トランプ大統領がFRB議長人事を来週発表、利下げ圧力の行方
はじめに
トランプ米大統領は2026年1月29日の閣議で、米連邦準備理事会(FRB)の次期議長を「来週に公表する」と明言しました。同時に、米国の政策金利は他のどの国よりも低くあるべきだとの持論を展開し、2〜3%の追加利下げを要求しています。
前日の1月28日にはFOMC(連邦公開市場委員会)が4会合ぶりの金利据え置きを決定したばかりであり、トランプ大統領はパウエル議長を「政治的な偏見を持っている」と批判しました。FRBの独立性が揺らぐリスクに、金融市場は神経をとがらせています。
FOMCが4会合ぶりに金利据え置き
賛成10、反対2の分裂決定
FOMCは1月27〜28日の定例会合で、FF金利の誘導目標レンジを3.50〜3.75%に据え置くことを決定しました。2025年7月以来、4会合ぶりの据え置きです。ウォラーFRB理事とミランFRB理事の2名が0.25ポイントの利下げを主張し、反対票を投じました。
パウエル議長は記者会見で「経済活動の見通しは明確に改善している」と述べ、利下げを急ぐ必要はないとの姿勢を示しました。インフレがやや高止まりする中、雇用市場の堅調さも踏まえた慎重な判断です。
市場は利下げ再開の後退を織り込む
パウエル議長が経済の現状判断を引き上げたことで、市場では年内の利下げ再開が遠のくとの見方が広がりました。三井住友DSアセットマネジメントは、2026年中の利下げは見送られ、2027年1〜3月期からの利下げ再開を想定しています。
一方、トランプ大統領が次期議長にハト派の人物を指名すれば、FOMCの構成が変わり、利下げのペースが加速する可能性もあります。
トランプ大統領の利下げ圧力
「他のどの国よりも低い金利を」
トランプ大統領は就任以来、一貫してFRBに大幅な利下げを求めてきました。2025年12月にはSNSで「市場が好調なら、新しいFRB議長には利下げしてほしい」と投稿し、「私に反対する者は決してFRB議長にはならない」と公言しています。
今回の閣議でも2〜3%の追加利下げを要求しましたが、現在のFF金利が3.50〜3.75%であることを考えると、仮に2%の利下げが実施されれば政策金利は1%台半ばまで低下し、事実上のゼロ金利に近づくことになります。インフレ率が依然として目標を上回る状況でこれほどの利下げを行えば、物価上昇を加速させるリスクがあります。
パウエル議長への圧力が激化
トランプ政権によるパウエル議長への圧力は、金融政策の範囲を超えて激化しています。FRB本部の改修工事に関するパウエル議長の議会証言を巡り、司法当局が刑事捜査に着手したとの報道があります。さらに、リサ・クック理事の解任を求める動きも出ています。
パウエル議長は「脅しと圧力だ」と反発し、「我々は独立性を失っていないし、失うとは思わない」と述べ、政権との対決姿勢を鮮明にしています。
次期FRB議長の有力候補
ハセットNEC委員長が最有力
次期FRB議長の有力候補として、ケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長の名前が最も多く挙がっています。ハセット氏はトランプ大統領に近い人物であり、指名されれば利下げに積極的な姿勢をとることが予想されます。
金融市場では、ハセット氏が議長に就任した場合、通貨価値や物価安定に対する懸念からドル安・債券安が進むとの見方があります。
ウォルシュ元FRB理事も有力
もう一人の有力候補がケビン・ウォルシュ元FRB理事です。ウォルシュ氏はより市場に配慮した姿勢をとるとみられており、指名された場合はドル高・債券高の反応になりやすいと予想されています。
どちらの候補が指名されるかによって、金融市場の反応は大きく異なる可能性があります。トランプ大統領が「来週に公表する」と述べたことで、2月第1週の市場は次期議長人事に大きく左右される展開が予想されます。
パウエル議長の任期と移行期
パウエル議長の任期は2026年5月までです。通常、新議長の指名から上院での承認手続きを経て就任するまでには一定の期間がかかります。トランプ大統領が早期に指名を行う背景には、パウエル議長をレームダック化させ、金融政策への影響力を早期に確保する狙いがあるとみられています。
注意点・展望
中央銀行の独立性が最大の焦点
FRBの独立性は、米国経済の安定と世界の金融市場の信頼の基盤です。大統領が金融政策に直接介入することへの懸念は、米国内だけでなく国際的にも広がっています。
次期議長が誰であっても、政権からの圧力と市場からの信認という二つの力の間でバランスをとる必要があります。FRBの中立性が大きく毀損されれば、長期金利の上昇やドルの信認低下といった深刻な影響が生じる可能性があります。
日本経済への影響
FRBの金融政策の方向性は、日米金利差を通じて円相場に直接影響します。FRBが大幅な利下げに踏み切れば日米金利差が縮小し、円高方向に作用する可能性があります。日本銀行の金融政策運営にも影響を及ぼすため、日本の投資家や企業にとっても注視すべき動向です。
まとめ
トランプ大統領がFRB次期議長を来週公表すると宣言したことで、米国の金融政策の行方に対する不確実性が一段と高まっています。2〜3%の追加利下げ要求と中央銀行の独立性を巡る攻防は、世界経済の安定に直結する重大な問題です。
パウエル議長の任期が5月に迫る中、次期議長の指名は2026年の金融市場を方向づける最重要イベントとなります。投資家はもちろん、一般の消費者にとっても、為替や金利の動向を通じて生活に影響が及ぶ可能性があり、今後の展開から目が離せません。
参考資料:
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