米軍ベネズエラ攻撃の全貌——トランプ流「力による解決」の衝撃

by nicoxz

はじめに

2026年1月3日、トランプ米大統領は「ベネズエラへの大規模攻撃を成功裏に実施した」と発表し、マドゥロ大統領と夫人を拘束・米国に移送したことを明らかにしました。

この軍事作戦は、1989年のパナマ侵攻・ノリエガ将軍拘束以来36年ぶりの「外国指導者排除作戦」として、国際社会に衝撃を与えています。麻薬テロとの戦い、石油資源の確保、傀儡政権の樹立——複数の目的が交錯するこの軍事介入は、国際法違反の懸念とともに、「力の支配」が世界に拡散するリスクを高めています。

軍事作戦の全容

30分足らずの電撃作戦

作戦名「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ(絶対的決意作戦)」は、米東部時間1月2日午後10時46分にトランプ大統領の指示で開始されました。

現地時間午前2時頃、首都カラカスで複数の爆発音が響き渡りました。米軍のヘリコプターは午前2時1分にマドゥロ大統領の邸宅に着陸。陸軍特殊部隊デルタフォースとFBIの特殊部隊が「大規模な合同軍事・法執行作戦」を展開し、30分足らずで任務を完了しました。

午前3時29分には撤退が完了。米軍側に死者は出ませんでしたが、数名の兵士が銃弾や爆発物の破片で負傷したと報じられています。

民間人を含む犠牲者

一方、ベネズエラ側の被害は深刻でした。パドリノ国防相は、米軍のヘリコプターが市街地でロケット弾やミサイルを発射したと発表。ニューヨーク・タイムズは、ベネズエラ高官の証言として民間人と軍人を含む40〜80人が死亡したと報じています。

トランプ政権の狙い

三つの目標の融合

ニューヨーク・タイムズの分析によれば、今回の軍事作戦には「三つの別々の政策目標が融合した」とされています。

  1. マドゥロ政権の弱体化: 反米左派政権の排除
  2. 麻薬カルテルへの攻撃: 麻薬テロリズムとの戦い
  3. 米企業の石油権益確保: 世界最大の確認埋蔵量を持つベネズエラ石油への参入

トランプ大統領は記者会見で「安全で、適切で、慎重な移行が可能になる時点まで、われわれがこの国を運営する」と述べ、地上部隊の投入も排除しませんでした。

数カ月にわたる準備

米政府は数カ月にわたりベネズエラへの軍事的威嚇を強めていました。2025年9月以降、ベネズエラ近海で「麻薬密輸船」とみなした船舶への攻撃を繰り返し、100人以上を殺害してきたとされています。

マドゥロ氏を拘束し米国で訴追する計画は、麻薬取引への関与と石油資源確保という二つの目的を同時に達成するものでした。

パナマ侵攻との比較

36年前の類似事例

同じ1月3日、36年の時を隔てて、米軍は極めて類似した作戦を実行しました。1989年末から1990年初頭にかけて、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領はパナマに侵攻し、麻薬取引に関与したノリエガ将軍を拘束。米国に移送して裁判にかけました。

トランプ政権はこのパナマ侵攻を参考にしたとされ、「腐敗した麻薬独裁者への外科的作戦、米国への司法引き渡し」というフレーミングはほぼ同一です。

決定的な違い

しかし、専門家は両者の決定的な違いを指摘しています。

規模の違い: ベネズエラの人口はパナマの7倍、国土面積は12倍です。山岳地帯、ジャングル、海岸線を持つ広大な国土を「占領」することはパナマとは比較にならないほど困難です。

軍事プレゼンスの違い: 1989年当時、米国はパナマに1万人以上の駐留軍を持ち、南方軍司令部もパナマ国内にありました。一方、ベネズエラには米軍のプレゼンスがなく、カリブ海を越えて戦力を投射する必要がありました。

後継政権の有無: パナマにはギジェルモ・エンダラという明確な後継者がおり、ノリエガ独裁からの脱却を望む国民の支持もありました。ベネズエラには普遍的に承認された後継者が存在せず、政治的混乱が長期化するリスクがあります。

傀儡政権樹立への懸念

ロドリゲス暫定大統領

マドゥロ拘束を受け、ベネズエラ最高裁は副大統領のデルシー・ロドリゲス氏を暫定大統領に指名しました。軍もロドリゲス氏への支持を表明し、1月5日に就任宣誓が行われました。

ロドリゲス氏は当初「マドゥロ大統領こそ唯一の大統領だ」と米国に反発しましたが、その後「米国と協力する」と姿勢を転換。トランプ大統領が「従わなければ再攻撃する」と警告したことが影響したとみられています。

混乱長期化のリスク

2019年に米政府関係者が行ったシミュレーションでは、マドゥロ後のベネズエラについて「民主的システムへの管理された移行がなければ、長期間にわたる絶対的混乱が生じる」との結論が出ていました。

権力の空白は、コロンビアのゲリラを含む武装勢力が急速に埋めようとし、さらなる暴力を招く恐れがあります。

国際法違反の懸念

三つの法秩序を破壊

今回の軍事介入は、複数の国際法上の問題を提起しています。

  1. 主権尊重の原則: 国連憲章は国家の主権と領土保全を尊重することを求めています
  2. 武力行使の禁止: 国連安保理の授権なしに他国を武力攻撃することは原則禁止されています
  3. 外交特権: 現職の国家元首を軍事力で拘束することの正当性

ベネズエラ政府は「国連憲章への明白な違反」と非難。コロンビアのペトロ大統領は国連安保理会合の開催を要求しました。

「力の支配」拡散への懸念

この軍事介入の最も深刻な影響は、国際秩序全体への波及効果です。米国が「国益の確保のために他国への武力行使も辞さない」姿勢を示したことで、ロシアや中国による一方的な現状変更の動きを正当化する口実を与えかねません。

英シンクタンクのチャタムハウスは「米国によるマドゥロ拘束とベネズエラへの攻撃は、国際法上いかなる正当化もない」との分析を発表しています。

日本政府の苦悩

「法の支配」との整合性

日本政府は対応に苦慮しています。高市早苗首相は情勢安定化への取り組みを示したものの、米軍の行動について論評を避けました。

日本はロシアや中国に対して「法の支配」の重要性を訴えてきただけに、同盟国である米国の軍事行動を容認すれば、これまでの主張との整合性を問われかねない立場にあります。

注意点と今後の展望

長期化する混乱

ベネズエラの政治的安定化には相当の時間がかかると予想されます。ロドリゲス暫定政権が米国との協力を表明する一方で、マドゥロ支持派との関係維持も図る必要があり、二面的な対応を強いられています。

石油をめぐる攻防

世界最大の確認埋蔵量を持つベネズエラの石油資源をめぐり、米国、中国、ロシアなどの利害が衝突する構図は続きます。トランプ政権が「米国企業の石油権益確保」を明言している以上、エネルギー政策と地政学が複雑に絡み合う展開となるでしょう。

まとめ

トランプ政権によるベネズエラへの軍事攻撃とマドゥロ大統領拘束は、1989年のパナマ侵攻以来の「政権転覆作戦」として歴史に刻まれます。

麻薬テロとの戦い、石油資源の確保、傀儡政権の樹立——複数の目的が交錯するこの軍事介入は、国際法違反の懸念とともに、「力の支配」が世界に拡散するリスクを高めています。パナマとは異なる規模と複雑さを持つベネズエラで、米国がどのような「出口戦略」を描くのか。国際社会の懸念は深まるばかりです。

参考資料:

関連記事

最新ニュース