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by nicoxz

ハセット氏がNY連銀の関税報告書を痛烈批判、中銀独立性に波紋

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はじめに

米国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長は2026年2月18日、ニューヨーク連邦準備銀行が公表した関税に関する調査報告書を痛烈に批判しました。「これまで見た中で連邦準備制度史上最悪の論文だ」と述べ、関わった研究者は「処分されるべきだ」と主張しています。

問題の報告書は2月12日付で公表され、「2025年の関税は誰が支払ったのか」と題しています。結論として、トランプ政権が課した関税の約9割が米国側の負担になったと分析しました。トランプ政権は関税が米国の消費者に影響を与えていないと主張しており、政権の公式見解と真正面から衝突する内容です。

本記事では、報告書の内容、ハセット氏の批判、そして中央銀行の独立性を巡る議論の行方を解説します。

NY連銀報告書の内容

関税負担の9割は米国側

NY連銀の研究者が発表した報告書は、2025年にトランプ政権が課した関税のコストを誰が最終的に負担しているかを分析したものです。研究チームは、米国に製品を輸出する各国が価格を引き下げたか(=輸出国側が関税を吸収したか)、それとも価格を維持したか(=米国側が関税コストを負担したか)を調査しました。

その結果、関税による追加コストの約90%が米国の輸入業者や消費者に転嫁されていたと結論づけています。つまり、関税は事実上「米国民への課税」として機能しているという分析です。

複数の学術研究とも整合

NY連銀の分析結果は、独自の見解ではありません。ハーバード大学やシカゴ大学の研究者による学術論文、米議会予算局(CBO)の分析、ドイツのキール研究所の調査なども、関税負担の大部分が米国側に帰着しているという同様の結論を示しています。

経済学の標準的な理論では、関税は輸入品の価格を引き上げることで国内消費者の負担を増やすとされています。関税分を輸出国側が全額吸収するのは、市場における競争環境や需要の価格弾力性から考えて現実的ではないという見方が主流です。

ハセット氏の批判と政権の立場

「恥ずべき論文」と断じる

ハセット氏はCNBCのインタビューで、NY連銀の報告書を「恥ずべきものだ」と断じました。中央銀行の研究者が関税政策の効果を否定的に分析したことに対し、「基礎的な経済学の授業でも受け入れられないような分析だ」と述べています。

さらに、「多くの党派的な報道を生み出すような結論を発表した」として、関わった研究者に対する処分を求めました。ホワイトハウスの高官が連邦準備制度の研究者の処分を公然と要求するのは、極めて異例のことです。

トランプ政権の主張

トランプ政権は一貫して、関税は米国の消費者にほとんど影響を与えていないと主張してきました。ハセット氏は、関税によって実質賃金が平均で約1,400ドル上昇したと述べ、米国民の生活水準は改善していると反論しています。

政権側の論理は、関税によって国内製造業が活性化し、雇用が増えることで賃金が上昇し、それが関税による価格上昇分を上回るというものです。しかし、多くの経済学者はこの見方に懐疑的です。

中央銀行の独立性を巡る議論

カシュカリ総裁の反論

ミネアポリス連邦準備銀行のニール・カシュカリ総裁は、ハセット氏の発言を強く批判しました。「連邦準備制度の独立性を損なおうとするもう一つの試みだ」と述べ、研究者が客観的な分析を行う自由を守る重要性を強調しています。

中央銀行の独立性は、金融政策が政治的圧力から自由に運営されるための根幹的な制度です。政権の意に沿わない研究結果を発表した研究者の処分を求めることは、この独立性を脅かす行為として広く懸念されています。

繰り返される政治圧力

トランプ政権と連邦準備制度の間の緊張関係は今に始まったことではありません。トランプ大統領はこれまでも連邦準備制度理事会(FRB)の金利政策を繰り返し批判し、利下げを公然と要求してきました。今回のハセット氏の発言は、その延長線上にある研究活動への政治介入の試みと見ることができます。

中央銀行の独立性は、インフレーションの制御や金融システムの安定にとって不可欠とされています。経済分析が政治的圧力によって歪められれば、政策判断の質が低下し、長期的には経済全体に悪影響を及ぼすリスクがあります。

注意点・展望

今回の対立は、関税政策の効果を巡る経済学的な議論であると同時に、中央銀行の独立性という民主主義の根幹に関わる問題でもあります。

短期的には、生活コストの高止まりに対する国民の不満が強い中で、トランプ政権は関税が物価上昇の原因ではないという主張を維持する必要に迫られています。NY連銀の報告書のような分析が広まることは、政権にとって都合が悪い状況です。

一方で、研究者への処分要求が実際に行われれば、連邦準備制度の信頼性が大きく損なわれる可能性があります。投資家や市場参加者は、中央銀行が政治的に独立した判断を下せるかどうかを注視しており、独立性への疑念は金融市場の不安定化につながりかねません。

関税政策の実際の影響については、今後も学術研究やデータの蓄積を通じて明らかになっていくでしょう。感情的な批判ではなく、データに基づいた冷静な議論が求められています。

まとめ

NY連銀が発表した「関税負担の9割は米国側」という報告書に対し、ハセットNEC委員長が「最悪の論文」と批判し研究者の処分を要求しました。複数の学術研究もNY連銀と同様の結論を示している中、政権側は関税の正当性を主張し続けています。

この対立はカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁の反論を招き、中央銀行の独立性を巡る議論に発展しています。関税政策の経済的影響と、それを分析する機関の自由が守られるかどうかが、今後の重要な焦点です。

参考資料:

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