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by nicoxz

TOKYO BASEが販売員に売上10%還元する理由

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はじめに

アパレル販売員といえば、華やかなイメージとは裏腹に「低賃金」が長年の課題でした。業界平均の年収は約320万〜384万円と、日本の平均年収459万円を大きく下回ります。そんな中、東証プライム上場のアパレル企業TOKYO BASEが打ち出す「スーパースターセールス制度」が注目を集めています。

この制度は、個人売上の10%を給与として還元するもので、最上位の「5スターセールス」に認定されれば年収2000万円に到達します。新卒入社4年目で推定年収1000万円の販売員も誕生しており、アパレル業界の常識を覆す取り組みです。本記事では、この制度の仕組みと背景、そして業界全体への影響を詳しく解説します。

スーパースターセールス制度の全貌

5段階の評価体系

スーパースターセールス制度は、2017年に導入された販売員向けの成果報酬制度です。一定基準以上の個人売上の10%を給与として還元する仕組みで、以下の5段階で構成されています。

ランク年間個人売上基準想定年収
1スター8,000万円800万円
2スター1億円1,000万円
3スター1億2,000万円1,200万円
4スター1億5,000万円1,500万円
5スター2億円2,000万円

認定は半期ごと(2月〜7月、8月〜1月)に行われます。基準をクリアすれば次の半期からスーパースターセールスとして認定され、月給が引き上げられます。つまり、実力が直接的に報酬へ反映される透明性の高い仕組みです。

認定実績と広がり

2023年のシーズンには過去最多となる34名のスターセールスが誕生しました。内訳は5スターが2名、3スターが1名、2スターが7名、1スターが24名です。TOKYO BASEの営業スタッフ約260名のうち、約15%がスーパースターセールスの認定を受けている計算になります。

特筆すべきは、年齢や社歴に関係なく成果で評価される点です。「STUDIOUS WOMENS」ルミネ新宿店に配属されていた20代の販売員は、新卒入社4年目にして推定年収1000万円を達成しています。年功序列が根強い日本の雇用慣行の中で、実力主義を徹底した制度といえます。

TOKYO BASEの人材戦略と業界への挑戦

初任給40万円の衝撃

TOKYO BASEの人材戦略は、スーパースターセールス制度だけにとどまりません。2024年3月には、新卒採用の初任給を業界最高水準の月額40万円に引き上げました。これはファーストリテイリング(ユニクロ)をも上回る水準です。

月額40万円の内訳は、基本給20万3,000円、固定残業代17万2,000円(月80時間分)、通勤手当2万円となっています。固定残業80時間という数字はSNS上で議論を呼びましたが、谷正人CEOは「実際の残業時間は大幅に下回っている」と説明しています。

さらに、個人実績連動型インセンティブとして、ブランドごとの個人売上ランキング1位には月10万円が支給されます。店舗の予算達成率に応じた連動型インセンティブもあり、達成率120%の場合は店長で月9万円が上乗せされます。

充実した福利厚生

TOKYO BASEは金銭的報酬に加え、アパレル販売員ならではの福利厚生も整備しています。美容手当(月最大1万5,000円)、海外視察手当(1回5万〜10万円)、住宅手当(月3万円、ファッション地区限定)、育児手当(子ども1人あたり月2万円)といった制度が用意されています。

販売員は店頭に立つ際、ブランドのアイテムを着用し、トレンドを意識したヘアスタイルやメイクを求められます。美容手当や海外視察手当は、こうした職業特有の出費をサポートする仕組みです。

谷正人CEOのビジョン

一連の制度の背景にあるのは、谷正人CEOの「アパレル業界の社会的地位向上」という明確なビジョンです。谷CEOは「日本一のファッション企業」を目標に掲げ、そのためには「日本一の給与体系」が必要だと考えています。

実際、アパレル業界は慢性的な人材不足に悩まされています。低賃金と不規則な勤務体系が敬遠され、優秀な人材が他業界に流出するケースが後を絶ちません。TOKYO BASEの取り組みは、この悪循環を断ち切るための戦略的な投資といえます。

業界比較と他社の動向

セレクトショップ他社との違い

アパレル業界の中でも、TOKYO BASEの報酬制度は突出しています。セレクトショップ御三家と呼ばれるユナイテッドアローズ、ビームス、シップスでは、個人売上に直接連動するインセンティブ制度は一般的ではありません。

たとえばユナイテッドアローズは、「セールスマスター」という認証制度で販売員を評価していますが、給与は売上連動型ではなくグレード制度に基づいています。約3,000人の販売員から厳選された数名が認証される仕組みで、名誉的な側面が強い制度です。販売コンテスト「束矢グランプリ」の開催など、販売技術の向上には力を入れていますが、報酬面での直接的な還元という点ではTOKYO BASEとは異なるアプローチです。

TOKYO BASEの業績が裏付ける制度の効果

報酬制度の充実は、企業業績にも好影響を与えています。TOKYO BASEの2025年1月期(2024年2月〜2025年1月)の売上高は202億円と過去最高を記録しました。営業利益は14.7億円で前期比67.1%増と大幅な伸びを示しています。

この好業績を支えているのが、インバウンド需要の取り込みです。インバウンド売上は前年比72.5%増加し、国内実店舗売上に占めるインバウンド比率は25%に達しました。高い接客力を持つ販売員の存在が、訪日外国人客の満足度向上に貢献していると考えられます。

現在、TOKYO BASEはSTUDIOUS(36店舗)、UNITED TOKYO(18店舗)、PUBLIC TOKYO(12店舗)、THE TOKYO(7店舗)、CITY TOKYO(6店舗)、CONZ(4店舗)を含む国内外83店舗を展開しています。

注意点・展望

スーパースターセールス制度には注意すべき点もあります。年間個人売上8,000万円という1スターの基準は、決して容易に達成できる数字ではありません。営業スタッフ260名中、認定者は約15%にとどまります。残りの85%の販売員にとっては、制度の恩恵を直接受けることは難しい現実があります。

また、固定残業80時間を含む初任給40万円という給与体系には、長時間労働のリスクが指摘されています。制度の持続可能性を確保するためには、労働時間の管理と販売員の健康面への配慮が不可欠です。

今後の展望としては、インバウンド需要のさらなる拡大が追い風となる可能性があります。高い接客スキルを持つ販売員への投資は、訪日外国人客の増加局面において競争優位性を生み出します。また、TOKYO BASEの成功事例が業界全体に波及し、アパレル販売員の待遇改善が進むことも期待されます。

まとめ

TOKYO BASEの「スーパースターセールス制度」は、アパレル業界の低賃金問題に正面から切り込む画期的な取り組みです。売上の10%を直接還元するシンプルかつ透明性の高い仕組みにより、年収2000万円の販売員を生み出すことに成功しています。

初任給40万円への引き上げや充実した福利厚生と合わせ、アパレル業界の人材確保と社会的地位向上に向けた包括的な戦略となっています。制度の恩恵を受けられる販売員は一部に限られるものの、「努力と成果が報われる」というメッセージは、業界全体の意識改革を促す力を持っています。アパレル業界でのキャリアを検討している方は、こうした成果報酬型の制度を導入している企業に注目してみてはいかがでしょうか。

参考資料:

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