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by nicoxz

お好み焼き店から見る外食景気と物価高の行方

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はじめに

2025年の大阪・関西万博は、関西の食文化を世界に発信する大きな契機となりました。約2,900万人が来場し、会場内の約100店舗の飲食施設は連日賑わいを見せました。

しかし万博が閉幕してから数カ月が経ち、外食産業を取り巻く環境は複雑さを増しています。物価上昇の継続、日中関係の緊張によるインバウンド減少、そして万博特需の反動。お好み焼き店「千房」を展開する千房ホールディングスの中井貫二社長の声を起点に、外食景気の現状と今後を読み解きます。

千房が語る外食の「今」

万博後の反動と日中関係の影響

千房ホールディングスは全国66店舗、海外7店舗を展開するお好み焼きチェーンです。中井貫二社長は日本経済新聞の取材に対し、万博後の外食動向について「万博中の急増の反動が出たところに日中関係の緊張が重なり年末年始は前年比5〜10%下がった」と語っています。

2025年11月、高市早苗首相が国会で台湾をめぐる「存立危機事態」に言及したことを受け、中国外務省は11月14日に日本への渡航自粛を呼びかけました。野村総合研究所の分析によれば、中国人訪日客数は10月の前年比プラス22.8%から11月にはプラス3.0%に急減速し、12月には前年比マイナス45%にまで落ち込みました。

大阪や兵庫は中国人観光客への依存度が高く、Bloombergの報道でも「中国インバウンド急減で関西観光に打撃」と指摘されています。千房のような関西を拠点とする外食チェーンにとって、このダブルパンチは深刻な影響をもたらしました。

回復の兆しも

ただし明るい材料もあります。中井社長は「中国以外の訪日客や、万博中の混雑を避けていた国内客の回復で持ち直している」とも述べています。

J-CASTニュースの分析によれば、中国からの訪日客減少分は台湾や韓国、欧米からの観光客増加でカバーできる可能性があります。また、国内旅行需要の回復も追い風となっています。

外食産業の最新動向

物価高と消費者行動の変化

物価上昇が続く中、消費者の外食に対する行動は変化しています。経済産業省のレポートによれば、物価上昇に対応して外食回数を抑制したり、一食あたりの単価を下げたりする行動が広がっています。

実質賃金がまだ安定的に前年を上回っていない状況で、消費者は「食べるもの」の選択に慎重になっています。外食企業には値上げと客離れのバランスという難しい経営判断が求められています。

インバウンド需要の二極化

JTBの2026年予測によれば、訪日外国人旅行者数は4,140万人(前年比97.2%)、消費額は9.64兆円(前年比100.6%)と見込まれています。人数はやや減少するものの、一人当たりの消費額は増加する構図です。

富士経済の調査によれば、訪日外国人の飲食費は2023年に1.2兆円、2024年には1.7兆円と急増しました。外食産業全体の約5%を占める規模に成長しており、インバウンド需要は外食業界にとって無視できない柱となっています。

ただし、中国人観光客の減少は大きな課題です。日本総研の分析では、日中関係が本格的に悪化し長期化した場合、訪日消費額は3年で2.3兆円減少する可能性があると試算されています。

万博レガシーの活用

2025年の大阪・関西万博では、大阪外食産業協会がパビリオン「天下の台所〜食博覧会・大阪2025」を出展し、関西の食文化を世界に発信しました。サスティナブルフードコートでは配膳ロボットやコンシェルジュロボットを導入し、未来の飲食店モデルを体感できる場を提供しました。

万博を通じて高まった関西食文化への注目は、中長期的な観光資源として活用できます。「体験重視」の消費トレンドや地方都市への関心の高まりは、外食産業にとって新たなチャンスにもなり得ます。

物価高時代の外食戦略

コストと価格のバランス

外食企業が直面する最大の課題は、原材料費と人件費の上昇をどう吸収するかです。値上げをすれば客離れを招きかねませんが、吸収しきれなければ利益が圧迫されます。

千房の中井社長は、野村證券で14年間勤務した経験を持つ経営者です。金融の知見を活かしたコスト管理と、「食の力で人をつなげる」というホスピタリティ重視の経営方針で、この難局に対応しています。

多角化とグローバル展開

千房は35年前のハワイ出店を皮切りに、ベトナム、中国、フィリピン、台湾、韓国など海外7店舗を展開しています。国内市場の伸びが限定的な中で、海外展開は成長のドライバーとなり得ます。

インバウンド観光で日本食の魅力が世界に浸透したことは、海外出店にとっても追い風です。万博での関西食文化の発信が、グローバルなブランド価値の向上につながることが期待されます。

注意点・展望

日中関係の行方が鍵

外食産業の回復にとって、日中関係の行方は最大の不確定要素です。中国からの訪日客が回復すれば、特に関西の外食産業は大きな恩恵を受けます。逆に、緊張が長期化すればGDPベースで約0.29%の押し下げ効果が見込まれ、その影響は外食を含むサービス業に広く及びます。

「量」から「質」への転換

観光政策の焦点は「人数の拡大」から「消費額の増大」と「満足度の向上」へシフトしています。外食産業にとっても、客数だけを追うのではなく、一人当たりの体験価値を高める戦略が求められます。

まとめ

お好み焼き店「千房」の視点から見える外食景気は、万博特需の反動と日中関係の緊張という逆風に直面しながらも、中国以外のインバウンド回復や国内客の戻りで持ち直しつつあります。

物価高が続く中で、外食産業は値上げと客離れのバランス、インバウンド依存のリスク分散、そして体験価値の向上という三つの課題に取り組む必要があります。万博が世界に発信した関西の食文化を活かしつつ、変化する消費者ニーズに対応できる企業が、今後の外食市場を牽引していくでしょう。

参考資料:

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