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by nicoxz

イオンがクスリのアオキと提携解消、ガバナンス問題の深層

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はじめに

2026年1月15日、イオンは同社の岡田元也会長がドラッグストア大手クスリのアオキホールディングス(HD)の社外取締役を辞任したと発表しました。2003年から続いてきた両社の資本業務提携も解消され、小売業界に大きな波紋を広げています。

この決断の背景には、クスリのアオキの創業家による企業統治(ガバナンス)への姿勢に対するイオン側の不信感があります。さらに、香港の「物言う株主」オアシス・マネジメントの存在が、両社の関係を複雑にしてきました。

本記事では、この提携解消に至った経緯と背景、そして今後のドラッグストア業界への影響について詳しく解説します。

20年以上続いた提携関係の終焉

提携の始まりと発展

イオンとクスリのアオキの関係は2003年1月に始まりました。商品の共同開発を目的とした業務提携・資本提携を締結し、イオンのプライベートブランド「トップバリュ」商品をクスリのアオキに供給するなど、両社は協力関係を築いてきました。

クスリのアオキは1985年に石川県で設立されたドラッグストアチェーンです。2006年に東京証券取引所第二部に上場、2011年には第一部(現プライム市場)に上場を果たしました。北陸地方を中心に全国展開を進め、食品スーパーとの複合業態など独自の戦略で成長を続けてきた企業です。

提携解消の直接的な契機

今回の提携解消の直接的な契機となったのは、クスリのアオキ側からの岡田会長への退任要求でした。2026年1月8日、クスリのアオキが社外取締役を務めるイオンの岡田元也会長に退任を求めていることが明らかになりました。

これを受けてイオンは1月9日、業務提携の解消を発表。「提携を継続することはリスクで、経営理念と反する」「アオキHDのガバナンスへの姿勢が当社とは相いれない」とコメントしました。岡田会長は1月15日付で正式に辞任届を提出しています。

ガバナンス問題の核心

ストックオプションによる創業家の支配強化

イオンがガバナンス問題として特に問題視したのが、クスリのアオキの創業家によるストックオプション(株式購入権)の行使です。

2024年8月21日、青木宏憲社長と青木孝憲副社長は、2020年に発行されたストックオプションを行使しました。この結果、宏憲社長の保有比率は7.92%から12.12%に、孝憲副社長は5.68%から10.11%に上昇。それぞれ第1位、第2位の株主となりました。

このストックオプション行使により約11.1%の株式希薄化が生じ、それまで筆頭株主だったイオン(当時の保有比率9.98%)は相対的に順位を下げることになりました。イオンはこれを「創業家の支配権の強化を優先している」と批判しています。

流通株式比率の低下懸念

創業家の持ち株比率上昇に伴い、市場で流通する株式の比率が低下することも問題視されました。東京証券取引所はプライム市場上場企業に対し、流通株式比率35%以上という基準を設けています。創業家による株式保有の拡大は、この基準への適合性にも影響を与える可能性があります。

アクティビストの影響

オアシス・マネジメントの存在

この対立の背景には、香港を拠点とする「物言う株主」オアシス・マネジメントの存在があります。オアシスは2002年にセス・フィッシャー氏が設立したアクティビストファンドで、日本企業への投資を積極的に行っています。

オアシスは2023年5月にクスリのアオキ株の大量保有報告書を提出。当初5.5%だった保有比率をその後9.67%まで引き上げ、筆頭株主の座を窺う存在となりました。保有目的は「ポートフォリオ投資および重要提案行為」とされ、株主価値向上のための提案を行う姿勢を明確にしていました。

株主総会での対立

2024年8月の定時株主総会では、オアシスが青木宏憲社長ら取締役3名の解任を求める株主提案を行いました。結果は反対多数で否決されましたが、2年連続での株主提案となり、両者の対立は長期化しています。

オアシスは、2020年の有償ストックオプション発行が会社に過大な損害を与えたとして解任を求めています。一方、クスリのアオキ側は「何ら合理性のない主張」と反論しており、溝は深まる一方です。

イオンの株式買い増しが火種に

2025年11月、イオンがクスリのアオキ株を追加取得したことが、今回の対立の引き金となりました。イオンは2024年にツルハHDを連結子会社化しており、これによりイオングループのクスリのアオキに対する議決権比率は約15%に達する見込みとなりました。

クスリのアオキ側は、イオンの持ち分法適用会社となることを嫌い、イオンが保有する議決権比率の引き下げを要求。これがイオン側の反発を招き、提携解消へとつながりました。

今後の展望と業界への影響

イオンの株式保有継続の意味

イオンは業務提携を解消した一方で、10.2%を保有するクスリのアオキ株は継続保有するとしています。この判断には複数の解釈が可能です。

一つは、将来的な関係修復や再編の可能性を残しているという見方です。ドラッグストア業界は合従連衡が進んでおり、イオンとしても有力企業との関係を完全に断つことは得策ではないと判断した可能性があります。

もう一つは、オアシス・マネジメントへの牽制という側面です。イオンが株式を売却すれば、オアシスが筆頭株主となる可能性が高まります。これを防ぐ意図があるとも考えられます。

ドラッグストア業界の再編動向

今回の出来事は、ドラッグストア業界の再編動向にも影響を与える可能性があります。イオンは2024年にツルハHDを連結子会社化し、業界での存在感を高めています。クスリのアオキとの提携解消は、この再編戦略の修正を迫られる可能性を示唆しています。

クスリのアオキは「独立路線」を志向しており、大手流通グループの傘下に入ることなく成長を続ける方針を示しています。ただし、アクティビストの圧力が続く中、この戦略を維持できるかどうかは不透明な部分があります。

注意点・展望

ガバナンスへの注目度の高まり

今回の事案は、上場企業のガバナンスに対する市場の注目度が高まっていることを示しています。創業家による支配強化と少数株主の利益保護のバランスは、多くの日本企業が直面する課題です。

投資家や株主にとっては、投資先企業のガバナンス体制を精査することの重要性が改めて浮き彫りになりました。特に、ストックオプションの発行条件や創業家の持ち株比率の変動には注意が必要です。

アクティビストとの対話の重要性

オアシス・マネジメントのような「物言う株主」の存在は、企業経営に緊張感をもたらす一方で、建設的な対話が行われなければ企業価値を毀損するリスクもあります。

クスリのアオキとオアシスの対立は2年以上続いており、早期の解決は見通せない状況です。このような長期的な対立は、経営資源の分散や株主間の分断を招く可能性があり、最終的には企業価値にマイナスの影響を与えかねません。

まとめ

イオンとクスリのアオキの20年以上にわたる提携関係の解消は、現代の日本企業が直面するガバナンス課題を象徴する出来事です。創業家の経営権維持、アクティビストの株主提案、そして大手流通グループの再編戦略が複雑に絡み合った結果といえます。

イオンは株式を継続保有しており、両社の関係が完全に断絶したわけではありません。今後の展開次第では、新たな形での協力関係が生まれる可能性もあります。

ドラッグストア業界は引き続き再編の渦中にあり、クスリのアオキの独立路線がどこまで維持できるかが注目されます。投資家や業界関係者は、今後の株主総会や各社の経営判断を注視していく必要があるでしょう。

参考資料:

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