円買い介入、市場が見る防衛ラインは160円 効果は1カ月か
はじめに
円安の進行が止まりません。2026年1月に入り、ドル円相場は159円台に突入し、1年半ぶりの円安水準を記録しました。政府の「防衛ライン」とされる1ドル160円が目前に迫る中、市場関係者の関心は、いつ為替介入が実施されるかに集まっています。
金融機関の専門家への調査では、介入が想定されるラインとして160円を挙げる声が最も多い結果となりました。ただし、介入による円高効果は1カ月程度との見方もあり、当局と市場の攻防は当面続きそうです。本記事では、為替介入の仕組みと効果、そして2026年の円相場見通しを解説します。
160円が政府の「防衛ライン」
円安けん制のトーン強まる
政府・日銀による円安けん制の発言が相次いでいます。片山財務大臣は1月13日、ベッセント米財務長官との会談後、「最近の行き過ぎた、ファンダメンタルズを反映していない動きについては行き過ぎだという認識を共有した」と発言しました。為替介入の可能性にも言及しており、市場へのメッセージ色を強めています。
専門家の多くは、政府が1ドル160〜165円のラインを「防衛ライン」として意識していると分析しています。このラインを超える円安進行には、為替介入と追加利上げで対応するとみられています。
専門家調査の結果
金融機関に所属する外国為替ストラテジストなど15人への調査では、政府・日銀が円買い介入に踏み切る水準として「160円」との回答が最多となりました。
ドル円の120日移動平均線は1月14日時点で152円程度。160円を超えると移動平均線を5%以上上回ることになり、「短期的に急過ぎる円安」として介入を検討する可能性が高まるとされています。
過去の為替介入実績
2024年の大規模介入
2024年には累計15兆円超という過去最大規模の円買い・ドル売り介入が実施されました。
主な介入のタイミング:
- 4月29日:160円台まで円安が進行後、154円台まで急反発
- 5月2日:早朝に157円台から4円ほど円高方向へ
- 7月11日・12日:投機的な円売りに対応
これらの介入は「覆面介入」の形式で行われ、政府は実施の有無を明らかにしませんでした。市場参加者を「疑心暗鬼」に陥らせることで、投機筋の円売りを抑制する効果を狙ったとされています。
介入の効果と限界
為替介入の効果については、「時間稼ぎでしかない」という見方が大勢です。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストをはじめ、多くの専門家が指摘するように、為替のトレンドを決定づけるのはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)であり、介入だけでトレンドを転換させることは困難です。
ただし、2024年の介入後には投機筋の円売りポジションが縮小し、円安の進行ペースが鈍化したのも事実です。「巧みな介入運営によって一定程度円安の進行を抑制し、ドル安圧力が高まるまでの時間を稼いだ」という評価は可能です。
実際、ドル円相場は7月上旬の161円台をピークに反転し、9月には139円台まで約20円の円高が進みました。
2026年の円相場見通し
年前半は円安圧力継続
主要金融機関の見通しでは、2026年前半は円安圧力が続くとの予想が多くなっています。
野村證券は、年前半は日米金利差を背景にドル高・円安方向に振れやすい状況が続くと分析。高市政権の「責任ある積極財政」姿勢が財政懸念を生み、円安要因となっているとの見方もあります。
年末のドル円予想:
| 金融機関 | 予想値 |
|---|---|
| 三井住友DSアセットマネジメント | 150円 |
| 野村證券 | 140円台前半 |
| マネックス証券 | 130〜165円(レンジ) |
円高シナリオも浮上
一方で、2026年は円高に転じるとの見方も出ています。ブルームバーグによると、金融市場では日銀が6月までに利上げを行う確率を73%と織り込んでいます。
野村證券の尾畑秀一氏は「今後も日米金利差の縮小を予想していることから、2026年末のドル円レートを140円と円高を予想」と述べています。ただし、日本の財政悪化懸念に市場の関心が向かう場合は、金利差が縮小しても円高には戻りにくい可能性も指摘しています。
また、トランプ大統領が5月に任期が切れるパウエルFRB議長の後任に利下げに前向きな人物を選ぶことが確実視されており、米国の利下げ加速がドル安・円高要因となる可能性もあります。
注意点・今後の展望
介入は「時間を買う政策」
為替介入の本質は「時間を買う政策」です。野村総合研究所の木内登英氏は、介入で一時的に円安の流れを抑えている間に、高市政権が積極財政姿勢を後退させれば、持続的に円安の流れを変えることは可能と分析しています。
逆に言えば、財政政策の転換がなければ、介入効果は限定的となります。市場は政府の財政スタンスと日銀の金融政策の両方を注視しています。
米欧対立というリスク要因
グリーンランドを巡る米欧対立も円相場に影響を与えています。トランプ大統領による欧州への関税発動表明は、地政学リスクの高まりとして市場のリスク回避姿勢を強めました。
このような不透明感の中では、為替相場は大きく振れやすくなります。マネックス証券の吉田恒氏が指摘するように、2026年のドル円は130〜165円という広いレンジでの変動を想定しておく必要があるかもしれません。
まとめ
円買い介入の「防衛ライン」は160円との見方が市場で優勢です。ただし、介入による円高効果は1カ月程度にとどまる可能性があり、根本的な円安是正には財政政策の転換や日銀の追加利上げが必要となります。
2026年の円相場は、前半の円安圧力と後半の円高転換というシナリオが有力ですが、米国の政策動向や地政学リスクによっては波乱含みの展開も予想されます。政府・日銀と市場の攻防は当面続きそうです。
参考資料:
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