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フジが店舗3割刷新へ:人口減と物価高に挑む地方スーパー

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はじめに

「早く手を打たなければ、今後5年で多くの店が損益分岐点を割り込む」。中四国を地盤とするスーパー・フジの尾崎英雄会長は、強い危機感を示しています。

フジは2024年3月にマックスバリュ西日本と経営統合し、中四国および兵庫県で約490店舗を展開する地域最大級のスーパーマーケットチェーンとなりました。しかし、物価高による運営コストの上昇と、地盤とする中四国の急速な人口減少という二重の逆風に直面しています。

この課題に対し、フジは全店舗の約3割にあたる150店舗の改装・建て替えに着手。3年間で860億円を投じる大規模な店舗改革で、人口減少時代の新たな成長モデルを模索しています。

フジの店舗改革の全容

860億円の投資計画

フジは2027年2月期を最終年度とする中期経営計画で、デジタル化を含めた店舗改革に3年間で860億円を投じることを発表しました。この投資額は、人口減少が進む地方スーパーとしては異例の規模です。

具体的には、全体の約3割にあたる150店舗で改装や建て替えを実施します。重点エリアは広島・愛媛・香川・岡山・兵庫の5県で、特に競争が激しい都市部での店舗競争力強化を狙います。

中期経営計画では「企業文化の確立」「既存事業の改革」「事業インフラの統合とシナジー創出」の3つを基本戦略として掲げており、2027年2月期に営業収益8450億円、営業利益率2%超、さらに2031年2月期には営業収益1兆円を目標としています。

具体的な建て替え・リニューアル事例

2026年1月6日には、具体的な建て替え計画が発表されました。香川県仲多度郡の「マルナカまんのう店」、徳島県阿波市の「マルナカ市場店」、愛媛県伊予市の「フジ伊予店」の3店舗が対象です。

フジ伊予店は1980年6月に開店した店舗で、施設の老朽化に伴い2026年2月28日に閉店予定。建て替えによる全面リニューアルで、現代の顧客ニーズに対応した店舗へと生まれ変わります。

一方で、2025年には山口県のマックスバリュ防府西店、兵庫県のマックスバリュ梅井店、香川県のマルナカ檀紙店など複数の店舗が閉店しており、採算性の低い店舗の整理も並行して進めています。

中四国地方が直面する構造的課題

加速する人口減少

中四国地方は全国でも特に人口減少が深刻な地域です。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、今後も減少傾向は続く見通しで、スーパーマーケットにとって「胃袋の総量」が縮小し続けることを意味します。

さらに高齢化の進行により、一人あたりの購買量も減少傾向にあります。高齢者の一人暮らし世帯の増加は、大容量パックよりも少量パックへのニーズを高め、客単価の低下にもつながります。

物価高と競争激化の二重苦

世界経済の混乱に伴う原材料高騰、円安による仕入れコストの上昇、電気代や水道光熱費の高騰など、店舗運営コストは軒並み上昇しています。一方で、消費者の価格志向は強まっており、簡単には価格転嫁できない状況が続いています。

加えて、競争環境も激化しています。全国展開するディスカウントストアチェーンの地方進出や、食品強化型ドラッグストアの大量出店により、地域スーパーの売上は「じわじわ削られている」状態です。コンビニエンスストアやネットスーパーとの競合も無視できません。

フジの生存戦略

「くらし密着」への転換

フジの経営ビジョンは「中四国くらし密着ドミナント」です。尾崎会長は「大きな集客装置をつくり遠方から来ていただくというビジネスで成長をめざすのは難しい時代」と語り、顧客に近づき寄り添いながら暮らしを支えるビジネスへの転換を目指しています。

具体的には、食品スーパー(SM)を核としたネイバーフッド・ショッピングセンター(NSC)を中心に展開。標準フォーマットは売場面積500坪ですが、愛媛県松山市や広島市などの都市部では300坪以下の小型店も出店し、きめ細かな店舗網を構築します。

広島本社移転の意図

2024年3月、フジは本社を愛媛県松山市から広島市に移転しました。尾崎会長は「競争の激しい所で汗をかくことが大事」とその意義を説明しています。

広島市は中四国地方最大の商圏であり、事業エリアの地理的中心に位置します。ここで存在感を高めることが、中四国全体での競争優位性につながるという判断です。ただし、登記上の本店所在地は引き続き松山市に置いており、発祥の地への敬意も示しています。

マックスバリュ西日本との統合効果

2024年3月のマックスバリュ西日本との経営統合により、フジは中四国および兵庫県で約490店舗を展開する一大チェーンとなりました。この規模は、仕入れや物流におけるスケールメリットを生み出します。

統合により、商品の共同調達によるコスト削減、物流網の効率化、プライベートブランド商品の開発力強化などが期待できます。イオングループの一員として、全国ネットワークを活かした取り組みも可能になりました。

地方スーパーが生き残るための条件

デジタル投資の重要性

フジの860億円投資にはデジタル化への対応も含まれています。ネットスーパーの展開、店舗オペレーションの効率化、顧客データの活用など、デジタル技術を活用した生産性向上が急務となっています。

特にネットスーパーは、高齢者の買い物支援という社会的役割を果たしながら、新たな販路を開拓する手段としても注目されています。実店舗との相互補完により、顧客の利便性を高めることが期待されます。

人手不足への対応

最低賃金の上昇と従業員の高齢化も深刻な課題です。セルフレジの導入、発注業務の自動化、品出し作業の効率化など、省人化投資も店舗改革の重要な要素となっています。

同時に、接客など人にしかできない価値を高める取り組みも求められます。地域に根差したスーパーとして、単なる価格競争ではなく、サービス品質での差別化が鍵となります。

今後の展望

業界再編の加速

地方スーパー業界ではM&A(合併・買収)が加速しています。資本力で劣る中小スーパーは大手の傘下に取り込まれる流れが続いており、単独での生き残りは一段と難しくなっています。

フジのようにイオングループという大きな後ろ盾を持つチェーンでも、独自の成長戦略を打ち出し続けなければ埋没してしまう厳しい環境です。

地域インフラとしての役割

人口減少が進む地方において、スーパーマーケットは単なる小売業ではなく、地域のインフラとしての側面を持ちます。買い物難民対策、雇用の受け皿、コミュニティの拠点など、社会的役割への期待も高まっています。

フジの「くらし密着」戦略は、こうした社会的要請にも応えるものといえます。収益性と社会的責任の両立が、地方スーパーの持続可能な経営には不可欠です。

まとめ

フジの店舗3割刷新は、人口減少と物価高という構造的課題への本格的な対応策です。3年間で860億円を投じ、150店舗の改装・建て替えを実施するこの取り組みは、地方スーパーの生き残りモデルを示すものとなる可能性があります。

成否の鍵を握るのは、投資の回収スピードです。人口減少が続く中で、改装した店舗がどれだけ集客力を高められるか。また、デジタル化投資がどこまで生産性向上につながるかも重要なポイントです。

「5年後には多くの店が損益分岐点を割り込む」という危機感を持つフジの取り組みは、同様の課題を抱える地方スーパー各社にとっても示唆に富むケーススタディとなるでしょう。

参考資料:

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