J-REITが米豪を上回る好調ぶり、金利上昇下でも成長する理由
はじめに
日本の上場不動産投資信託(J-REIT)市場が、国内金利の上昇という逆風の中で堅調な推移を続けています。東証REIT指数は2024年末比で24%上昇し、米国やオーストラリアのREIT市場を上回るパフォーマンスを記録しました。
通常、金利上昇はREIT市場にとってマイナス要因とされます。借入コストの増加や、債券との利回り競争激化が懸念されるためです。しかし、日本市場では異なる動きが見られます。
この記事では、J-REITが金利上昇下でも好調を維持できる理由、オフィス市況の改善状況、そして今後の投資見通しについて詳しく解説します。
J-REIT市場の現状と驚きのパフォーマンス
東証REIT指数が2,000ポイント台を回復
東証REIT指数は2025年11月に2,000ポイント台を回復し、年初から22%以上の上昇を記録しました。2026年1月15日時点では2057.09ポイントとなっています。
2024年は下落基調が続き、12月には1,613ポイントまで下落する場面もありました。しかし、2025年に入ってから状況は一変しました。日本銀行が政策金利を当面0.5%に据え置く方針を示し、金利上昇懸念が和らいだことが大きな転換点となりました。
分配金の増配基調が継続
J-REIT全銘柄の分配金は増配基調が続いており、中央値では4.2%の増配予想となっています。2025年上期(1〜6月)のJリート市場は、東証REIT指数(配当込み)で10.3%のリターンを達成しました。
これは同期間のTOPIX(東証株価指数)上昇率2.4%を大きく上回る数字です。トランプ米大統領の関税政策をめぐって4月に株式市場が急落した際も、J-REIT市場は比較的安定した動きを見せました。
オフィス市況の改善が追い風に
空室率が過去最低水準に接近
J-REIT好調の最大の要因は、オフィス市況の劇的な改善にあります。東京のグレードAオフィス市場では、2025年第3四半期に空室率が前期比0.6ポイント低下の1.5%となり、過去最低水準に接近しています。
新規供給量8,600坪に対して需要量は65,500坪と、需要が供給を大幅に上回る状況が続いています。出社回帰の動きや、優秀な人材確保を目指したオフィス投資の増加が背景にあります。
賃料上昇のトレンドが定着
東京のグレードAオフィスの平均賃料は34,000円/坪となり、前期比1.8%の上昇を記録しました。主要5区の平均募集賃料は31,358円/坪、主要7区では27,852円/坪となっています。
特に注目すべきは、オフィスの賃料を消費者物価指数に連動させる契約が広がり始めていることです。これにより、インフレ環境下でも賃料収入の実質的な価値を維持できる仕組みが整いつつあります。
西新宿エリアでは、潜在空室率が2023年8月の9.12%から3.30%まで低下しました。これは2020年9月以来、約4年10ヶ月ぶりの水準です。
米国・オーストラリアREITとの比較
米国REITは株式市場に劣後
米国REIT市場は長期金利に左右される展開が続いています。2024年のトータルリターンは+4.9%とプラスを維持したものの、S&P 500の+25.0%を大きくアンダーパフォームしました。
2025年の米国REITについては、配当利回り4%程度、キャッシュフロー成長6%程度で、年率10%程度のリターンが想定されています。J-REITの2025年パフォーマンスと比較すると見劣りする数字です。
構造的な違いが影響
米国REIT市場は時価総額1兆5,255億ドル(2025年2月末時点)と世界最大規模を誇ります。データセンターやインフラ、森林など多様なセクターに投資できる点が特徴です。
一方、J-REITはオフィスや商業施設、物流施設が中心です。この構造の違いが、オフィス市況改善の恩恵をJ-REITがより直接的に受けられる理由の一つとなっています。
また、J-REITは「外部運用型」が主流であるのに対し、米国では「内部運用型」が中心です。米国REITは自ら不動産開発を行うことができ、不動産会社としての性質が強いという違いもあります。
投資における注意点と今後の展望
金利動向がリスク要因に
J-REIT市場の主なリスク要因は、国内長期金利の動向です。日銀の利上げ継続姿勢を受けて、国内長期金利は1.5%台後半まで上昇しています。財政支出に対する投資家の懸念が拡大した場合、短期的に長期金利が急上昇する可能性もあります。
その場合、東証REIT指数の下値は1,750ポイント程度と予測されています。2025年3月末時点のNAV倍率は0.82倍と、過去平均の1.10倍を31ヶ月連続で下回っており、割安感はあるものの注意が必要です。
2026年の価格見通し
2026年の東証REIT指数の高値は2,200ポイント程度が想定されています。最大の理由は、J-REITの利回りと日本10年国債利回りの乖離幅(イールドスプレッド)が依然として大きいことです。
2025年のような年率27%を超えるトータルリターンを期待するのは難しいかもしれません。しかし、分散投資やインフレヘッジの観点からポートフォリオにREITを組み入れることで、分配金を含めた底堅いリターンが得られる可能性があります。
注目すべき銘柄の特徴
インフレ環境下で賃料上昇期待の強いオフィスビル中心の銘柄や、オフィスビルを多く保有する総合型の銘柄が注目されています。高品質で好立地のオフィスを保有する銘柄が有利になる見込みです。
まとめ
J-REIT市場は、金利上昇という逆風の中でも堅調なパフォーマンスを維持しています。その背景には、オフィス市況の劇的な改善と賃料上昇トレンドの定着があります。
米国やオーストラリアのREIT市場と比較しても、2024年末比24%という上昇率は際立っています。空室率の低下、賃料の上昇、そしてインフレ連動型契約の広がりが、J-REITの収益基盤を強化しています。
投資を検討する際は、金利動向というリスク要因を認識しつつ、分散投資の一環としてJ-REITを活用することが有効です。特にオフィス系銘柄は、今後も賃料改善の恩恵を受けやすい位置にあります。
参考資料:
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