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by nicoxz

TACOからビッグMACへ:米中間選挙に向けた新投資戦略

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はじめに

米国株式市場では、トランプ大統領の政策発言に振り回される展開が続いています。2025年4月の「解放の日」関税発動以降、市場参加者の間で広まった「TACO(Trump Always Chickens Out:トランプはいつも腰砕け)トレード」は、政策撤回を見越した押し目買い戦略として機能してきました。

しかし2026年11月に控える中間選挙を前に、新たな投資テーマが浮上しています。それが「ビッグMAC(Midterms Are Coming:中間選挙が来る)トレード」です。この戦略は、選挙を意識した政権の生活費対策が市場に与える影響を先読みするものです。

本記事では、TACOトレードの仕組みを振り返りつつ、ビッグMACトレードの具体的な内容と、2026年の投資戦略への示唆を解説します。

TACOトレードとは何だったのか

政策転換を利用した押し目買い戦略

TACOトレードは、フィナンシャル・タイムズの記者ロバート・アームストロング氏が2025年5月2日のコラムで名付けた投資戦略です。「Trump Always Chickens Out」の頭文字を取ったこの言葉は、トランプ政権が関税などの強硬策を発表しても、市場や経済への悪影響が明らかになると撤回・軟化させる傾向を指しています。

具体的な投資手法は単純です。関税発表などで株価が下落したタイミングで買いを入れ、政策撤回や軟化のニュースで株価が反発した際に売却するというものです。2025年4月以降、この戦略は約9カ月にわたって有効に機能してきました。

2026年1月のグリーンランド騒動でも機能

2026年1月には、トランプ大統領がグリーンランドの領有権に言及し、欧州諸国への関税を示唆したことで市場が動揺しました。しかし数日後、大統領がグリーンランドとの「枠組み合意」に達したと発表し、関税も見送る姿勢を示すと、株価は急反発しました。

B.ライリー・ウェルス・マネジメントのアート・ホーガン氏は「今日はTACO水曜日だ」とコメントし、この戦略の継続的な有効性を示唆しました。

TACOトレードの限界

一方で、バンク・オブ・アメリカの元グローバル経済責任者イーサン・ハリス氏は、TACOではなく「TATA(Trump Always Tries Again:トランプは常に再挑戦する)」と呼ぶべきだと指摘しています。政策を完全に撤回するのではなく、形を変えて再度挑戦してくる可能性があるためです。

また、ブルームバーグは「TACOトレードはそれ自体の問題を抱えている」と報じ、市場参加者全員が同じ戦略を取ることで、効果が薄れるリスクを警告しています。

ビッグMACトレードの登場

中間選挙を見据えた新戦略

「ビッグMAC」は「Midterms Are Coming(中間選挙が来る)」の頭文字です。2026年11月の中間選挙に向けて、トランプ政権が有権者の生活費負担軽減を重視した政策を打ち出すという見立てに基づく投資戦略です。

具体的には、以下の4つの分野が注目されています。

  1. 石油価格の引き下げ:エネルギーコスト低減による家計負担の軽減
  2. 住宅ローン金利の低下:住宅取得のハードル引き下げ
  3. クレジットカード金利の上限設定:消費者金融負担の軽減
  4. FRB政策金利への働きかけ:利下げ圧力の継続

クレジットカード金利10%上限案の衝撃

2026年1月9日、トランプ大統領はクレジットカード金利に10%の上限を1年間設定するよう求めると表明しました。FRBによると、2025年11月時点でカードの平均金利は20.97%であり、実現すれば約30年ぶりの低水準となります。

この発表を受け、金融セクターの株価は急落しました。クレジットカード関連企業の株価は発表後に約2割下落する場面もありました。

ビリオネア投資家のビル・アックマン氏ですら、トランプ支持者でありながら「この要請は間違いだ」とXに投稿し、カード会社が採算の取れない顧客を切り捨てることで、かえって消費者がヤミ金融に頼らざるを得なくなると警告しました。

金融セクターへの投資判断

ビッグMACトレードの観点からは、金融セクター、特にクレジットカード事業を主力とする企業への投資には慎重になる必要があります。政権の「アフォーダビリティ」政策が実現すれば、収益性への影響は避けられません。

一方、政策の実現可能性には疑問も残ります。UBSのアナリストは「法的な課題が多く、議会での法案通過が必要」と指摘しており、大統領令だけでは実効性に限界があるとの見方が有力です。

中間選挙年の株式市場アノマリー

歴史的パターンが示す注意点

中間選挙年の株式市場には、独特のパターンが存在します。S&P500指数は中間選挙年に平均1%のリターンにとどまり、新大統領の就任直後の中間選挙年では平均7%下落するというデータがあります。

さらに注目すべきは、中間選挙年の平均最大ドローダウン(高値からの下落率)が18%に達するという点です。2026年のどこかで、市場が大きく調整する可能性を示唆しています。

年後半に向けた反発パターン

しかし、ネガティブな側面だけではありません。中間選挙後12カ月のS&P500平均リターンは12.4%〜16.3%と、通常年を大きく上回ります。1986年以降の10回の中間選挙年を見ると、10月〜12月の3カ月間はほぼプラスとなる傾向があります。

この「秋の底打ち、年末ラリー」というパターンは、ビッグMACトレードの根拠の一つとなっています。8月〜10月の調整局面を「仕込みのチャンス」と捉える見方です。

2026年は比較的良好な中間選挙年か

インタラクティブ・ブローカーズの分析によると、S&P500の長期データでは、中間選挙年の約87%がプラスのリターンで終わり、平均年間パフォーマンスは19%を超えています。

ファクトセットの集計では、ウォール街のアナリスト予想を統合した2026年末のS&P500目標値は8,085ポイントで、2月初旬の水準から16%以上の上昇余地を示唆しています。

注意点と今後の展望

過信は禁物

TACOトレードもビッグMACトレードも、過去のパターンに基づく経験則です。中間選挙年と他の年のパフォーマンス差は、統計的には有意ではないという分析もあります。31回の選挙、125年のデータでも、リターンは30%超の下落から50%近い上昇まで幅広く分布しており、平均値は誤解を招く可能性があります。

ファンダメンタルズの重視

キャピタル・グループは「株式パフォーマンスを左右するのは、どの政党が議会を支配するかではなく、経済のファンダメンタルズだ」と指摘しています。S&P500構成企業の2026年EPS(一株当たり利益)は二桁増益が予想されており、これが相場の下支え要因となります。

分散投資の重要性

ハイテク株への資金集中が顕著な現在、S&P500の時価総額上位10銘柄だけで指数全体の約4割を占める状況です。三井住友DSアセットマネジメントは「ハイテク株と安定セクターを組み合わせることでリスクを抑える戦略」を推奨しています。

まとめ

2026年の米国株式市場は、TACOトレードからビッグMACトレードへと投資テーマが移行しつつあります。トランプ政権の政策転換を利用する戦略から、中間選挙を見据えた生活費対策の影響を先読みする戦略へのシフトです。

歴史的なアノマリーによれば、中間選挙年は年前半にボラティリティが高まり、秋に調整局面を迎えた後、年末にかけて反発するパターンが多く見られます。8月〜10月の調整を押し目買いの好機と捉える見方は一定の根拠があります。

ただし、過去のパターンへの過信は禁物です。経済のファンダメンタルズを注視しながら、分散投資を心がけることが、2026年の投資戦略の基本となるでしょう。

参考資料:

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