茂木外相とルビオ国務長官が会談、重要鉱物で連携
はじめに
2026年2月14日、ドイツ・ミュンヘンで開催中のミュンヘン安全保障会議の場を利用して、茂木敏充外相とマルコ・ルビオ米国務長官が約30分間の会談を行いました。両外相は重要鉱物やレアアース(希土類)を含む経済安全保障の取り組みを推進することで合意し、2025年7月に成立した日米関税合意を着実に実施していくことも確認しました。
中国によるレアアース輸出規制が国際的なサプライチェーンに大きな影響を与える中、日米の連携強化は世界の経済安全保障にとって重要な意味を持ちます。本記事では、今回の日米外相会談の内容と、その背景にある重要鉱物をめぐる国際情勢を詳しく解説します。
日米外相会談の概要
会談の主な合意事項
外務省の発表によると、今回の会談では複数の重要テーマが議論されました。両外相は中国をめぐる諸課題や、核・ミサイル問題および拉致問題を含む北朝鮮への対応について幅広く意見を交換しています。
特に注目すべきは、経済安全保障分野での連携強化です。重要鉱物・レアアース分野を含む経済安全保障面の取り組みをさらに推進していくことで一致しました。また、日米間の具体的な安全保障協力を進め、日米同盟の抑止力・対処力をさらに強化していくことでも合意しています。
ルビオ国務長官からは、日米同盟に対する米国の揺るぎないコミットメントが改めて示されました。
日米関税合意の実施確認
会談では、2025年7月に成立した日米関税合意を着実に実施していくことも確認されました。この合意は、トランプ政権が発動した高率関税に対応するもので、相互関税率を15%に設定し、自動車・自動車部品の関税率も25%から15%に引き下げるという内容です。
さらに、半導体や医薬品といった経済安全保障上重要な物資について、日本が他国に劣後する扱いを受けないという確約も含まれています。今回の外相会談で改めてこの合意の実施が確認されたことは、日米間の経済関係の安定を示すシグナルといえます。
高市首相の訪米に向けた調整
両外相は、2026年春に向けて調整中の高市早苗首相の訪米が「揺るぎない日米同盟の姿を改めて示す機会」となるよう、緊密に連携していくことでも一致しました。首脳会談の実現に向けて、外相レベルでの地ならしが進んでいることがうかがえます。
重要鉱物・レアアースをめぐる国際情勢
中国依存からの脱却が急務に
日米が重要鉱物・レアアース分野での協力を強化する背景には、中国への依存度の高さという深刻な問題があります。レアアースの採掘・精製において、中国は世界シェアの約60〜70%を占めており、特に精製段階では90%近くを中国に依存しているとされます。
2026年1月には中国が対日レアアース輸出規制を発動し、サプライチェーンの脆弱性が改めて浮き彫りになりました。レアアースはEV(電気自動車)のモーター、スマートフォン、防衛装備品など現代社会に不可欠な素材であり、供給途絶は産業全体に深刻な影響を及ぼしかねません。
米国主導の「貿易圏」構想
トランプ米政権は2月4日、重要鉱物の供給網強化に向けて日本やEU加盟国など55カ国が参加する閣僚級会合を開催しました。この会合では、同盟国・友好国が結束して中国依存から脱却するための「貿易圏」を構築する方針が示されています。
具体的には、「強制力のある最低価格制度」を導入し、中国産の安価なレアアースに対抗する仕組みを検討しています。また、米商務省は戦略的重要鉱物の備蓄に120億ドル(約1兆8,000億円)を投じる計画も発表しており、レアアース確保に向けた米国の本気度がうかがえます。
日本独自の取り組み:南鳥島沖レアアース泥
日本は米国との連携に加えて、国産レアアースの確保にも動いています。南鳥島沖の海底に大量のレアアースを含む泥(レアアース泥)が存在することが確認されており、2026年1月には試掘が開始されました。
2027年度中に数十〜数百トン規模の試験採鉱と分離・精製プロセスの検証を行い、早ければ2028〜2030年頃の本格採掘・民間利用開始が想定されています。実現すれば、日本のレアアース自給率の向上に大きく貢献する可能性があります。
注意点・展望
ミュンヘン安保会議で見えた日中の緊張
今回のミュンヘン安全保障会議では、日米協力の深化とともに日中間の緊張も表面化しました。中国の王毅外相は演説の中で日本を批判し、高市首相の台湾有事に関する発言を取り上げて「軍国主義の亡霊が徘徊している」と主張しました。
これに対し茂木外相は「事実に基づいていない」と即座に反論し、日本の戦後の平和国家としての歩みを強調しました。重要鉱物をめぐる日米協力は、こうした日中の地政学的な対立の文脈の中で進められているのです。
今後の見通し
日米間の重要鉱物協力は、今後さらに具体的な施策として進展することが予想されます。55カ国参加の閣僚級会合で示された行動計画の策定、南鳥島沖のレアアース泥の実用化、そして日米関税合意に基づくサプライチェーンの再構築など、多層的な取り組みが並行して進むことになるでしょう。
ただし、中国のレアアース生産における圧倒的なシェアを短期間で代替することは容易ではありません。脱中国依存の実現には、採掘・精製技術の向上、代替材料の開発、リサイクル技術の確立など、複合的なアプローチが必要です。
まとめ
ミュンヘン安全保障会議での茂木外相とルビオ国務長官の会談は、重要鉱物・レアアース分野での日米協力を改めて確認する重要な機会となりました。中国によるレアアース輸出規制が現実の脅威となる中、日米が経済安全保障面で連携を深めることの意義は大きいです。
日米関税合意の着実な実施と、高市首相の訪米に向けた調整も進んでおり、日米関係は多面的に強化されています。レアアースの安定供給確保は、日本の産業競争力と安全保障の両面に関わる国家的な課題であり、今後の日米協力の進展に注目が集まります。
参考資料:
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