α世代20億人に経営者が伝えたい挑戦マインドとは
はじめに
2010年から2024年ごろに生まれた「α(アルファ)世代」が、いよいよ社会の表舞台に登場し始めています。世界規模で20億人を超えるこの世代は、生まれながらにしてスマートフォンやSNS、生成AIが身近にある環境で育った「真のデジタルネイティブ」です。
日本の有力企業の経営者たちは、このα世代に対して強いメッセージを発信しています。「野性味ある精神を育もう」「9勝1敗より10勝90敗を」といった言葉に込められた意図は何でしょうか。本記事では、経営者たちが未来を担う若者に伝えたいメッセージの真意と、α世代が直面する時代背景について詳しく解説します。
α世代とは何か—史上最多の世代人口
20億人超のグローバル世代
α世代という名称は、オーストラリアの社会研究者マーク・マクリンドルが2005年に提唱しました。アルファベットの「Z」の次として、ギリシャ文字の最初の文字「α(アルファ)」を採用し、21世紀に生まれた新しい世代を象徴しています。
この世代の特筆すべき点は、その人口規模です。世界全体で25億人規模とも言われ、2026年時点では16歳以下の子どもたちがこれに該当します。日本では少子化が深刻ですが、グローバルに見ればα世代は史上最多の世代人口となっています。
デジタルとAIとともに育つ
α世代の最大の特徴は、物心ついた頃からiPhoneとSNSが身近にあり、困ったことがあれば生成AIに相談することが当たり前という環境で育っていることです。Z世代もデジタルネイティブと呼ばれましたが、α世代はさらに進化した「AGIネイティブ」とも表現されます。
彼らにとってAIは外部の存在ではなく、自分の知性の一部として自然に受け入れる感覚を持っています。検索エンジンよりもTikTokやYouTubeで情報を得ることを好み、短時間で直感的に理解できるコンテンツを重視する傾向があります。
経営者が若者に伝えたい「野性味」の真意
なぜ今「野性味」が求められるのか
日本企業の経営者たちがα世代に「野性味ある精神を育もう」と呼びかける背景には、デジタル環境で育った世代特有の課題があります。
AIやアルゴリズムが最適解を提示してくれる時代、若者たちは自ら考え、試行錯誤する機会が減少しがちです。検索すればすぐに答えが見つかり、レコメンドシステムが好みに合ったコンテンツを届けてくれます。しかし、ビジネスの現場では、答えのない問題に直面し、不確実な状況で意思決定を迫られることが日常です。
「野性味」という言葉には、整備された道を歩くのではなく、自ら道を切り拓く力を養ってほしいという願いが込められています。
「9勝1敗より10勝90敗」の意味
「9勝1敗より10勝90敗」というメッセージは、成功率よりも挑戦の総量を重視する考え方を示しています。
9勝1敗は90%という高い成功率ですが、挑戦回数はわずか10回です。一方、10勝90敗は成功率10%ですが、100回挑戦した結果として10回の成功を得ています。経営者たちは、少ない挑戦で高い成功率を維持するよりも、たくさん失敗しても多くの経験と学びを得ることの価値を伝えようとしています。
ゼネラル・エレクトリック社の伝説的CEO、ジャック・ウェルチも「失敗にも報酬を与えている」と述べ、失敗を恐れずに挑戦する文化の重要性を説いていました。失敗は恥ずべきことではなく、新しいことに挑戦した証であり、次につながる学びの源泉だという考え方です。
リアルな体験価値が重要になる理由
デジタル完結の限界
α世代はオンラインとオフラインの境目を意識しない世代です。しかし、だからこそ経営者たちは「リアルな体験価値」の重要性を強調しています。
生成AIの急速な普及やSNSのレコメンド機能強化により、生活は確かに便利になりました。一方で、人間らしい温かみや、予期せぬ出会いから生まれる発見が失われつつあるという指摘もあります。AIに代替できない領域として、実際に人と会い、五感で感じ、体を動かす経験の価値が再評価されています。
体験から得られる「本質を捉える力」
日本能率協会(JMA)の次世代リーダー育成研修では、「その本質は何か」という姿勢を重視しています。デジタル情報だけでは得られない、現場での体験を通じて物事の本質を捉える力が、新しい時代を切り拓くために必須とされています。
サントリーホールディングスの「やってみなはれ」精神も同様です。高い目標を立て、失敗も許容しながら実際にやってみることで、70%の学びは日々の業務から得られるという考え方が、次世代リーダー育成の基盤となっています。
α世代が直面する課題と機会
不確実性の時代を生きる
α世代が社会に本格参入する2030年代は、さらに不確実性が高まると予想されています。気候変動、地政学リスク、技術革新の加速など、従来の成功モデルが通用しにくい環境が待ち受けています。
だからこそ、経営者たちは「失敗を恐れず新たな道を切り拓く」ことの重要性を訴えています。若いうちは失敗してもリスクが少なく、家庭を持っていないことが多いため、挑戦しやすい時期でもあります。Z世代の若手起業家たちも「とにかくやるしかない」「若いうちの失敗は復活可能」と語っています。
親世代との価値観共有
α世代の親はミレニアル世代が中心です。親子ともにデジタル環境に親しみがあり、「物より体験を重視する」という価値観が家庭内で共有されやすい土壌があります。
この点は、α世代へのアプローチを考える上で重要なポイントです。親世代を通じたコミュニケーションや、家族単位での体験価値の提供が、α世代との関係構築において効果的だと考えられています。
注意点・今後の展望
世代論の限界を認識する
α世代という括りは便利ですが、20億人すべてが同じ特性を持つわけではありません。育った国や地域、家庭環境、経済状況によって大きな違いがあります。世代論は傾向を把握するツールであり、個人を理解するための出発点に過ぎないことを忘れてはなりません。
2026年は消費の主役へ
2026年、α世代の最年長は16歳となり、高校生として自身の意思決定で消費やトレンドをつくり始めます。TikTokやInstagramを通じた情報発信力を持ち、家族の購買行動にも影響を与える存在として、マーケティングの観点からも注目が高まっています。
経営者たちが今からα世代へメッセージを発信するのは、将来の顧客や従業員としてだけでなく、社会の分断や格差、気候変動といった課題に共に向き合うパートナーとして期待しているからでもあります。
まとめ
日本企業の経営者たちがα世代に伝えたい「野性味ある精神」と「失敗を恐れない挑戦」には、AI時代だからこそ人間らしい力を磨いてほしいという願いが込められています。
デジタルネイティブを超えた「AGIネイティブ」として育つα世代は、AIを自然に活用しながらも、リアルな体験を通じて本質を捉える力を身につけることが期待されています。9勝1敗の高い成功率よりも、10勝90敗の豊富な経験を積むこと。その過程で得られる学びこそが、不確実な時代を生き抜く力になるのです。
世界20億人のα世代が本格的に社会に参画する2030年代に向けて、経営者と若者の対話はますます重要になっていくでしょう。
参考資料:
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