査: 腰椎穿刺によって脳脊髄液を採取し、アミロイドβやタウ蛋白を測定します。診断精度は高いものの、針を腰に刺す侵襲性の高さから、患者への負担が大きいことが課題でした。

血液検査のメリット

血液検査は、これらの課題を解決する可能性を秘めています。

  • 低侵襲性: 通常の採血のみで検査可能
  • 低コスト: 従来の検査より大幅に安価(自費で約2万円程度)
  • 高効率: 多くの医療機関で実施可能
  • スクリーニング活用: 大規模な健康診断にも組み込みやすい

早期発見によって治療開始を前倒しできれば、病気の進行を遅らせる可能性が高まります。

各社の開発状況

シスメックス:国内先行で承認取得

シスメックスはエーザイと共同開発した認知症診断試薬について、2022年12月に厚生労働省から製造販売承認を取得しました。化学発光酵素免疫測定法を用いて、一滴ほどの血液からアミロイドβの蓄積量を約17分で測定できます。

この検査薬は2023年5月に国内で発売され、認知症血液検査の先駆けとなりました。簡便かつ安価に検査できるため、患者への負担軽減に貢献しています。

富士レビオ:米国FDA承認を経て日本でも申請

H.U.グループホールディングス傘下の富士レビオは、認知症血液検査の分野で世界的な注目を集めています。

米国での快挙: 2025年5月、富士レビオの血液検査薬が米食品医薬品局(FDA)から承認を取得しました。アルツハイマー病診断を目的とした血液検査薬として、米国で初めての承認となる画期的な成果です。

この検査薬は「ブレークスルーデバイス」の指定を受けており、全自動化学発光酵素免疫測定システム「ルミパルス G1200」で使用します。血漿中の217位リン酸化タウ蛋白(pTau217)とβ-アミロイド1-42の比率を測定することで、アルツハイマー病の診断を補助します。

日本での承認申請: 富士レビオは2025年11月、この検査薬の製造販売承認を厚生労働省に申請しました。米国での実績を踏まえ、日本でも早期の承認が期待されています。

ロシュ・ダイアグノスティックス:グローバル展開を加速

スイスのロシュ・ダイアグノスティックスも、認知症血液検査市場への本格参入を目指しています。

脳脊髄液検査薬の承認: ロシュは2025年3月、脳脊髄液でβ-アミロイドとリン酸化タウ蛋白を測定する検査薬「エクルーシス試薬」の製造販売承認を日本で取得しました。同年9月には保険適用も認められ、発売に至っています。

血液検査薬の開発状況: 血液検査薬については、「Elecsys pTau217」が2024年4月にFDAのブレークスルーデバイス指定を受けました。日本では2025年4月に研究用試薬として発売されていますが、体外診断用医薬品としての薬事申請はまだ行われていません。

ロシュは体外診断用医薬品としての承認取得を目指すと表明しており、今後の動向が注目されます。

早期診断がもたらす医療の変化

レカネマブとの組み合わせ

認知症血液検査の普及が期待される背景には、治療薬の進歩があります。エーザイと米バイオジェンが共同開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が2023年9月に日本で承認され、同年12月から保険適用となりました。

レカネマブは脳内のアミロイドβを除去する作用があり、早期段階での投与が効果的とされています。血液検査によるスクリーニングで早期発見が可能になれば、治療介入のタイミングを逃さずに済むようになります。

2段階診断の確立

専門家の間では、血液検査とPET検査を組み合わせた2段階診断の体制が有効と考えられています。

  1. 第1段階(スクリーニング): 血液検査で認知症リスクの高い人を抽出
  2. 第2段階(確定診断): リスクが高いと判定された人のみPET検査で確定

この方法により、限られた医療資源を効率的に活用しながら、より多くの人に早期診断の機会を提供できます。

注意点・今後の展望

血液検査の限界

血液検査は万能ではありません。現時点では確定診断ではなく、あくまで診断を「補助」する位置づけです。偽陽性や偽陰性の可能性もあるため、結果の解釈には医師の専門的判断が必要です。

また、アルツハイマー型以外の認知症(レビー小体型認知症、血管性認知症など)には対応していない点にも注意が必要です。

保険適用の見通し

富士レビオの検査薬が承認されれば、保険適用に向けた議論が進むと予想されます。現在、MCIスクリーニング検査などは自費で約2万円かかりますが、保険適用となれば患者負担はさらに軽減されます。

認知症患者数の増加が社会問題となる中、早期診断・早期治療による医療費削減効果も期待されています。

まとめ

認知症の血液検査は、医療の在り方を大きく変える可能性を秘めています。シスメックスが先行し、富士レビオが米国で初の血液検査薬承認を獲得、日本でも申請済みです。ロシュも参入を目指しており、競争が活発化しています。

高額で実施施設が限られるPET検査から、身近な採血で診断できる時代へ。早期発見・早期治療の実現に向けて、血液検査の普及が認知症医療の新たな扉を開こうとしています。

参考資料:

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