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アイリスオーヤマ大山社長が実践する「チーム経営」の全貌

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はじめに

企業が持続的に成長できるかは、スムーズな事業承継にかかっています。カリスマ経営者の後を継ぐことは容易ではありませんが、アイリスオーヤマの大山晃弘社長は「チーム経営」という独自のアプローチでこの課題に挑んでいます。

2018年に父・大山健太郎会長から社長のバトンを受け継いだ大山晃弘氏。「先代の事業への情熱、経営センスは唯一無二のもの。私だけでそれを担うことは考えていません」と語り、人事評価の見直しや組織改革に注力してきました。

その成果は着実に表れ、組織の自立力が向上し、新たなアイデアも増えてきたといいます。売上高1兆円という目標を掲げるアイリスオーヤマの「チーム経営」とは何か、その全貌を解説します。

大山晃弘社長のプロフィールと承継の経緯

19歳で社長を継いだ父の背中

アイリスオーヤマの歴史を語る上で、創業者・大山健太郎会長の存在は欠かせません。1964年、父の急逝により弱冠19歳で「大山ブロー工業所」の代表に就任。当時は従業員5名、年商わずか500万円の零細な町工場でした。

そこから半世紀以上をかけて、グループ売上高7,540億円(2023年度)、従業員数6,290名(2024年1月時点)を擁する生活用品業界国内最大手へと成長させました。プラスチック製品の下請け加工から始まり、自社ブランドを擁するメーカーへの業態転換、さらには家電事業への参入など、常に変革を続けてきた経営者です。

2018年の社長交代

大山晃弘氏は1978年生まれで、米国ベロイト大学に留学後、2003年にアイリスオーヤマの米国法人に入社しました。2010年に日本のアイリスオーヤマに転じ、グローバル開発部部長、執行役員ホーム開発部部長を経て、2015年に取締役に就任。

そして2018年7月、39歳で代表取締役社長に就任しました。54年ぶりの社長交代でした。大山健太郎会長は「高い志とそれを実現するリーダーシップを持ち、新たな視点で社会に貢献することを期待しています」と後継者を評価しています。

「チーム経営」の考え方

カリスマに頼らない組織づくり

大山晃弘社長が掲げる「チーム経営」は、一人のカリスマ経営者に依存しない組織運営を目指すものです。

現在、アイリスオーヤマは関連会社を含め国内外37工場を展開。生活用品、LED照明、ロボット、食料品など事業領域は多岐にわたります。変化の速い経営環境に対応するには、トップの判断を待つのではなく、各事業領域の責任者が自律的に動ける体制が必要です。

大山社長は「目標売上高1兆円」を掲げています。これは単なる数値目標ではなく、不確実な経営環境において組織が向かうべき方向を示すものです。「チーム経営で力を合わせて大きな目標を達成していこう」というメッセージが込められています。

リーダーシップの原点

大山社長のリーダーシップは、入社1年目の米国での経験に根差しています。2003年に米国グループ会社に入社した際、業績不振の立て直しを任され、同年11月にチェアマンに抜擢されました。

当時を振り返り、「経営トップとして従業員の皆さんの前で、会社の苦しい状況やこれからの方針について自ら発信し、理解をいただくことが大事だと感じました」と語っています。この経験が、透明性の高いコミュニケーションを重視する経営スタイルの基盤となっています。

人事評価制度の改革

3つの評価軸

アイリスオーヤマは2003年から人事評価の制度改革に着手しました。現在は「実績」「能力」「360度評価」という3つの基準で評価を行っています。

大山健太郎会長は「業績や実績だけで社員を評価してはいけない。そこには幸運や不運の要素もあり、個人の力を正確に示すものではない」と繰り返し社内で語っています。この考え方が、多面的な評価制度の設計につながりました。

役員を含むすべての社員は、上司・同僚・部下・関連部署から評価を受けます。一方向からの評価ではなく、複数の視点から評価されることで、より公正で納得感のある制度となっています。

プレゼンによる昇進制度

昇進の際には、候補者全員が役員や同僚の前で15分間のプレゼンテーションを行います。評価者は役員だけでなく、聴衆として参加する同僚たちも点数をつけます。この点数に過去の実績などを加えて昇進者が決定されます。

プレゼンせずに役職が上がることはありません。同格の社員が多数同席する中で評価が行われるため、「透明性」と「納得感」が担保されています。この仕組みは、実力主義の文化を組織に浸透させる役割を果たしています。

組織の自立力を高める施策

「3車線人事」の導入

アイリスオーヤマでは「3車線人事」と呼ばれるユニークな制度を運用しています。

能力が高く実績を挙げている社員には「追い越し車線」として、昇格タイミングを待たずに一つ上のポストに抜擢します。一方、壁に直面している社員には「登坂車線」に移行し、少しペースを落としながら力を蓄えてもらいます。

この柔軟な人事制度により、優秀な人材の早期抜擢と、苦戦している社員のリカバリー支援を両立しています。

自立した人材の育成

新卒採用では「主体性」「成長意欲」「目標達成意欲」の3つを重視しています。自ら目標を定め、その達成に向けて行動を起こし、試行錯誤できる人材を求めています。

大山社長が「チーム経営」を推進する上で、各事業領域で自律的に判断・行動できる人材の存在は不可欠です。人事評価制度や育成施策は、そうした人材を生み出すための基盤となっています。

企業理念の継承と進化

「アイ ラブ アイデア」の精神

アイリスオーヤマの企業理念は「常に高い志を持ち、常に未完成であることを認識し、革新成長する生命力に満ちた組織体をつくる」です。

大山健太郎会長が大切にしてきた「アイ ラブ アイデア」という言葉に象徴される柔軟性と創造力を、大山晃弘社長も引き継いでいます。プレゼン会議など社員がアイデアを直接経営陣に提案できる場を維持し、ボトムアップの風土を守っています。

仕組みによる継続性

大山健太郎会長は「アイリスオーヤマの仕組みはトップが変わったから駄目になるようなものではない」と語っています。プレゼン会議や人事評価制度など、属人的ではなく仕組みとして確立されたシステムが、事業承継後も機能し続けています。

大山晃弘社長も役員時代から主要な意思決定の場に立ち会い、その仕組みを学んできました。この引き継ぎプロセス自体も、スムーズな事業承継を実現した要因といえます。

今後の課題と展望

「大企業病」との戦い

組織が拡大するにつれ、挑戦意欲に欠ける人材や上司の顔色ばかり気にする社員が増えるリスクがあります。いわゆる「大企業病」を防ぐことは、成長企業にとって永遠の課題です。

厳格な人事評価制度も、若い世代にどこまで受け入れられるかという懸念があります。同僚との優劣を強く意識させる評価手法は、協調性を重視する価値観との間で摩擦を生む可能性があります。

売上1兆円への道

大山晃弘社長は「目標売上高1兆円」を掲げています。生活用品、LED照明、ロボット、食料品の各分野にはまだ成長余地があるとし、チーム経営で力を合わせて達成を目指す考えです。

経営環境の不確実性が増す中、一人の経営者の判断に頼らない「チーム経営」は、リスク分散と意思決定のスピード向上の両面でメリットがあります。この仕組みを機能させ続けられるかが、目標達成の鍵を握るでしょう。

まとめ

アイリスオーヤマ大山晃弘社長の「チーム経営」は、カリスマ創業者の後を継ぐという難題への一つの解答です。先代の経営スタイルをそのまま踏襲するのではなく、組織の自立力を高めることで、トップに依存しない経営体制を構築しています。

人事評価制度の改革、透明性の高い昇進プロセス、柔軟な人材配置など、具体的な施策を積み重ねることで、「チーム経営」は機能しています。3年ほどで効果が表れ始め、新たなアイデアも増えてきたという成果は、他の企業にとっても示唆に富むものです。

事業承継は多くの日本企業が直面する課題です。アイリスオーヤマの取り組みは、「仕組み」で継続性を担保するという、持続可能な企業経営のモデルケースといえるでしょう。

参考資料:

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