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by nicoxz

電事連新会長に関西電力・森望社長が就任へ

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はじめに

電気事業連合会(電事連)の会長に、関西電力の森望社長が就任する方向で調整が進んでいます。2026年2月20日にも加盟社トップによる合議を経て正式決定される見通しです。

電事連の会長職は、中部電力の林欣吾社長が浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)における地震想定データの不正操作問題で2026年1月16日に辞任して以来、空席が続いていました。原発を巡る信頼が揺らぐ中での新体制発足となり、電力業界の信頼回復が最重要課題となります。

本記事では、電事連会長の交代劇の背景にある浜岡原発問題の詳細と、森望新会長に期待される役割について解説します。

浜岡原発データ不正問題の深刻さ

意図的なデータ操作の実態

中部電力の浜岡原発3・4号機の再稼働審査では、地震の揺れの最大想定値(基準地震動)を算出する過程で、重大な不正が発覚しました。

具体的には、「統計的グリーン関数法」を用いた地震動評価において、本来は20組の地震動を計算してその平均に最も近い波を代表波として選定する手法を取るべきところ、実態は大きく異なっていました。2018年以前には複数のセットを作成してその中から都合の良いものを選ぶ手法が取られ、2018年以降はさらに悪質化し、意図的に平均に近くない波を選んだ上で、残りの19組を代表波に合わせて調整するという操作が行われていたのです。

規制委員会の厳しい対応

原子力規制委員会の山中伸介委員長は2026年1月7日の記者会見で、浜岡原発の再稼働審査について「白紙になると思う」と厳しい見方を示しました。さらに「明らかな捏造」との認識を示し、中部電力本店への立ち入り検査の実施も表明しています。

この問題は2025年2月に原子力施設安全情報申告制度を通じて情報提供があり、同年5月から規制庁が中部電力と面談を重ねる中で、12月18日に中部電力側が内部調査でも不正を確認したと報告しました。内部告発によって発覚した構図であり、組織ぐるみの問題であった可能性も指摘されています。

林欣吾前会長の辞任

中部電力の林欣吾社長は2024年4月に電事連会長に就任し、原発再稼働を業界全体で推進する旗振り役を務めてきました。2025年末に閣議決定された「エネルギー基本計画」に原発の最大限活用方針が明記された背景には、林氏のリーダーシップもありました。

しかし、足元の浜岡原発で深刻な不正が発覚したことで、2026年1月16日に任期を2か月以上残して電事連会長を辞任しました。林氏は会見で「社会の皆様の原子力事業に対する信頼を失墜させた」と謝罪し、中部電力として「解体的な再構築」に取り組む姿勢を示しています。

新会長・森望氏の経歴と課題

関西電力での歩み

森望氏は1962年生まれ、兵庫県出身です。京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程を修了後、1988年に関西電力に入社しました。送電部門を中心にキャリアを積み、電気事業連合会への出向経験も持ちます。

その後、京都電力所長、地域エネルギー本部長、再生可能エネルギー事業本部長などを歴任し、2022年6月に代表執行役社長に就任しました。送電から再エネまで幅広い分野を経験している点が特徴です。

関西電力が抱えてきた課題

関西電力自身も近年、複数の問題を抱えてきました。2019年に発覚した金品受領問題では、経営陣が自治体関係者から多額の金品を受け取っていたことが明らかになり、電事連会長職の辞退に至りました。また、電力カルテル問題や顧客情報の不正閲覧問題など、コンプライアンス上の課題が相次いでいます。

森氏の社長就任は、こうした問題の後始末と信頼回復を託されたものでした。2024年には関西経済連合会の副会長にも起用されるなど、関電から約4年半ぶりに財界の要職への復帰が進んでいました。

電事連会長としてのミッション

森氏が電事連会長として取り組むべき課題は多岐にわたります。最大の課題は、浜岡原発問題で失墜した原子力事業への社会的信頼の回復です。原発再稼働を推進する業界団体のトップとして、安全性への取り組みを社会に対して説明していく責任があります。

また、2050年カーボンニュートラルに向けたエネルギーミックスの実現、再生可能エネルギーの拡大、電力の安定供給と脱炭素化の両立など、業界全体の方向性を示すことも求められます。森氏は関西電力で「2040年までに国内で500万キロワット分の再生可能エネルギーを新規開発する」という目標を掲げており、再エネ分野での経験が電事連の舵取りにも活かされるか注目されます。

電事連会長職の歴史的な転換点

従来の「3社持ち回り」の変化

電事連の会長は1952年の設立以来、東京電力、関西電力、中部電力のいわゆる「中3社」の社長が持ち回りで務めてきました。しかし、2011年の東京電力福島第一原発事故、2019年の関西電力金品受領問題により、この慣例は崩れました。

東京電力と関西電力がともに会長職を辞退する異例の状況の中、2020年には九州電力の池辺和弘社長が中3社以外から初めて就任するなど、電事連の組織としての求心力低下も指摘されてきました。

関西電力の「復帰」が意味するもの

今回の森氏の会長就任は、関西電力が金品受領問題から約7年を経て、電力業界の顔としての役割に復帰することを意味します。中部電力は浜岡原発問題、東京電力は福島原発事故の処理が続く中、消去法的な側面も否定できません。

一方で、関西電力は国内で最も多くの原発を稼働させている電力会社であり、原発再稼働の実績という点では業界をリードする存在です。この実績が、今後の原発政策推進の旗振り役として適任と判断された背景にあると考えられます。

注意点・展望

電事連会長の交代で業界が直ちに変わるわけではありません。林氏の任期は元々2026年3月末までだったため、森氏はまず残りの任期を引き継ぎ、その後正式な任期を務めることになります。

今後注目すべきは、浜岡原発問題の全容解明と再発防止策の実効性です。原子力規制委員会による立ち入り検査の結果次第では、他の原発の審査にも影響が及ぶ可能性があります。また、電力業界全体のガバナンス改革が進むかどうかも重要なポイントです。

エネルギー政策では、原発の最大限活用と再エネ拡大の両立が引き続きテーマとなります。森氏のリーダーシップの下で、安全性と信頼性を確保しながら電力の安定供給を実現できるかが、電力業界全体の課題です。

まとめ

電気事業連合会の新会長に関西電力の森望社長が就任する見通しとなりました。浜岡原発のデータ不正という深刻な問題で前任者が辞任した後の就任であり、電力業界の信頼回復が最大の使命となります。

森氏には、原発の安全性への社会的信頼を再構築しながら、エネルギーの安定供給と脱炭素化を両立させるという難しい舵取りが求められます。今後の電力業界の方向性を左右する重要な人事であり、その手腕に注目が集まります。

参考資料:

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