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by nicoxz

米国観光に「トランプ・スランプ」到来、旅行客が5年ぶり減少

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はじめに

2025年、世界の国際観光客数が前年比4%増加するなか、米国だけが逆行する異例の事態が起きました。米国への外国人旅行者数は前年同期比5.4%減の約6,237万人にとどまり、5年ぶりの減少を記録しています。この現象は「トランプ・スランプ(Trump Slump)」と呼ばれ、トランプ政権が推進する不法移民の取り締まり強化、入国規制の拡大、そして各国への関税措置が主な要因として指摘されています。世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)が追跡する184カ国の中で、2025年に観光収入の減少が見込まれるのは米国だけという衝撃的なデータも明らかになりました。

米国観光の急減速 ── 数字が示す深刻な実態

全体の旅行者数と収入の落ち込み

米国の観光統計を管轄する国家旅行観光局(NTTO)のデータによると、2025年1月から11月までの外国人旅客数は前年同期比5.4%減少しました。調査会社ツーリズム・エコノミクスは当初、外国人訪問者数を約6,600万人と見込んでいましたが、実際には大幅に下回る結果となっています。

経済的な打撃も顕著です。外国人観光客による米国内での支出は前年比約7%減少し、1,690億ドル(約25兆円)を下回る見通しです。WTTCの推計では、2025年の観光収入の損失額は125億ドル(約1.9兆円)に達するとされています。さらに、関税の影響を含めた広範な試算では、米国の観光関連ビジネスが最大640億ドル(約9.6兆円)の収入減に直面する可能性があるとする研究もあります。

地域別に見る減少の内訳

減少幅がとりわけ大きいのがカナダからの旅行者です。米国にとって最大の外国人観光客送出国であるカナダからの訪問者は、約30%もの急減を記録しました。陸路での国境通過に限ると、カナダからの自動車は2024年の2,460万台から2025年には1,700万台へと、約760万台も減少しています。道路による旅行は27%減、航空便は18%減、徒歩での国境通過は15.4%減と、あらゆる移動手段で大幅な落ち込みが確認されました。

西欧からの旅行者も減少しています。全体で5.5%の減少となり、なかでもドイツは11.6%減、フランスは6.9%減、デンマークは19%減と、主要国で軒並み落ち込みました。欧州の大手航空会社であるエールフランス、ブリティッシュ・エアウェイズ、ルフトハンザは、アトランタ、ラスベガス、マイアミ、ニューヨーク行きの便を相次いで減便しています。

アフリカからの旅行者は15.6%減、オセアニア地域は14.4%減と、さらに深刻な落ち込みを見せています。一方で、日本からの旅行者は7.8%増加するという例外的な動きも見られましたが、これは円安による影響が大きいと分析されています。

トランプ政権の政策が「米国離れ」を加速させた背景

移民政策と入国規制の強化

トランプ政権は就任直後から、第1期で打ち出した強硬路線をさらに加速させました。主にアフリカや中東諸国を対象とした渡航禁止令を復活させ、ビザ承認の基準を厳格化しています。2025年6月には19カ国からの入国を制限し、同年12月にはその対象を39カ国に拡大しました。

さらに、新たに導入された250ドル(約3.7万円)の「ビザ完全性手数料」や、一部の訪問者に対するSNSアカウントの審査計画も、米国への旅行を敬遠させる要因となっています。国立公園の入場料も外国人旅行者向けに引き上げられており、「歓迎されていない」という印象を強めているとの指摘があります。

不法移民の大規模な摘発も、旅行者心理に影を落としています。入国管理の厳格化は、観光目的の正規の旅行者にとっても心理的な障壁となり、「面倒なうえに不快な経験になるのではないか」という懸念が広がっています。

関税措置と「カナダ併合」発言の影響

トランプ大統領が各国に課した関税措置は、貿易面だけでなく観光面にも波及しました。特にカナダに対しては、関税の発動に加えてトランプ大統領自身が「カナダを51番目の州にする」と繰り返し発言したことが、カナダ国民の強い反発を招きました。

2025年2月のアンガス・リード社の世論調査では、カナダ人の48%が「米国への旅行を取り消した、または取り消す可能性が高い」と回答しています。この動きは単なる旅行控えにとどまらず、米国製品の不買運動にまで発展し、「2025年カナダによる米国ボイコット」としてWikipediaに独立した項目が作られるほどの社会現象となりました。

米国の国境沿いの州は特に大きな打撃を受けています。ニューハンプシャー州ではカナダ人観光客が30%減少し、州営キャンプ場の予約は最初の5カ月で71%も落ち込みました。メイン州でもカナダからの乗用車による国境通過が約25%減少しています。米国旅行協会の推計では、カナダ人旅行者の減少だけで45億ドル(約6,750億円)の損失が生じたとされています。

米国のホテル・航空業界への波及

観光客の減少は、米国の旅行関連産業に直接的な影響を及ぼしています。2025年3月の米国ホテル稼働率は前年比2.3ポイント低下し、客室あたり収益(RevPAR)は4%以上の減少を記録しました。関税発動翌日にはホテル関連株が平均6%下落するなど、市場も敏感に反応しています。

航空業界では、アメリカン航空が消費者行動の不確実性と関税によるコスト増を理由に、2025年の利益見通しを撤回する事態に至りました。フォーチュン誌の試算では、国際観光客が10%減少した場合、米国のGDPに230億ドル(約3.5兆円)、雇用に約23万人分の損失が生じる可能性があります。

今後の注意点と展望 ── 2026年W杯への影響は

2026年は米国、カナダ、メキシコの3カ国共催でFIFAワールドカップが開催される予定です。本来であれば観光業にとって大きな追い風となるはずですが、「トランプ・スランプ」の継続が暗い影を落としています。

特に懸念されているのが、渡航禁止令の対象国にワールドカップ出場国が含まれている点です。ハイチ、イラン、セネガル、コートジボワールなどの出場国が入国制限の対象となっており、サポーターが試合を観戦できない可能性があります。高額なチケット価格と相まって、海外からのファンが期待ほど訪れないのではないかという懸念が業界内で広がっています。

一方で、米国から離れた旅行者の受け皿となっているのがフランスやスペイン、そして日本です。2025年、フランスは約1億500万人、スペインは9,600万人超の国際観光客を迎え、米国の約6,800万人を大きく上回りました。旅行先としての米国の相対的な魅力が低下するなか、この流れが定着する可能性も指摘されています。

まとめ

2025年の米国観光業は、トランプ政権の移民政策強化、入国規制拡大、関税措置、そして外交的な摩擦が複合的に作用し、世界で唯一の観光収入減少国という不名誉な結果に終わりました。特にカナダからの旅行者が約3割減少したインパクトは大きく、国境沿いの州を中心に深刻な経済的打撃を与えています。2026年のワールドカップを控え、米国の観光業界は政策変更を求める声を強めていますが、現時点で大きな方針転換は見られません。観光業界の回復には、政策面での歩み寄りに加え、「歓迎する国」としてのイメージ再構築が不可欠といえるでしょう。

参考資料

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