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by nicoxz

丸紅が英老舗スニーカー「Gola」買収、海外衣料品売上4倍へ

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はじめに

2026年1月7日、総合商社の丸紅株式会社は、英国フットウェアブランドを展開するジェイコブソングループ・リミテッド(Jacobson Group Limited)の買収を発表しました。買収額は100億円超とみられ、2025年12月末に株式取得を完了しています。

ジェイコブソンは、1905年創業の英国老舗スニーカーブランド「Gola(ゴーラ)」を筆頭に、複数のフットウェアブランドを世界30カ国以上で展開する企業です。

丸紅は今後も衣料品・雑貨ブランドの買収を進め、2030年をめどに海外ライフスタイル事業の売上高を現状の4倍となる10億ドル(約1,500億円)に拡大する計画です。本記事では、買収の詳細と丸紅の成長戦略、そしてGolaブランドの魅力について解説します。

買収の概要

取引の詳細

丸紅は米国子会社のRGバリー・コーポレーション(R.G. Barry Corporation、以下RGB)を通じて、英ジェイコブソングループの株式を取得しました。買収額は100億円超とみられています。

RGBは丸紅が2024年に買収した米国のライフスタイルブランド運営会社で、室内履き(ルームシューズ)の分野で米国最大手の地位を築いています。今回のジェイコブソン買収は、RGBにとって初めての「ロールアップ」(追加買収)となります。

買収対象ブランド

ジェイコブソンが展開する主なブランドは以下の通りです:

  • Gola(ゴーラ): 1905年創業の英国老舗スニーカーブランド
  • Lotus(ロータス): 英国の靴ブランド
  • Label(レーベル): フットウェアブランド
  • Frank Wright(フランクライト): 男性向けシューズブランド
  • Dunlop(ダンロップ): ライセンス展開
  • Lonsdale(ロンスデール): ライセンス展開

これらのブランドは、英国、北米、欧州を中心に30カ国以上で展開されています。

買収の狙い

丸紅は、RGBが持つ強固な販売網とコーポレート機能を、ジェイコブソン傘下のブランドと融合させることで、相乗効果を狙います。具体的には:

  1. RGBの北米流通網を活用したGola等の販路拡大
  2. RGBのeコマース基盤によるデジタル販売の強化
  3. ブランドポートフォリオの多様化によるリスク分散
  4. スケールメリットによるコスト効率化

Golaブランドとは

創業の歴史

Gola(ゴーラ)は、1905年5月22日に英国イングランド中部のノーサンプトンシャー州ボジート村で創業した老舗スポーツシューズブランドです。当初は「ボジート・ブート・カンパニー」という名前の小さな工房で、手作りのサッカースパイクを製造していました。

ブランド名「Gola」は、サッカーの「Goal(ゴール)」のアナグラム(文字の並び替え)に由来します。サッカーへの情熱を込めた命名です。

イングランド中部のノーサンプトンシャー地方は、チャーチ、チーニー、ドクターマーチンなど、英国を代表する靴ブランドが集積する伝統的な製靴産業の中心地でした。Golaもその伝統の中で生まれ育ったブランドです。

ブランドの成長

創業から二度の世界大戦を乗り越えたGolaは、1960年代から70年代にかけて飛躍的な成長を遂げました。

1968年に発売されたランニングシューズ「Harrier(ハリアー)」は、Golaの代名詞となるアイコニックなモデルです。クラシックなフォルムと洗練されたデザインで、スポーツシーンからストリートファッションまで幅広く支持されました。

1970年代には、リバプールFCなどのサッカーチームがGolaのスパイクを着用し、ブランドの知名度が急上昇。1972年に発売された「ゴーラ・バッグ」は世界的なブームを巻き起こし、英国の学生たちの定番アイテムとなりました。

現代における復活

1990年代に入ると、英国のブリットポップ・ムーブメントとともにGolaが再注目されました。ザ・ジャムのポール・ウェラーなど、モッズ・カルチャーのアイコンたちがHarrierを愛用し、「懐かしくも新しい」インディー・スタイルの象徴となりました。

2000年代には、かつてGolaを愛用していた世代が大人になり、「レトロ・スポーツファッション」として再ブランディングされました。プレミアム価格帯での展開により、ノスタルジアとファッション性を兼ね備えたブランドとして現在に至っています。

現在のブランドポジション

現在のGolaは、英国の伝統を受け継ぐクラシックなフォルムに、現代的なファッションを取り入れたデザインが特徴です。サッカーをはじめ、ラグビー、テニス、陸上、ボクシングなど、さまざまなスポーツ分野で実績を持ち、アスリートからも支持されています。

ジェイコブソングループは1996年にGolaを買収し、以来ブランドの拡大と近代化を進めてきました。今回の丸紅による買収は、Golaにとって新たな成長機会となります。

丸紅のライフスタイル事業戦略

RGバリー買収の経緯

丸紅は2024年、米投資ファンドのブラックストーンから、米室内履き最大手のRGバリー・コーポレーションの株式過半数を数百億円規模で取得しました。

RGバリーは1947年創業の老舗企業で、室内履き市場で長年にわたりトップシェアを維持しています。製品企画力、サプライチェーン管理、eコマースや小売店を通じた多角的販売チャネル、デジタルマーケティングのノウハウを持ち、消費者ニーズの変化に対応した製品展開で成長してきました。

中期経営戦略GC2027

丸紅は中期経営戦略「GC2027」において、「成長領域×高付加価値×拡張性」を有する戦略プラットフォーム型事業に注力する方針を掲げています。

ライフスタイルブランド運営事業は、この戦略の中核を担う分野の一つです。RGBを起点として、相乗効果の見込まれる成長ブランドを次々と買収(ロールアップ)することで、事業プラットフォームを拡張していく計画です。

次世代コーポレートディベロップメント本部

丸紅は2022年、成長ポテンシャルの高い東南アジアおよび米国の消費者向けビジネスを強化するため、「次世代コーポレートディベロップメント本部」を設立しました。

この本部は、2030年までに丸紅の新たな収益の柱となる事業の構築を目指しています。RGバリーの買収やジェイコブソンの買収は、この本部が主導する戦略投資の一環です。

2030年の売上目標

丸紅は、RGBを中心としたライフスタイル事業の売上高を、2030年をめどに現状の約4倍となる10億ドル(約1,500億円)に拡大する計画です。

この目標達成に向けて、今後も衣料品や雑貨ブランドの買収を継続する方針です。Golaを含むジェイコブソンの買収は、この成長戦略における重要なマイルストーンとなります。

商社のファッションビジネス

総合商社の動向

総合商社がファッション・ライフスタイル分野に注力する動きが活発化しています。かつては繊維部門として原料や素材の取引が中心でしたが、近年はブランド運営やリテール事業への進出が加速しています。

商社の強みは、グローバルなネットワーク、資金力、そしてサプライチェーン管理のノウハウです。これらを活かして、海外ブランドの日本展開や、逆に日本・アジアブランドの海外展開を支援するビジネスモデルが確立されつつあります。

丸紅のアパレル事業

丸紅は従来から繊維部門でアパレル関連事業を展開してきましたが、RGバリー買収を機に、ブランド運営事業への本格参入を果たしました。

従来の「仲介・卸売」モデルから、自らブランドを保有・運営する「プリンシパル投資」モデルへの転換は、商社ビジネスの大きなパラダイムシフトを象徴しています。

他商社との比較

他の総合商社も同様の動きを見せています。伊藤忠商事は英国のサングラスブランドを傘下に持ち、三菱商事はコンビニエンスストア事業を通じてプライベートブランド商品を展開するなど、消費者向けビジネスの強化が業界全体のトレンドとなっています。

丸紅のRGB・ジェイコブソン戦略は、商社のファッションビジネスにおける新たなモデルケースとして注目されています。

買収のシナジー効果

販売チャネルの拡大

RGBは北米市場で強固な販売網を持っています。ジェイコブソンのブランド群、特にGolaは英国・欧州では知名度がありますが、北米市場での展開は限定的でした。

RGBの流通網を活用することで、Gola等のブランドを北米市場に本格展開することが可能になります。また、RGBが得意とするeコマースチャネルを通じて、デジタル販売も強化できます。

ブランドポートフォリオの補完

RGBの主力は室内履き(ルームシューズ)であり、ジェイコブソンはスニーカーやカジュアルシューズが中心です。両社の商品カテゴリーは重複が少なく、互いを補完する関係にあります。

これにより、フットウェア全般をカバーする総合的なブランドポートフォリオが構築でき、小売店やオンラインストアへの提案力が高まります。

オペレーションの効率化

サプライチェーン管理、物流、バックオフィス機能などを共有することで、オペレーションコストの削減が期待できます。特に、製造委託先の集約や物流拠点の統合は、スケールメリットを発揮しやすい分野です。

今後の展望

さらなるM&A

丸紅は、2030年の売上目標達成に向けて、今後もブランド買収を継続する方針を明らかにしています。ジェイコブソンに続く次の買収ターゲットがどのようなブランドになるか、注目されます。

想定されるカテゴリーとしては、アパレル、バッグ・アクセサリー、ホームグッズなど、「ライフスタイル」の範疇に入る分野が考えられます。

Golaブランドの成長戦略

Golaにとって、丸紅傘下入りは成長の転機となる可能性があります。北米市場への本格進出に加え、アジア市場、特に日本や中国での展開強化も視野に入ってくるでしょう。

120年の歴史を持つ英国老舗ブランドとしてのヘリテージを活かしながら、現代のトレンドに合わせた商品開発やマーケティングが期待されます。

商社ビジネスの進化

丸紅のライフスタイル事業戦略は、総合商社のビジネスモデル進化を象徴しています。従来の「モノの流れを仲介する」役割から、「ブランドを育て、消費者に届ける」役割への転換です。

この戦略が成功すれば、他の商社も同様の動きを加速させる可能性があり、日本企業による海外ブランド買収のトレンドがさらに強まることが予想されます。

まとめ

丸紅は、1905年創業の英国老舗スニーカーブランド「Gola」を擁するジェイコブソングループを100億円超で買収しました。2024年に買収した米RGバリーを核として、ライフスタイルブランド事業のプラットフォーム構築を進める戦略の一環です。

Golaは、サッカーブーツメーカーとして創業し、1960〜70年代に英国で大ブームを巻き起こした歴史あるブランドです。クラシックなデザインと英国の伝統を受け継ぎながら、現代のファッションシーンでも支持を集めています。

丸紅は2030年をめどに、海外ライフスタイル事業の売上高を現状の4倍となる10億ドル(約1,500億円)に拡大する計画です。今後も衣料品・雑貨ブランドの買収を継続し、事業プラットフォームを拡張していく方針であり、商社のファッションビジネスにおける新たなモデルケースとして注目されています。

参考資料:

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