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by nicoxz

スウェーデンが日英伊の戦闘機開発参画を検討

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はじめに

スウェーデンのヨンソン国防相が、日本・英国・イタリアによる次期戦闘機共同開発計画「GCAP(グローバル戦闘航空プログラム)」への参画について「オープンな姿勢で臨んでいる」と発言し、注目を集めています。2027年までに自国独自開発か他国との連携かの方針を決めるとしています。

スウェーデンは自国製のグリペン戦闘機を製造する防衛大手サーブ(SAAB)を擁する航空技術先進国です。GCAPへの参画が実現すれば、第6世代戦闘機開発における国際連携の枠組みが大きく拡大することになります。

本記事では、GCAPの現在の進捗状況、スウェーデンの次期戦闘機計画、そして参画が実現した場合の影響について詳しく解説します。

GCAPの現在地と開発スケジュール

日英伊3カ国による第6世代戦闘機計画

GCAPは2022年12月に日本・英国・イタリアの3カ国首脳が合意した第6世代ステルス戦闘機の共同開発計画です。英国空軍とイタリア空軍が運用するユーロファイター・タイフーン、そして航空自衛隊のF-2の後継機として、2035年までの配備開始を目指しています。

2025年7月には、共同開発を管理する国際機関「GIGO(GCAP統合・ガバナンス機構)」が英国南部のレディングに設立されました。トップには日本の岡真臣元防衛審議官が就任し、3カ国が対等な立場で開発を進める体制が整いつつあります。

開発の進捗と課題

GCAPの開発スケジュールは、2025年中にコンセプト・評価段階を完了し、設計・開発段階に移行する計画でした。英BAEシステムズは有人実証機のデザインを公開し、2028年の初飛行を目指しています。

エンジン開発では、日本のIHI、英国のロールス・ロイス、イタリアのアビオ・エアロの3社が国際共同開発の体制を強化しています。電子装備開発でも日英伊4社による連合体「G2E」が発足し、センサーや通信システムの開発が進められています。

ただし、2035年の初号機配備を目指す場合、本来は2025年中に試作機の製造が始まるべきところ、スケジュールにはやや遅れが見られるとの指摘もあります。

スウェーデンの次期戦闘機戦略

グリペン後継機の選択肢

スウェーデンはサーブ製のJAS 39グリペン戦闘機を運用していますが、その後継機をどう確保するかが安全保障上の重要課題です。スウェーデン国防装備庁(FMV)はサーブと契約し、「Framtida Stridsflygsystem(未来戦闘航空システム)」と呼ばれる次世代戦闘機の概念研究を進めてきました。

スウェーデン政府は約26億7,600万クローナ(約2億8,200万ドル)を投じて、概念研究、技術開発、実証機の製造を進めています。サーブは2027年に無人戦闘機サイズの実証機を飛行させる計画で、ステルス性能、有人・無人連携(MUM-T)、電子戦、ソフトウェアアーキテクチャなどの研究を行っています。

3つの選択肢と2027年の判断

ヨンソン国防相が示した方針によると、スウェーデンは2027年までに以下の選択肢から方向性を決定します。

1つ目は、サーブを中心とした国内独自開発です。グリペンの開発・製造で培った技術力を活かし、自国の要求に最適化した戦闘機を開発する道です。ただし、第6世代戦闘機の開発費は単独国家には巨額であり、コスト面での課題が大きいとされています。

2つ目が、GCAPへの参画です。日英伊の枠組みに加わることで、開発コストを分担しながら最先端の技術にアクセスできます。一方で、自国の要求を反映させる余地が限られる可能性があります。

3つ目は、他の国際プログラムとの連携です。フランス・ドイツ・スペインが進める「FCAS(将来戦闘航空システム)」など、他の選択肢も存在します。

ドイツとの関係も注目

興味深いのは、ドイツの動向です。ドイツはフランス・スペインとのFCAS開発で困難に直面しており、スウェーデンのサーブとの協力を代替オプションとして検討しているとの報道があります。同時にGCAPの動向も注視しており、欧州の戦闘機開発をめぐる枠組みは流動的な状況が続いています。

スウェーデン参画の意義と影響

技術的な相乗効果

スウェーデンがGCAPに参画した場合、サーブが持つ独自の航空技術が加わることで、計画全体の技術力が向上する可能性があります。特にグリペンの開発で培った「低コストで高性能な戦闘機」を実現するノウハウは、GCAPのコスト管理にも貢献できるでしょう。

サーブはステルス技術や無人機技術の研究も進めており、GCAPが目指す「有人・無人連携」のコンセプトにも技術的な親和性があります。

NATO加盟との連動

2024年にNATOに正式加盟したスウェーデンにとって、西側諸国との防衛協力の深化は戦略的に重要です。GCAPへの参画は、単なる戦闘機調達の問題にとどまらず、日本を含む同盟国との安全保障協力を強化する政治的な意味合いも持ちます。

注意点・展望

スケジュールの不確実性

GCAPの2035年配備目標には、すでに遅延リスクが指摘されています。新たな参画国が加わる場合、開発体制の再編や意思決定プロセスの複雑化により、さらなる遅延が生じる可能性があります。過去の国際共同開発プロジェクトでも、参画国が増えるほど調整コストが増大する傾向がありました。

技術移転と産業基盤の課題

スウェーデンが参画する場合、各国間の技術移転や作業分担の再調整が必要になります。既に日英伊3カ国の間で合意されたフレームワークに、4カ国目をどう組み込むかは技術面・政治面の両方で課題があります。

また、サーブの独自開発計画が並行して進んでいる以上、GCAP参画は「両天秤をかけながらの交渉」という側面も持ちます。2027年の判断は、技術実証機の飛行結果やGCAPの進捗状況を見極めた上での総合的な判断になるでしょう。

まとめ

スウェーデンのGCAP参画検討は、第6世代戦闘機開発をめぐる国際的な枠組みが依然として流動的であることを示しています。2027年までの判断に向けて、スウェーデンは自国での実証機開発を進めながら、GCAP参画の可能性も同時に探る戦略を取っています。

日本にとっても、スウェーデンの参画はGCAPの技術力強化とコスト分散の面でメリットがある一方、意思決定の複雑化というリスクも伴います。今後の展開を注視しながら、GCAPが2035年の配備目標を達成できるかが問われています。

参考資料:

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