町田市長選で稲垣康治氏が初当選、20年ぶり市政刷新へ
はじめに
2026年2月15日に投開票が行われた東京都町田市長選挙で、無所属新人の稲垣康治氏(50)が初当選を果たしました。5期20年にわたり市政を担ってきた石阪丈一市長の退任に伴い、町田市は20年ぶりにトップが交代することになります。
今回の選挙は、新人5人が立候補する激戦となりました。稲垣氏は自民党の推薦を受け、同時期に行われた衆議院選挙での自民党への追い風も相まって、他の候補を大きく引き離しての当選です。人口約43万人を抱える町田市が、どのような方向に進んでいくのか注目されています。
本記事では、選挙結果の詳細と新市長の政策、そして今後の町田市が直面する課題について解説します。
選挙結果の詳細と各候補の戦い
新人5人の激戦を制した稲垣氏
町田市長選には、無所属新人5人が立候補しました。稲垣康治氏が約44,610票を獲得してトップ当選。2位の元都議・奥沢高広氏(43)が約36,723票、3位の元市議・戸塚正人氏(45、国民民主推薦)が約31,988票で続きました。元市議の木目田英男氏(51)と元市議の秋田史津香氏(45)も出馬しましたが及びませんでした。
投票率は47.26%で、前回2022年の42.51%を上回りました。市議会議員選挙が同日に行われたことに加え、衆議院選挙後の政治への関心の高まりが投票率を押し上げたとみられます。
衆院選の追い風と自民推薦の影響
稲垣氏は自民党の推薦を受けて選挙戦に臨みました。2026年2月8日に投開票された衆議院選挙では、自民党が戦後最多の316議席を獲得する歴史的大勝を収めています。わずか1週間後に行われた町田市長選では、この衆院選での勢いが稲垣氏にも有利に働いたと分析されています。
一方、中道改革連合が衆院選で惨敗した影響は、国民民主推薦の戸塚氏にとって逆風になったとの見方もあります。
稲垣康治氏の経歴と掲げる政策
医師としてのキャリアと地域貢献
稲垣康治氏は慶應義塾大学医学部を2000年に卒業し、耳鼻咽喉科の専門医としてキャリアを積んできました。横浜市立市民病院で耳鼻咽喉科診療科長を務めた後、2013年に医療法人社団稲垣耳鼻咽喉科医院の院長に就任しています。
町田市医師会では理事を3期6年にわたって務めました。新型コロナウイルスの感染拡大時には、町田市保健所と協働してPCR検査センターの設置やワクチン接種事業に尽力した実績があります。政治経験はありませんでしたが、医療現場での経験と地域への貢献が有権者の信頼を得る要因となりました。
「誇れる町田へ」三位一体の改革
稲垣氏は「誇れる町田へ」をスローガンに掲げ、以下の「三位一体の改革」を公約の柱としています。
市民の健康: 医師としての専門性を活かし、市民病院の救急分野の強化や高齢者の見守り機能の充実を目指します。予防医療の推進も重要な政策として位置づけています。
思いやりを育む教育: 子どもの人間力を高める教育改革を推進し、次世代を担う人材の育成に注力する方針です。
地域の活力: 若者の起業支援や企業誘致を進め、町田市の経済活性化を図ります。多摩都市モノレールの延伸推進など、交通インフラの整備にも力を入れる考えです。
20年の石阪市政と町田市の課題
石阪市政が残したもの
石阪丈一氏は2006年に町田市長に就任し、5期にわたって市政を担いました。「市民目線による行政経営改革」を掲げ、財政の健全化や行政サービスの効率化に取り組んできた点が評価されています。
石阪市長は2025年9月に勇退を表明し、「年齢的なもの。体力や精神力などでズレてるなと思われる前に」とその理由を語っています。稲垣氏は石阪市長が事実上の後継候補として支援した人物であり、石阪市政の路線を基本的に継承しつつ、医療分野での独自色を打ち出す形となります。
新市長が直面する課題
町田市は人口約43万人の東京都内有数の都市ですが、今後はいくつかの重要な課題に取り組む必要があります。
駅前の老朽化と再開発: 町田駅周辺の商業施設や建物の多くは1970〜80年代に建てられたもので、老朽化が進んでいます。市は2024年に「町田駅前周辺開発推進計画」を策定し、4つの地区に分けた大規模なまちづくりを検討しています。2025年度には関連予算として約2億7千万円が計上されています。
多摩都市モノレール延伸: 多摩センターから町田駅までのモノレール延伸は、2030年代半ばの開業を目指しています。町田駅の交通結節点としての機能強化が期待されますが、新駅周辺の整備やバス路線の再編など、付随する課題も山積しています。
人口減少社会への対応: 少子高齢化が進む中、町田市も将来的な人口減少への対策が急務です。若い世代の定住促進や子育て支援の充実が求められています。
注意点・展望
新市長の稲垣氏は政治経験がないため、市議会との関係構築が最初の課題となります。町田市議会は同日の選挙で36議席が改選されており、新たな議会構成の中でどのようにリーダーシップを発揮できるかが注目されます。
石阪市政の継続路線を打ち出しつつも、医師としての専門性をどこまで市政に反映できるかが、稲垣市政の独自性を左右するでしょう。特に市民病院の機能強化は、少子高齢化が進む中で市民の関心が高い分野です。
衆議院選挙での自民党大勝を背景に、国や東京都との連携がスムーズに進む可能性がある一方、地方自治の独立性をどう確保するかも重要なポイントです。
まとめ
2026年2月15日の町田市長選挙は、医師出身の稲垣康治氏が初当選を果たし、20年ぶりの市政交代が実現しました。自民党推薦を受けた稲垣氏は、衆院選の追い風もあり新人5人の争いを制しています。
新市長は「誇れる町田へ」を旗印に、市民の健康・教育・地域活力の三位一体改革を掲げています。駅前再開発やモノレール延伸といった大型プロジェクトが控える中、医師としての経験を活かした市政運営に期待が集まります。
町田市は東京都内有数の人口を抱える自治体であり、その市政の方向性は多摩地域全体にも影響を与えます。新市長がどのような手腕を見せるか、今後の動向を注視する必要があります。
参考資料:
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