中国が米国の対キューバ圧力に反対表明、制裁停止を要求

by nicoxz

はじめに

2026年1月12日、中国外務省は米国のキューバに対する圧力強化に反対を表明しました。毛寧報道局長は記者会見で、米国に対し「キューバへの制裁とあらゆる形式の脅迫を直ちに停止」するよう要求しています。

この動きは、トランプ米大統領が1月11日にSNSで「キューバには今後一切の石油も資金も渡らない」と宣言し、ベネズエラに続く政変をキューバでも狙う可能性を示唆したことを受けたものです。米中両国がカリブ海地域で影響力を競い合う構図が、より鮮明になっています。

この記事では、中国の反対表明の背景、キューバを取り巻く経済危機の実態、そして今後の国際情勢への影響について詳しく解説します。

ベネズエラ介入がもたらしたカリブ海地域の激震

マドゥロ大統領拘束と地域秩序の変化

2026年1月3日、米軍は「オペレーション・アブソリュート・リゾルブ」と呼ばれる軍事作戦を実行し、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束しました。複数の軍種から特殊部隊が投入され、150機以上の軍用機が作戦に参加したとされています。

この作戦では、ベネズエラ側で100人以上の死者が出たと報告されています。さらに注目すべきは、キューバ軍関係者32人も作戦中に死亡したことです。キューバ政府は、この米軍の攻撃を「犯罪的な侵略行為であり国家テロリズム」と非難し、1月5日と6日を国民哀悼の日として宣言しました。

キューバとベネズエラの深い結びつき

キューバとベネズエラの関係は、単なる同盟国以上の深い依存関係にあります。キューバは医療従事者をベネズエラに派遣し、同時に治安・情報機関の人員もマドゥロ政権の維持に貢献してきました。

ルビオ米国務長官は、キューバの工作員がベネズエラの内部情報機関と治安活動を事実上運営し、マドゥロ大統領の個人警護や政権内部の忠誠監視にも関与していたと指摘しています。その見返りとして、ベネズエラは1日あたり最大10万バレルの石油をキューバに供給していました。近年は米国の制裁強化により約3万バレル程度に減少していましたが、それでもキューバにとっては生命線でした。

キューバの経済・エネルギー危機

深刻化する石油不足

マドゥロ大統領の拘束以降、ベネズエラからキューバへの石油輸送は完全に停止しています。専門家の分析によると、キューバの石油備蓄は約36万バレル、わずか4日分の消費量に相当する水準まで低下しています。

キューバの電力供給の80%以上が石油に依存しているため、この石油不足は即座に大規模停電につながっています。首都ハバナでさえ1日10時間以上の停電が発生し、地方部では20時間に及ぶ停電も報告されています。

経済全体への打撃

キューバ経済は過去6年間で約15%縮小し、2025年だけでも4%のマイナス成長を記録しました。米国の制裁によるコストは、2024年3月から2025年2月までの1年間で75億ドル以上に達すると推計されています。

産業の停滞、冷蔵食品の損失、基本サービスの低下など、経済危機は国民生活を直撃しています。「キューバ経済は疲弊し、信用も同盟国もない状態」と専門家は警告しており、「崩壊は数週間の問題」との見方も出ています。

中国の立場と戦略的意図

外交的支援の表明

中国外務省の毛寧報道局長は1月12日の記者会見で、キューバの主権と国家安全保障を守る「強い支持」を表明しました。習近平国家主席も「中国は引き続き、できる限りの支援をキューバに提供する」と述べ、「干渉と禁輸に対するキューバの正当な闘いを断固として支持する」と強調しています。

ただし、具体的な経済支援の規模や内容については「中国と関係国との協議を通じて決定する必要がある」として、明確な約束は避けています。

中国のキューバにおけるプレゼンス拡大

近年、中国はロシアを抜いてキューバの最大の支援国として台頭しています。特にエネルギー分野では、中国は2,000メガワット規模の太陽光発電施設92か所の建設を進めており、その半分以上が2026年1月までに稼働する見込みです。

バイオテクノロジー、医療、物流の分野でも中国の投資が拡大し、キューバ指導部は中国を「戦略的パートナー」と呼び、両国の「鉄の友情」を強調しています。

米中対立の新たな舞台

中国のキューバ支援は、単なる二国間関係を超えた戦略的意図を持っています。米国の「裏庭」であるカリブ海地域に足場を築くことで、中国は地政学的な影響力を確保しようとしています。

しかし、専門家の間では「中国は伝統的な同盟国を象徴的に擁護する戦略を取っているが、キューバの深刻な状況を緩和する実質的な物質支援は提供していない」との見方も根強くあります。

トランプ政権の対キューバ戦略

「最大圧力」政策の再来

トランプ大統領は1月11日、自身のSNS「Truth Social」で「今後キューバには石油も資金も一切渡らない。ゼロだ!」と宣言しました。さらに「手遅れになる前に取引するよう強く勧める」とキューバに迫っています。

トランプ政権は「最大圧力による体制変革」という方針を採用したと見られています。分析によれば、政権は2026年がキューバにおける共産主義支配の最後の年になることを目指しており、武力介入なしでそれを達成しようとしています。

キューバの反応

キューバのディアスカネル大統領は「我々に指図する者はいない」とSNSで反発しました。「米国とキューバの関係が進展するためには、敵意や脅迫、経済的強制ではなく、国際法に基づく必要がある」と主張しています。

現時点で米キューバ間の公式交渉は行われておらず、移民分野での技術的な接触のみが続いているとキューバ側は説明しています。

注意点・展望

国際社会への波及効果

米国のキューバへの圧力強化は、単にカリブ海地域の問題にとどまりません。中国やロシアなど、米国と対立する国々がどこまでキューバを支援するかが試されています。

メキシコは現在、1日約5,500バレルの石油をキューバに供給していますが、米国からの圧力でこれを継続できなくなる可能性があります。ロシアも約7,500バレルを供給していますが、ベネズエラの代替となるほどの増量は困難と見られています。

人道的危機への懸念

専門家は、ベネズエラからの石油供給が突然停止した場合、大規模な社会不安と移民の急増につながる可能性を警告しています。すでに1日10〜20時間の停電に苦しむキューバ国民にとって、状況のさらなる悪化は深刻な人道的危機を引き起こしかねません。

今後の見通し

中国の外交的支援がどこまで実質的な経済援助につながるかは不透明です。中国はキューバへの投資を拡大していますが、米国の制裁を回避しながら大規模な石油供給を行うことは困難です。キューバの危機は「構造的な問題」であり、中国の支援だけでは解決できないとの見方が支配的です。

まとめ

中国の対米キューバ圧力への反対表明は、カリブ海地域における米中対立の新たな局面を示しています。ベネズエラへの軍事介入後、トランプ政権は次のターゲットとしてキューバに焦点を当てており、中国はこれに外交的に対抗する姿勢を見せています。

しかし、キューバが直面する経済・エネルギー危機は深刻であり、中国の支援だけで乗り越えられるかは疑問です。今後数週間から数か月が、キューバの共産主義体制の存続を左右する重要な時期となりそうです。国際社会は、人道的観点からもこの状況を注視する必要があります。

参考資料:

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