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by nicoxz

ドル独歩安が再燃、円152円台に上昇した背景

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はじめに

2026年2月に入り、外国為替市場でドルの独歩安が再び鮮明になっています。円相場は一時1ドル=152円台まで上昇し、約4カ月ぶりの円高水準を記録しました。

背景にあるのは、トランプ米政権の通商政策に対する不透明感と、中国当局が国内金融機関に米国債の保有抑制を指示したとする報道です。1月の米雇用統計が市場予想を上回る改善を見せたにもかかわらず、ドル買いは長続きしませんでした。

この記事では、ドル安の構造的な要因と、今後の為替相場に与える影響を多角的に解説します。

トランプ政権の政策不透明感がドル安を招く

関税政策の混乱と市場心理

トランプ大統領は2026年に入ってから、欧州や中国に対する追加関税を相次いで示唆してきました。しかし、関税の発動と撤回が繰り返される「ちぐはぐな政策運営」が市場の信頼を損なっています。

ワシントン・ポスト紙は「トランプ大統領の混沌とした統治スタイルがドルの価値を毀損している」と報じています。政策の予測可能性が低下したことで、投資家はドル資産からの分散を進めています。

CNBCの報道によれば、トランプ大統領が関税引き上げを脅かすたびに、為替市場では「ドル安」方向に動く傾向が強まっています。通常、関税はドル高要因とされますが、政策の不確実性そのものが通貨の信認を弱めるという逆説的な状況が生まれています。

ドル安容認とも受け取れる大統領発言

注目すべきは、1月27日にトランプ大統領がドルの下落について「懸念していない」と発言したことです。この発言を受けて円は対ドルで一時152円10銭まで急騰しました。

市場関係者の間では「大統領がドル安を容認、あるいは歓迎している」との見方が広がっています。2026年11月の中間選挙を控え、輸出企業の支援や貿易赤字の縮小を狙ったドル安政策が意図的に進められている可能性も指摘されています。

中国の米国債保有抑制と「ドル離れ」の波紋

Bloomberg報道の衝撃

2026年2月9日、Bloombergが「中国当局が国内銀行に対し、米国債の保有を抑制するよう指示した」と報じました。この報道を受けて、ニューヨーク外国為替市場では円が一気に155円台半ばまで上昇する場面がありました。

中国の規制当局は、米国債への集中リスクを懸念し、金融機関にリスク分散を促しているとされます。米中間の関税引き上げ合戦が激化する中で、中国側が金融面でも対抗措置を取り始めたとの見方が広がっています。

中国の米国債保有は10年で半減

中国はかつて世界最大の米国債保有国でしたが、2013年以降、保有額をほぼ半減させてきました。今回の報道は、この長期的な「米国債離れ」のトレンドが加速している可能性を示唆しています。

ただし、注意が必要な点もあります。中国の米国債保有額の減少は、必ずしもドル資産全体からの撤退を意味するわけではありません。ダイヤモンド・オンラインの分析によれば、中国のドル建て資産の総額は約1.6兆ドル規模で比較的安定しています。米国債からの資金が、他のドル建て資産やゴールドに振り向けられている可能性があります。

世界的な波及リスク

Bloombergは2月11日付の記事で「中国の米国債離れが浮き彫りになり、世界的な資金引き揚げへの波及が警戒されている」と報じています。中国の動きが他の新興国にも広がれば、米国債市場の需給バランスが崩れ、米長期金利の上昇やドル安がさらに進む可能性があります。

米雇用統計の改善効果が限定的だった理由

予想を上回る雇用データ

2月11日に発表された1月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想の6.5万人増を上回る結果となりました。発表直後にはドル買いの反応が見られましたが、効果は一時的でした。

景気不安が根強い背景

雇用統計の改善にもかかわらずドル買いが続かなかった理由は複数あります。まず、トランプ政権の関税政策が米国経済そのものに悪影響を及ぼすとの懸念が根強いことが挙げられます。

Tax Foundationの分析によれば、トランプ政権の関税政策は「貿易戦争」の様相を呈しており、米国の消費者物価の上昇や企業のサプライチェーン混乱を通じて、GDP成長率を押し下げるリスクがあります。

また、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策も注目されています。2025年12月に3回連続の利下げを実施した後、2026年も利下げ姿勢を継続するとの見方が市場では優勢です。日米金利差の縮小が見込まれる中、ドル売り・円買いの圧力が構造的に強まっています。

注意点・展望

日米協調介入の思惑

市場では、日本と米国が協調して円安是正に取り組むとの思惑も浮上しています。CNBCは「介入リスクの高まりが円の上昇を後押ししている」と報じており、実際に介入が行われるかどうかが今後の重要な焦点です。

2026年後半の見通し

野村證券は2026年末のドル円レートを140円と予想しており、円高基調が年後半にかけて進むとのシナリオを示しています。日銀の利上げ姿勢とFRBの利下げが同時に進めば、日米金利差はさらに縮小します。

ただし、トランプ政権の政策は予測が難しく、関税政策の急転換や地政学リスクの変化によっては、ドル安トレンドが一時的に反転する可能性もあります。為替市場のボラティリティが高い状態は当面続くと見られます。

まとめ

ドルの独歩安と円高進行は、単一の要因ではなく、トランプ政権の政策不透明感、中国の米国債保有抑制、FRBの利下げ観測という複合的な構造要因に支えられています。1月の米雇用統計が改善しても効果が限定的だったことは、市場の関心がすでに「景気の先行き」に移っていることを示しています。

輸出入企業や投資家にとっては、為替変動リスクへの備えが一層重要になります。今後は日銀の金融政策決定会合やFRBのFOMC、そして米中関係の動向が、ドル円相場の方向性を左右する鍵となるでしょう。

参考資料:

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