NYダウ続伸で500ドル超高 トランプ関税撤回で安堵広がる
はじめに
2026年1月22日、米国株式市場は2日連続で大幅上昇しました。ダウ工業株30種平均は一時500ドルを超える上昇を見せ、終値でも約300ドル高で取引を終えています。
この急反発の背景には、トランプ大統領がダボス会議で欧州諸国への関税脅迫を撤回したことがあります。わずか2日前には870ドル超の急落を記録していただけに、市場の振れ幅の大きさが際立っています。
投資家の間では、トランプ氏が関税を脅迫しても最終的には撤回する「TACO(Trump Always Chickens Out)」パターンの復活だという見方も広がっています。この記事では、今回の市場変動の経緯と背景を解説します。
グリーンランド問題と関税脅迫の経緯
トランプ氏のグリーンランド取得構想
トランプ大統領は第2期政権発足以来、デンマーク領グリーンランドの取得に強い意欲を示してきました。グリーンランドは北極圏に位置し、豊富な鉱物資源と戦略的な地政学的重要性を持っています。
しかし、デンマーク政府およびグリーンランド自治政府はこれを明確に拒否しており、トランプ氏の要求は国際的な批判を受けていました。
8カ国への関税脅迫
2026年1月19日、トランプ政権はグリーンランド取得への協力を得るため、欧州8カ国に対して2月1日から10%の追加関税を課すと発表しました。対象国はデンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、フランス、ドイツ、イギリス、オランダです。
この発表は市場に大きな衝撃を与えました。
1月20日の急落
関税脅迫を受けて、1月20日の米国株式市場は大幅下落しました。
- ダウ平均:870.74ドル安(-1.76%)、終値48,488.59ドル
- S&P 500:2.06%安、終値6,796.86ポイント
- ナスダック総合:2.39%安、終値22,954.32ポイント
これは2025年10月以来最悪の取引日となり、S&P 500だけで1.2兆ドル以上の時価総額が消失しました。
トランプ氏の関税撤回と市場の反応
ダボス会議での方針転換
1月21日、スイス・ダボスで開催されていた世界経済フォーラム年次総会で、トランプ大統領は方針を一転させました。NATO事務総長マルク・ルッテ氏との会談後、グリーンランドの戦略的地位に関する「枠組み合意」に達したと発表し、2月1日の関税発動を見送ることを表明しました。
この発表は午後2時30分頃にSNSで行われ、市場は即座に反応しました。
1月21日の急反発
- ダウ平均:588ポイント高(+1.21%)
- S&P 500:1.16%高
- ナスダック総合:1.18%高
前日の下落分の大部分を回復する大幅反発となりました。
1月22日も続伸
翌22日も上昇は続き、ダウ平均は一時500ドル以上上昇しました。終値では306.78ドル高(+0.63%)の49,384.01ドルで取引を終えています。
S&P 500は0.55%高の6,913.35ポイント、ナスダック総合は0.91%高の23,436.02ポイントでした。テスラがロボタクシーへの期待から急騰し、ハイテク株の上昇を牽引しました。
「TACO」パターンの復活
投資家の間で広がる見方
今回の一連の動きを受けて、投資家の間では「TACO」という言葉が再び注目されています。TACOとは「Trump Always Chickens Out(トランプは常に腰砕けになる)」の略で、トランプ氏が強硬な関税を脅迫しても、最終的には撤回・延期するパターンを指します。
この言葉は2025年4月の「解放の日」関税発表後に広まりました。当時も市場を揺るがす大規模な関税を発表しましたが、結局は実施を見送った経緯があります。
市場への影響
TACOパターンが定着すると、トランプ氏の関税脅迫に対する市場の反応が変化する可能性があります。脅迫発表時の下落幅が縮小し、撤回を見込んだ買いが入りやすくなるためです。
ただし、これは両刃の剣でもあります。市場が脅迫を「ブラフ」と見なすようになれば、トランプ氏の交渉力が弱まる可能性があり、より強硬な措置を実際に実行するリスクも否定できません。
欧州の対応と今後の展望
欧州側の報復準備
欧州諸国は今回の関税脅迫に対し、緊急首脳会議を開催し、1,000億ドル規模の報復関税パッケージを準備していたと報じられています。トランプ氏の撤回によりこの報復措置は見送られましたが、緊張関係は続いています。
グリーンランド問題の行方
「枠組み合意」の具体的な内容は明らかにされていません。トランプ氏はグリーンランド取得への意欲を維持しているとみられ、今後も交渉は続く見通しです。
市場参加者は、この問題が再燃するリスクを警戒しています。
金価格の高騰
地政学的リスクへの警戒から、金価格は1月22日に1オンス4,900ドルを初めて突破しました。年初来の連続高値更新となっており、投資家のリスク回避姿勢が続いていることを示しています。
投資家への注意点
ボラティリティの高さ
今回の相場変動は、トランプ政権下での市場のボラティリティ(価格変動性)の高さを改めて示しました。わずか3日間でダウ平均は約1,500ドルの振れ幅を見せています。
短期的な価格変動に振り回されないよう、長期的な投資視点を維持することが重要です。
政策リスクへの備え
トランプ政権の政策は予測が困難であり、SNSでの突発的な発表が市場を動かすケースが続いています。ポートフォリオの分散や、ヘッジ手段の活用を検討する価値があります。
まとめ
1月22日の米国株式市場は、トランプ大統領による欧州への関税脅迫撤回を受けて続伸しました。ダウ平均は一時500ドル超上昇し、前日と合わせて約900ドルの反発となりました。
今回の急落と急反発は、トランプ政権下での市場のボラティリティの高さを示すとともに、「TACO」パターンへの期待を投資家に再認識させました。ただし、グリーンランド問題は完全に解決されておらず、今後の動向には引き続き注意が必要です。
金価格の高騰が示すように、地政学的リスクへの警戒は続いており、投資家は慎重な姿勢を維持しつつ市場に臨むことが求められます。
参考資料:
- Dow closes up 580 points after Trump backs off tariffs over Greenland - ABC News
- S&P 500 pops 1%, Dow surges nearly 600 points as Trump calls off Europe tariffs - CNBC
- Trump’s latest tariffs U-turn is sparking a global market rally - CNBC
- Markets rally and safe havens fall as Trump touts Greenland deal - Euronews
- Trump’s battle for Greenland: Why the stock market hates it all - Yahoo Finance
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