串カツ田中がメンチカツ新業態、大宮に1号店オープン
はじめに
串カツ田中ホールディングス(HD)が、メンチカツの新業態「挽きたて和牛レアカツ ザ・メンチ」の1号店を2026年2月7日にオープンしました。場所はJR大宮駅東口から徒歩約3分のさいたま市大宮区です。
串カツ田中で培った揚げ物の技術を活かし、和牛100%の極上メンチカツを提供する専門店です。店内で肉を挽き、衣を付け、客の目の前で揚げるというライブ感のある演出が特徴です。メンチカツは国民食でありながら専門店が少ない分野であり、新たな収益の柱に育てる狙いがあります。
「ザ・メンチ」の特徴
メニューは定食1種類のみ
ザ・メンチのメニューは「和牛メンチカツ定食」(税込1,980円)の1品のみです。内容は和牛メンチカツ3個に、おかわり無料のご飯、オニオンスープ、キャベツが付きます。メニューを1つに絞り込むことで、調理の品質を徹底的に追求する戦略です。
使用するのは厳選した和牛100%の挽肉です。店内に設置したミンサー(肉挽き機)で肉を挽き、その場で衣を付けて揚げます。挽きたての肉を使うことで、肉の鮮度と旨みを最大限に引き出しています。
「育てる」エンターテインメント体験
ザ・メンチの最大の特徴は、揚げたメンチカツを卓上の鉄板で自分好みの焼き加減に仕上げる「育てる」体験です。レアな状態で提供されるメンチカツの断面を、客自身が鉄板で焼いて好みの火入れに調整します。
さらに、3個のメンチカツは一度に提供されるのではなく、1個ずつタイミングをずらして出されます。それぞれ塩やデミグラスソースなど異なる調味料で味わうことで、一品のメニューでありながら多彩な味の変化を楽しめる工夫が凝らされています。
揚げ物のプロが手がける品質
串カツ田中は2008年の創業以来、揚げ物に特化してきた外食チェーンです。串カツを揚げ続けてきた技術の蓄積が、メンチカツという新しいメニューにも活かされています。油の温度管理、衣の厚みや食感のコントロールなど、揚げ物のプロフェッショナルとしてのノウハウが投入されています。
串カツ田中の多角化戦略
新業態への積極展開
串カツ田中HDは、主力の串カツ田中に加えて複数の新業態を展開しています。鶏料理専門の「鳥玉」、タレ焼肉と野菜巻き串の「焼肉くるとん」、京都の天ぷら専門店「天のめし」など、揚げ物を中心とした飲食ビジネスの多角化を進めています。
ザ・メンチは、これらの新業態に続く最新のブランドです。串カツ田中HDはメンチカツ業態を新しい収益源に育てる方針で、将来的には海外展開も視野に入れています。
業績と課題
串カツ田中HDの2025年11月期の売上高は約211億円(前年比25.1%増)、営業利益は約11.9億円(同39.8%増)と好調な業績を記録しています。主力の串カツ田中ブランドが牽引する形です。
一方で、新業態は売上が約5.6億円から約8.6億円に拡大した一方、営業損失は約1.4億円から約1.9億円に拡大しています。新規ブランドの立ち上げには投資が必要であり、黒字化までには時間がかかるのが実情です。ザ・メンチが収益に貢献できるかどうかが、今後の多角化戦略の成否を左右します。
外食業界のトレンドとメンチカツの可能性
単品特化型専門店の台頭
外食業界では、1つのメニューに特化した専門店が注目を集めています。唐揚げ専門店の急速な拡大に続き、ハンバーグ、餃子、カレーなど、特定のメニューを深掘りする業態が増加しています。
単品特化型のメリットは明確です。初期費用や維持費を抑えやすく、調理技術の習得期間も短縮できます。食材の仕入れも効率化でき、品質管理がしやすいという利点があります。
メンチカツ市場の成長余地
串カツ田中HDは「メンチカツは日本の国民食だが専門店はまだ少なく、成長余地がある」と分析しています。コロッケや唐揚げには全国展開する専門チェーンがある一方、メンチカツに特化した専門チェーンはほぼ存在しません。
20代から50代までの幅広い世代をターゲットに設定し、ランチとディナーの両方の需要を取り込む戦略です。1,980円という価格帯は、ファストフードよりは高いものの、和牛を使った専門店としては手頃な設定といえます。
注意点・展望
1号店の成否が今後を左右
新業態の成功には、1号店での実績作りが不可欠です。大宮という立地は、東京近郊でありながら家賃が比較的抑えられるため、テスト出店として適切な選択です。開店時には33%オフのキャンペーンを9日間実施し、認知度の向上を図りました。
単品メニューのリスク
メニューを1品に絞る戦略は、品質の追求には有効ですが、リピーター獲得には飽きさせない工夫が求められます。季節限定メニューやトッピングの追加など、定期的な変化をどう取り入れるかが課題となるでしょう。
まとめ
串カツ田中HDが新たに立ち上げたメンチカツ専門店「ザ・メンチ」は、揚げ物のプロが手がける和牛100%のメンチカツと、卓上で「育てる」エンターテインメント体験が特徴の新業態です。メニューを1品に絞り込み、品質とオペレーションの効率化を両立させています。
メンチカツという国民食でありながら専門チェーンが少ない市場に着目した点は、ビジネス戦略として興味深い視点です。新業態の黒字化という課題を抱えつつも、大宮1号店の成績次第では新たな成長の柱となる可能性を秘めています。
参考資料:
関連記事
外食特定技能停止の衝撃 受入れ上限到達で問われる次の一手
外食業の特定技能1号は2026年4月13日から新規受け入れが原則停止となりました。2月末の在留者は約4万6000人で上限5万人に接近。既存人材の転職や更新はどう扱われるのか、居酒屋やチェーン店の採用計画が何を見直すべきかを解説します。
フライドポテト主食化が進む理由 高級化と専門店増殖の構造を読む
フライドポテト専門店が増え、500〜800円台でも支持を集めています。背景には外食値上げ、品種やカットを選ぶ体験価値、冷凍ポテトの高機能化があります。マクドナルドやロッテリアなど外食メニューとの価格差、日本フライドポテト協会イベントの拡大、じゃがいも供給リスクまで、ポテトが主食に近づく構造を解説します。
サイゼリヤ株急落、売上増でも利益が嫌われた3つの理由
サイゼリヤ株が2026年4月9日に前日比13.65%安の5820円へ急落しました。中間期の売上高は前年同期比17.5%増と好調だったものの、通期の営業利益予想は190億円から182億円へ下方修正されました。低価格路線維持による粗利率の伸び悩みと、年初来高値7220円からの期待剥落が売りを増幅した構図を解説します。
名古屋ラーメン市場に全国区ブランドが相次ぐ背景と勝算の検証詳報
東海初出店のラーメン二郎を筆頭に、全国有名ブランドの名古屋進出が急加速している。年間4200万人超の訪日客需要、東京・大阪より相対的に低い出店競争圧、ラーメンまつりで可視化された消費者の旺盛な熱量という三つの好条件が偶然ではなく構造的に重なりあっている名古屋市場の変化と今後の勝ち筋を詳しく解説する。
外食M&Aが増える理由 多業態化と承継難が招く再編時代
コスト高、人手不足、後継者難のなかで進む外食再編と多業態戦略の損得
最新ニュース
ブラジルがBYD「奴隷労働」認定を撤回した背景と波紋
ブラジル政府が中国EV大手BYDを「奴隷労働」企業に認定後わずか2日で撤回し、認定を主導した労働監督局長を解任した。カマサリ工場建設現場で163人の中国人労働者がパスポート没収・賃金搾取の被害に遭った事件の経緯と、中国との外交関係を優先する政治判断が労働者保護を揺るがす構造的問題を読み解く。
AI半導体株高が再点火した理由 世界株高を支える成長と危うさの正体
日経平均は4月14日に5万7877円へ反発し、米ナスダックも戦争ショック後の下げをほぼ吸収しました。なぜAI・半導体株に資金が戻るのか。TSMC、ASML、Broadcom、半導体ETF、原油高との綱引きを手掛かりに、世界株高の持続条件と崩れやすさを解説します。
Amazonのグローバルスター買収 通信衛星戦略と競争環境整理
Amazonは2026年4月14日、Globalstarを総額115.7億ドルで買収すると発表しました。狙いは衛星通信網、Band n53の周波数、Apple向けサービス、そしてDirect-to-Device市場です。Starlink先行の構図の中で、Amazon Leoが何を得て何が課題として残るのかを整理します。
ANA人事騒動は何だったのか 1997年対立と統治改革の起点
1997年のANA人事騒動は、若狭得治名誉会長、杉浦喬也会長、普勝清治社長の対立が表面化し、社長候補の差し替えまで起きた統治危機でした。背景には規制緩和下での旧運輸官僚主導と生え抜き経営のねじれがありました。1999年の無配、取締役31人から19人への削減、スターアライアンス参加へつながる改革の意味を読み解きます。
ANAとJALの上級座席競争を需要回復と機材更新戦略から読む
ANAは2026年8月受領の787-9に個室型ビジネスクラス「THE Room FX」を載せ、JALは2027年度から737-8で国内線ファーストクラスを全国展開します。訪日客4268万人、訪日消費9兆4559億円、国内旅行消費26兆7746億円の時代に、航空会社が座席を上質化する収益戦略を読み解きます。