高木美帆がミラノ五輪で銅3個、「これがスポーツ」
はじめに
ミラノ・コルティナ2026冬季五輪のスピードスケート女子で、高木美帆選手(31歳、TOKIOインカラミ)が3つの銅メダルを獲得しました。オリンピック通算メダル数は10個となり、夏季・冬季を通じた日本女子選手の歴代単独最多記録を更新しています。
しかし本命と目された1500mでは6位に終わり、3大会越しの金メダル獲得はなりませんでした。レース翌日のインタビューで「これがスポーツ」と穏やかに語った高木選手の言葉が、4年間の挑戦のすべてを物語っています。
ミラノでの3つの銅メダル
女子1000m:「今の実力」
女子1000mでは1分13秒95で3位に入りました。北京2022では同種目で金メダルを獲得しており、五輪記録保持者でもありました。しかし金メダルのユッタ・レールダム(オランダ)に1秒64の差をつけられる結果となりました。
高木選手は「ゴール直後より表彰台で悔しさが込み上げた」と述べつつ、「この色(銅)が今の私の実力なんだ」と冷静に受け止めています。平昌2018の銅、北京2022の金に続く3大会連続メダルです。
女子500m:「素直にうれしい」
500mでは37秒27で3位に入りました。金メダルのフェムケ・コク(オランダ)は36秒49の五輪新記録を樹立しています。北京2022では同種目で銀メダルだった高木選手は「前回より順位は落ちたけど、素直にうれしい」とコメントしました。
本来は補欠の位置づけでしたが「出るつもりの方が大きい」と積極的に出場を決めたことが実を結びました。
女子団体パシュート:「誇らしい」
佐藤綾乃選手(ANA)、野明花菜選手と組んだ団体パシュートでは、3位決定戦で米国に3秒50差の圧勝で銅メダルを獲得しました。平昌2018の金、北京2022の銀に続く3大会連続の表彰台です。
21歳の野明花菜選手が初の五輪で大役を果たし、高木選手はこのメダルについて「凄く誇らしい」と語っています。通算10個目のメダルであり、冬季五輪で10個は日本人初の快挙です。
1500mの「終戦」と涙
世界記録保持者の敗北
最も注目されたのは2月20日の1500mでした。高木選手は世界記録保持者(1分49秒83)として「大本命」と目されていました。平昌、北京と2大会連続で銀メダルを獲得しており、3度目の正直での金メダルが期待されていました。
前半から積極的に飛ばし、1100m地点までは全体2位のタイムで通過しました。しかしラスト1周で32秒26と大きく失速し、メダル圏外の6位に沈みました。金メダルはアントワネット・ライプマ=デ・ヨング(オランダ)で、タイムは1分54秒09でした。
レース後の号泣と「これがスポーツ」
レース直後、高木選手はヨハン・デビット・コーチと抱き合い号泣しました。インタビューでは何度も言葉に詰まりながら「長距離勢が強くなってきている中で、私にできるのは攻めることだと思った」と述べています。
「ミスではなく実力不足。自分の挑戦は、この結果で終わったんだなと感じている」という言葉には、4年間をかけて金メダルに捧げた覚悟の深さがにじみ出ていました。
翌日のオメガ施設でのインタビューでは一転して穏やかな表情を見せ、「これがスポーツ」と語りました。前日の号泣から受容と覚悟に至る心の変化が伝わる言葉です。
独立チーム「team GOLD」の4年間
北京五輪後の決断
北京2022後、高木選手は「やり切った感じだった」としながらも現役続行を決断しました。日本スケート連盟のナショナルチームから離脱し、独立した活動を開始するという大きな決断です。
オランダ人のヨハン・デビット・コーチと二人三脚で始動しました。当初は1人で練習する日々が続いたといいます。
多国籍チームへの成長
2023年5月に「team GOLD(チームゴールド)」を正式に設立しました。北京五輪で共に団体パシュート銀メダルを獲得した佐藤綾乃選手が加入し、女子長距離のエース堀川桃香選手(富士急)も参加しました。
さらに中国の寧忠岩選手が2023-24シーズンから加入するなど、最終的には7〜8人の多国籍チームに成長しました。金銭面やメンバー集めなど多くの苦労がありましたが、高木選手自身がチームの運営も担いました。
チームメイト寧忠岩の金メダル
チームゴールドの一員として共に練習してきた寧忠岩選手は、男子1500mで五輪新記録を樹立し金メダルを獲得しました。アジア人初の同種目金メダルであり、絶対王者ストルツ(米国)を破る大金星でした。
高木選手は寧について「日本人にはないタイプのスケーティングをする。すごく貴重な存在」と語り、練習で真後ろについてカーブへの入り方を参考にしていたといいます。しかし翌日の女子1500mで高木選手は6位に終わり、チームメイトの好結果を自らの成績につなげることはできませんでした。
チーム解散の決断
高木選手は2025年12月の全日本選手権で「チームゴールドを今季限りで解散する」と明言しました。「このチームで、このリンクで滑るのは最後」と述べる一方、「私の進退とは関係ない」と引退は否定しています。
4度目の五輪を終えて
10個のメダルの重み
高木選手の五輪メダルは金2、銀3、銅5の計10個です。2010年バンクーバー五輪に15歳で初出場して以来、16年以上に及ぶキャリアの集大成ともいえる大会でした。
ミラノ五輪での日本の冬季五輪メダル数は過去最多の19個であり、そのうち3個を高木選手が占めました。30歳を超えて体力の衰えと戦いながら「よく頑張ったな、と思う局面は結構あった」と4年間を振り返っています。
「最善の道を選んだ」
高木選手はミラノに至る様々な挑戦について「最善の道を選んだ」と振り返りました。ナショナルチームを離れ、独立チームを立ち上げ、多国籍の仲間と共に金メダルを目指した4年間。結果は銅メダル3個でしたが、その過程で示した挑戦の姿勢こそが、高木美帆というアスリートの真骨頂です。
まとめ
高木美帆選手のミラノ五輪は、銅メダル3個という結果と、1500mでの金メダル逃失という悔しさが交錯する大会となりました。「これがスポーツ」という言葉は、全力を尽くした者だけが口にできる受容の表現です。
チームゴールドの解散後の進退はまだ明らかにされていません。16年にわたるスケート人生の次の一歩に注目が集まっています。
参考資料:
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