年間配当2000万円超の個人投資家かんちさんの投資術
はじめに
年間2000万円を超える配当金を受け取りながら暮らす――。そんな「配当長者」と呼べる個人投資家が注目を集めています。ハンドルネーム「かんち」さんは、元消防士という経歴を持ちながら、49歳で早期退職し、現在は資産8億円超・年間配当金2000万円超の専業投資家として活動しています。
高配当株と優待株を軸にした投資スタイルは、特別な才能や情報を必要としないシンプルなものです。本記事では、かんちさんの投資手法とその道のりを解説し、個人投資家が学べるポイントを整理します。
消防士から専業投資家への道のり
投資の原点は祖父と父の教え
かんちさんは1961年三重県生まれ。投資家の父から”投資の帝王学”を受けて育ちました。投資歴は40年以上に及び、20代前半で消防士になったころから株式投資を始めています。
公務員としての安定した収入を基盤にしながら、コツコツと投資を続けるスタイルを長年にわたって維持しました。給与の中から投資資金を捻出し、配当金は再投資に回すという地道な資産形成を実践してきたのです。
リーマンショックを乗り越えてFIRE
2008年のリーマンショックでは資産が大幅に減少する経験もしましたが、保有株を売却せず持ち続けました。2011年、49歳のときに資産が2億円近くに回復したタイミングで消防士を早期退職し、専業投資家に転身しています。
退職時の年収は約800万円でしたが、当初は配当金から同額の800万円を生活費として取り崩していました。その後「まだ余裕がある」と判断し、年間1000万円、さらに1500万円へと生活費を段階的に増やしています。食料品や外食、日用品の多くは株主優待でまかなっているため、実質的な支出は配当金の範囲に十分収まっているとのことです。
かんちさんの投資手法「5つのステップ」
ステップ1〜2:高利回り+業績成長で絞り込む
かんちさんの銘柄選びは、明確な5つのステップに基づいています。
まずステップ1では、配当利回り3.5%以上の銘柄を抽出します。この基準により、市場平均を上回るインカムゲインが期待できる銘柄に絞り込みます。
次にステップ2で、増収増益かつ増配を続けている銘柄だけを選びます。配当利回りが高くても、業績が悪化して株価が下がった結果として利回りが高くなっている銘柄は除外するのがポイントです。業績悪化は将来の減配リスクに直結するためです。
ステップ3〜4:割高株と一時的な上昇を排除
ステップ3では、PER(株価収益率)とPBR(株価純資産倍率)の積が15倍を超える銘柄を割高と判断して除外します。この指標は「ミックス係数」とも呼ばれ、株価の割安度を簡便に判断する方法です。
ステップ4では、一時的な要因で株価が上昇している銘柄を除外します。たとえば、特需やメディア報道による短期的な株価上昇は、その要因が剥落すれば株価が元に戻るリスクがあるため、投資対象から外します。
ステップ5:下落局面で購入
最後のステップ5は、ステップ1〜4で厳選した銘柄を、株価が下がったタイミングで購入するというものです。業績が堅調であるにもかかわらず、市場全体の調整や一時的な悪材料で株価が下落した局面は、配当利回りが一段と高くなるため、絶好の買い場となります。
かんちさんによると、ステップ1で基準をクリアした銘柄のうち、最終的に購入候補として残るのは約3割程度です。このフィルタリングの厳しさが、長期的な資産成長を支えています。
ポートフォリオの構成と優待活用術
高配当株5割・優待株3割・成長株2割
かんちさんのポートフォリオは、金額ベースで高配当株が5割、優待株が3割、成長株が2割という配分です。資産8億円のうち約4億円が高配当株に充てられています。
保有銘柄数は600を超え、その大半が優待銘柄です。優待株は100株単位の保有が中心ですが、高配当株は数千株、銘柄によっては1万株以上を保有しています。この保有比率の違いが、配当金と優待のバランスを生み出しています。
株主優待で生活コストを大幅削減
かんちさんの生活を支えるもう一つの柱が株主優待です。米や食材、外食代、日用品の多くを優待でまかなうことで、現金支出を大幅に抑えています。
優待株も「保有しているだけで利益を得られる」という点で高配当株と同じだとかんちさんは考えています。届くとうれしいし家計の助けにもなるという実利的な理由に加え、優待を楽しむことで投資を長く続けるモチベーションにもなっています。
注意点と今後の展望
高配当株投資のリスク
高配当株投資は安定的なインカムが得られる魅力的な手法ですが、いくつかの注意点があります。配当利回りが高い銘柄の中には、業績悪化で株価が下落した結果として利回りが上がっている「罠銘柄」が含まれることがあります。かんちさんがステップ2で増収増益・増配を条件にしているのは、この罠を避けるためです。
また、景気後退局面では企業業績の悪化に伴い減配や無配転落のリスクもあります。分散投資により個別銘柄のリスクを軽減することが重要です。かんちさんが600銘柄以上に分散しているのも、このリスク管理の一環です。
2025年以降の投資方針
かんちさんは「もみ合う相場では、調整局面で売りたくなる銘柄は持ちたくない。増収増益基調で配当も増やし続けている銘柄を持って放置するのが得策だ」と語っています。相場環境に一喜一憂せず、業績と配当の成長が続く銘柄を保有し続けるという、長期投資家としての信念が表れています。
まとめ
かんちさんの投資手法は、配当利回り3.5%以上・増収増益・増配という明確な基準で銘柄を選び、割高な銘柄を避けて下落局面で購入するというシンプルなものです。40年以上にわたる投資経験と、消防士時代の安定収入を活かした着実な資産形成が、現在の年間配当2000万円超という成果につながっています。
個人投資家が学ぶべきポイントは、銘柄選定の基準を明確にすること、業績と配当の成長性を重視すること、そして長期保有を前提とした忍耐強い投資姿勢です。高配当株投資は派手さこそありませんが、再現性の高い資産形成の手段として参考になるでしょう。
参考資料:
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