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by nicoxz

米企業「関税停止でも値下げせず」、中小企業コスト3倍増の深刻実態

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はじめに

2026年2月20日、米連邦最高裁判所はトランプ大統領がIEEPA(国際緊急経済権限法)に基づいて発動した関税を違憲と判断する歴史的な判決を下しました。これを受けて2月24日にIEEPA関税が停止され、代替措置として通商法122条に基づく新たな関税が10%(その後15%に引き上げ)で発動されました。

ブラジルや中国など一部の国では関税率が下がった形ですが、米国の中小企業は既に1年間で関税コストが3倍に膨張しており、当面の値下げは見込めない状況です。最高裁判決がもたらした変化と、企業が直面するコスト問題を解説します。

最高裁判決——IEEPA関税は「大統領の権限を超える」

6対3で違憲判断

最高裁は6対3の判決で、IEEPAは大統領に関税を課す権限を与えていないと判断しました。ロバーツ首席裁判官が執筆した多数意見は、1977年のIEEPAが大統領に「規制」の権限を与えているものの、それは「課税」の権限を含まないと明確にしています。

さらに、IEEPAの「規制する」という文言を関税権限を含むと解釈すれば、輸出に対する課税を禁じた合衆国憲法に抵触し「部分的に違憲」になると指摘しました。この判決は、トランプ政権の通商政策の根幹を揺るがす画期的なものです。

代替措置としてのセクション122関税

最高裁判決を受けて、トランプ大統領は2月20日に通商法セクション122に基づく「暫定輸入追加関税」を発動する大統領令に署名しました。当初は全ての国に対して10%の関税率でしたが、翌21日にはSNSで即座に15%への引き上げを宣言しています。

セクション122は「大幅かつ深刻な国際収支赤字」に対処するための権限で、最大税率は15%、適用期間は150日間(2026年7月24日まで)に限定されています。IEEPA関税と比べると税率は大幅に低下しましたが、議会が延長や修正を行わない限り、7月に失効する時限的な措置です。

関税が下がっても値下げは起きない理由

価格の「下方硬直性」

経済学では「価格の下方硬直性」として知られる現象があります。コストが上昇すれば価格は速やかに引き上げられますが、コストが下がっても価格は元の水準にはなかなか戻りません。関税問題でもこのメカニズムが作用しています。

RSMの分析によると、関税が撤廃されても価格が元に戻ることを期待すべきではないと指摘しています。企業は既に調達先の変更やサプライチェーンの再構築に多額の投資を行っており、これらのコストは関税の有無にかかわらず継続します。

中小企業の深刻なコスト負担

米国商工会議所の調査によると、中小企業の70%が関税によるコスト増加を報告し、60%が値上げに踏み切っています。現行の関税体制のもとでは、典型的な中小企業が2026年に支払う関税額は年間50万ドル以上に達するとの試算もあります。

特に打撃が大きいのは、輸入原材料に依存する製造業や小売業です。関税の返金制度は存在するものの、手続きが複雑で実際に返金を受けられる見通しが立たない企業も多いのが現状です。

関税率の変化——国別の影響

中国・カナダ・メキシコへの関税

IEEPA関税の下では、中国、カナダ、メキシコに対して「フェンタニル関税」として高率の関税が課されていました。最高裁判決によりこれらが停止され、セクション122の15%に一本化されたことで、これら3カ国の関税率は実質的に引き下げられた形です。

ただし、中国に対しては他の法的根拠(通商法301条)に基づく関税が別途存在しており、完全に関税が撤廃されたわけではありません。

「輸入増」の可能性も

関税率が下がった国からの輸入が増加する可能性が指摘されています。特にブラジルやインドなど、IEEPA関税下で高率の関税が課されていた新興国からの輸入品は、15%の関税であれば競争力を取り戻す可能性があります。

注意点・展望

7月24日の期限問題

セクション122関税は150日間の時限措置です。7月24日の期限までに、トランプ政権は議会に恒久的な関税法案の承認を求める必要があります。共和党が多数を占める議会がどこまで大統領の通商政策を支持するかが焦点です。

家計への影響

関税は1993年以来最大の実質的な増税に相当するとの分析があり、2026年の米国世帯あたり平均1500ドルの負担増になるとの試算もあります。消費者物価への影響が長期化すれば、FRBの金融政策にも影響を与える可能性があります。

企業の人員削減リスク

CNBCの報道では、関税の影響が遅れて顕在化し始めており、2026年には企業が人員削減に踏み切るリスクが高まっているとされています。中小企業にとっては、コスト吸収の限界が近づいています。

まとめ

最高裁によるIEEPA関税の違憲判断は、トランプ政権の通商政策に大きな制約を課しました。しかし、代替措置としてのセクション122関税(15%)が即座に発動され、企業にとっての不確実性は解消されていません。

関税率が一部で下がったにもかかわらず、企業が値下げに踏み切らないのは、既に蓄積されたコスト負担と将来の関税政策の不透明さが原因です。7月の期限に向けた政治的駆け引きが続く中、企業と消費者の負担はしばらく続く見通しです。

参考資料:

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