26年3月期、利益上方修正が4社に1社の高水準に
はじめに
2026年3月期の決算シーズンが佳境を迎える中、業績見通しを上方修正する企業が相次いでいます。2月6日までに通期予想を開示した東証プライム上場企業のうち、最終損益が直近予想よりも改善したのは約25%、つまり4社に1社に達しています。
この上方修正比率は、通期最高益を更新した前期(2025年3月期)とほぼ同水準です。米国の関税政策など外部環境に不透明感がある中、建設やゲームといった内需型企業で最高益が目立つ点が特徴的です。本記事では、好調な業績の背景と注目セクターの動向を解説します。
上方修正企業の全体像
25%が利益予想を引き上げ
東証プライム上場の約600社が通期の最終損益予想を発表した段階で、その4分の1にあたる企業が直近予想から上方修正しています。この比率は前期の実績値とほぼ同じ水準であり、日本の上場企業全体として堅調な収益力を維持していることを示しています。
上方修正の背景には、円安による輸出企業の為替差益、国内のインフレ環境下での価格転嫁の進展、そして特定セクターにおける構造的な需要拡大があります。特に注目すべきは、米関税の影響を直接受けにくい内需型企業が収益の柱となっている点です。
前期に続く好業績の持続力
2025年3月期は上場企業全体で通期最高益を更新する歴史的な決算でした。2026年3月期も同水準の上方修正比率を維持していることは、日本企業の収益力が一過性のものではなく、構造的に強化されていることを意味します。名目GDP成長率が3%超で推移する経済環境が、企業業績の底上げに寄与しています。
建設業界:構造的な好環境が持続
建設投資額80兆円超の時代
建設業界では最高益を記録する企業が相次いでいます。2026年の建設投資額は前年比5.5%増の80.8兆円と見込まれ、特に公共領域の伸びが顕著です。国土強靭化政策のもと、国土交通省の予算は着実に拡大しています。
大手ゼネコンでは、鹿島建設が4期連続の増収増益を達成し、2026年3月期には連結純利益で過去最高の1300億円を見込んでいます。5期連続の増収増益を目指す強気な計画を打ち出している点が象徴的です。
好調の3つの理由
建設業界の好業績には3つの構造的な要因があります。第1にリニア中央新幹線の建設です。これは数年で終わるプロジェクトではなく、10年以上にわたって受注を支える大型案件です。第2に首都圏や地方都市での大規模再開発プロジェクトが続いていることです。第3に半導体工場の国内回帰による建設ラッシュです。TSMCの熊本工場に代表される半導体関連の建設需要は、今後も拡大が見込まれています。
こうした需要は米関税の影響を受けにくい国内案件であり、外部環境の不透明感の中でも安定した収益を生み出す基盤となっています。
ゲーム業界:大型タイトルが業績を押し上げ
任天堂:Switch 2効果で売上倍増
ゲーム業界でも最高益ラッシュが続いています。任天堂は2025年6月に発売した「ニンテンドースイッチ2」が絶好調で、2025年12月末時点での販売台数は1737万台に達しました。
第3四半期の連結売上高は1兆9058億円と前年同期比約99%増のほぼ倍増を記録しています。営業利益も3003億円と21%増となり、通期では売上高2兆2500億円、営業利益3700億円を見込んでいます。新型ハードの発売初年度にもかかわらず、計画を上回るペースで推移しています。
カプコン:13期連続営業増益へ
カプコンも絶好調です。上期(2025年4〜9月)の売上高は811億円(前年同期比43.9%増)、営業利益は393億円(同89.8%増)と、いずれも上期として過去最高を記録しました。「モンスターハンターワイルズ」が1100万本を突破するなど、大型タイトルの好調が業績を牽引しています。
通期では売上高1900億円、営業利益730億円を見込んでおり、達成すれば13期連続の営業増益となります。ゲーム業界は為替の影響を受けるものの、グローバルなコンテンツ需要の拡大が収益を押し上げる構造にあります。
注意点・展望
米関税リスクの行方
好調な決算の裏で、米関税リスクは依然として重要な不確実要因です。輸出型企業、特に自動車関連では関税の影響で慎重な見通しを示す企業もあります。内需型企業の好業績が全体を支えている現在の構図は、裏を返せば外需型企業が本格回復していないことの表れでもあります。
下期偏重の業績計画に注意
日本企業の業績計画は下期偏重の傾向があり、上期の好調が通期の上方修正につながりやすい面があります。一方で、第4四半期の業績次第では期末にかけて下方修正に転じるリスクもゼロではありません。為替レートや原材料価格の変動には引き続き注意が必要です。
来期以降の持続性
建設業界は構造的な需要が続くため、来期以降も堅調な業績が見込まれます。ゲーム業界は大型タイトルの有無で業績が大きく変動するため、2027年3月期のラインナップにも注目が集まります。全体としては、日本企業の収益体質が改善しているという大きなトレンドの中にあると言えるでしょう。
まとめ
2026年3月期の決算で4社に1社が利益上方修正を行い、前期に続く高水準の収益を記録しています。建設業界ではリニア新幹線や半導体工場建設など構造的な需要が業績を押し上げ、ゲーム業界では任天堂のSwitch 2やカプコンの大型タイトルが最高益を牽引しています。
米関税リスクが燻る中でも、内需型企業の強さが上場企業全体の収益を下支えしている点は、日本株市場の底堅さの大きな要因です。今後は外需型企業の回復と来期以降の業績持続性が、次の注目ポイントとなります。
参考資料:
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