経営者が語るα世代へのメッセージ「挑戦に失敗はない」
はじめに
α世代(アルファ世代)という言葉をご存知でしょうか。2010年から2024年頃に生まれた世代を指し、その数は世界で約20億人に達します。彼らは数年後には社会人となり、2050年には社会の中枢を担う存在になります。
人工知能(AI)が急速に普及し、劇的に変化する世界をどう生きるべきか。日本経済新聞が主要企業トップに「α世代に伝えたいメッセージ」を聞いたところ、多くの経営者が「挑戦」の重要性を強調しました。本記事では、AI時代を生きる若い世代へのメッセージと、これからの社会で求められる姿勢について解説します。
α世代とは何か
定義と特徴
α世代は、オーストリアの世代研究者マーク・マクリンドルが2005年に提唱した概念です。Z世代の次の世代にあたり、ラテン文字の最後「Z」の次にギリシャ文字の最初「α」を採用することで、新たな時代の始まりをイメージしています。
この世代の特徴は、物心つく頃にはiPhoneとSNSが身近にあり、AIとともに育っているという点です。彼らは従来の「デジタルネイティブ」の概念をさらに超え、「真のAIネイティブ」として成長しています。
史上最大の世代
英国の会計会社グラント・ソーントンによると、α世代は人類史上最も長生きで豊かな世代になると予想されています。世界では毎週280万人以上が誕生し、2025年頃には約20億人となる歴史上最大数の世代に成長すると言われています。
α世代による消費額は2050年に39兆8000億ドル(約6200兆円)に達する見込みで、アジア太平洋地域が14兆7000億ドルと最も大きな市場になると予測されています。
経営者からのメッセージ
「挑戦に成功も失敗もない」
日本経済新聞の調査で、多くの経営者が共通して強調したのは「挑戦」の重要性でした。アシックスの富永満之社長は、世界で活躍する日本のアスリートが増えている一方で、若者の身体を動かす機会が減少していることに言及しつつ、身体を動かすことの価値を伝えています。
アシックスの創業者・鬼塚喜八郎氏は「挑戦には失敗はつきもの。ただ、あきらめずに信じて突き進む」という言葉を残しています。転んでも起き、失敗しても前に進み続けることが、変化の激しい時代を生き抜く力になるという考え方は、多くの経営者に共有されています。
変化への適応力
経営者たちのメッセージに共通するもう一つのテーマは、変化への適応力です。AI技術の急速な進化、グローバル化の加速、環境問題への対応など、α世代が直面する課題は前例のないものです。
しかし、経営者たちは悲観的な見方をしていません。むしろ、変化の時代だからこそ新しい可能性が生まれるという前向きなメッセージを発信しています。
AI時代のキャリアと働き方
65%の仕事はまだ存在しない
調査によると、α世代の65%は現在存在しない職業に就くことになると予測されています。AI、ロボティクス、バイオテクノロジーなどの技術革新により、従来の職業観は大きく変わります。
α世代の約40%は、AI、仮想現実、スマートアシスタントが自分の将来のキャリアの中心になると信じています。また、76%が「自分のボスになりたい」または「副業を持ちたい」と考えており、強い起業家精神を持っています。
ポートフォリオ・キャリアの時代
一つの会社で生涯働くという従来のキャリアモデルは過去のものになりつつあります。新しいモデルは「ポートフォリオ・キャリア」であり、個人がスキルを習得し、それを次の仕事に持ち込むというスタイルです。
α世代は、サイバーセキュリティ、アプリ開発、暗号通貨などの新興分野でキャリアを築くことになります。生涯を通じて学び続け、複数の仕事や産業をまたいで活躍することが当たり前になるでしょう。
α世代の価値観
体験と経験を重視
α世代は、従来の「物質的な所有」を重要視する価値観から離れ、「体験」や「経験」に価値を見出す傾向が非常に強い世代です。物を持つことよりも、何を経験し、何を学んだかが重要視されます。
この価値観の変化は、消費行動だけでなく、働き方や人生設計にも影響を与えます。単に給料が高い仕事よりも、意義のある仕事や成長できる環境を重視する傾向が強まると予想されます。
メンタルヘルスへの意識
Razorfishの調査によると、8歳から10歳のα世代の75%がすでに自分のメンタルヘルスについて考えているといいます。職場においても、α世代はメンタルヘルスとウェルビーイングを重視することが予想されます。
これは企業のマネジメントにも変革を迫ります。従来のコマンド・アンド・コントロール型のマネジメントから、より柔軟で支援的、そして個人の成長を促進するスタイルへの転換が求められます。
注意点・展望
AIとの共存という課題
α世代は「AIネイティブ」として育っていますが、それは同時にAIとの適切な距離感を学ぶ必要があることも意味します。ChatGPT、Gemini、Claudeなどのツールはすでに多くの若者に利用されていますが、AIに頼りすぎることのリスクも認識する必要があります。
上司よりも生成AIを信頼するという傾向も報告されており、人間同士のコミュニケーションや信頼関係の構築という、AIでは代替できないスキルの重要性は変わりません。
社会課題への向き合い
α世代は、社会の分断や格差、気候変動といった課題とともに育っています。これらの問題に対する意識は高く、持続可能性や社会的責任を重視する傾向があります。企業もこうした価値観に応える姿勢が求められるようになるでしょう。
まとめ
経営者たちがα世代に伝えたいメッセージの核心は、「挑戦に成功も失敗もない」という姿勢です。AI時代という前例のない変化の中で、失敗を恐れずに挑戦し続けることが、新しい可能性を切り開く鍵となります。
α世代は2050年には社会の中核を担う存在になります。約20億人という史上最大の世代が、AIネイティブとして成長し、新しい価値観を持って社会に参画することで、世界は大きく変わっていくでしょう。
日本の経営者たちは、そうした未来を見据えながら、若い世代に対して「身体を動かすこと」「あきらめないこと」「変化を恐れないこと」の大切さを伝えています。
参考資料:
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