共通テスト2026、初のWeb出願導入で大きく変わる受験手続き
はじめに
2026年1月17日、全国で大学入学共通テストが始まりました。今回の共通テストは、これまでの入試制度と大きく異なる重要な転換点となっています。最も大きな変化は、初めてオンライン出願が全面導入されたことです。従来は高校を通じて郵送していた出願手続きが、受験生自身が直接オンラインで行う形式に変わりました。
志願者数は49万6,237人と前年から1,066人増加し、2年連続の増加となりました。新学習指導要領に対応したテストとしては2年目を迎え、「情報I」を含む新課程での試験が定着しつつあります。
本記事では、共通テスト2026のWeb出願システムの詳細、従来との違い、受験生が直面した新たな課題、そして今後の大学入試のデジタル化について詳しく解説します。
Web出願システムの全面導入
従来の出願方法からの大転換
2026年度入試から、大学入学共通テストの出願手続きは完全にオンライン化されました。これは共通テスト(旧センター試験を含む)の歴史において初めての試みです。
従来、高校在籍者(現役生)は在籍する高校を通じて出願書類をセンターに提出していました。しかし新システムでは、現役生を含むすべての志願者が個人で直接、大学入試センターにオンライン出願する形式に変更されました。
この変更により、高校側の事務負担は軽減される一方で、受験生自身がすべての手続きを管理する責任が生まれました。デジタルネイティブ世代の受験生にとっては直感的に操作できる一方、インターネット環境やデジタル機器に不慣れな受験生には新たなハードルとなった可能性があります。
出願手続きの流れ
Web出願の具体的な流れは以下の通りです。
マイページ作成期間:2025年7月1日~10月3日 受験生は「共通テスト出願サイト」にアクセスし、マイページを作成します。この際、メールアドレスの登録と、2025年7月1日以降に撮影した顔写真データの準備が必要です。
出願期間:2025年9月16日(火)10:00~10月3日(金)17:00 マイページから出願内容を登録し、検定料をオンライン決済で支払います。従来の金融機関での振込みから、クレジットカードやコンビニ決済などのオンライン決済に変更されました。
受験票取得期間:12月10日~2026年4月30日 出願後、受験票は郵送されません。受験生は自分でマイページから受験票PDFをダウンロードし、A4サイズの白色用紙に印刷する必要があります。白黒・カラーは問いませんが、スマートフォンでの画面表示では試験場に入場できません。
必要な準備
Web出願には以下の準備が必要です。
- インターネット接続可能なパソコン、スマートフォン、タブレット
- メールアドレス(連絡用)
- オンライン決済手段(クレジットカード、コンビニ決済など)
- 顔写真データ(2025年7月1日以降撮影)
- プリンター(または印刷できる環境)
特に受験票の印刷は重要で、自宅にプリンターがない場合はコンビニエンスストアのプリントサービスやネットカフェなど、事前に印刷手段を確保する必要があります。
2026年度共通テストの志願者動向
志願者数の推移
2026年度の共通テスト志願者数は49万6,237人で、前年度(2025年度)の49万5,171人から1,066人増加しました。共通テストの志願者数は2019年度をピークに減少傾向が続いていましたが、2025年度に7年ぶりに増加に転じ、2026年度も2年連続で増加しました。
過去3年間の推移を見ると以下の通りです。
- 2024年度:49万1,914人
- 2025年度:49万5,171人(前年比+3,257人)
- 2026年度:49万6,237人(前年比+1,066人)
ただし、2020年度前後の55万人規模と比較すると、依然として志願者総数は少ない水準が続いています。これは18歳人口の減少が主な要因です。
現役生減少、既卒生大幅増
2026年度の内訳を見ると、興味深い傾向が浮かび上がります。
- 現役生(高等学校等卒業見込者):42万311人(84.7%)、前年比5,657人減
- 既卒生(高等学校等卒業者):7万1,310人(14.4%)、前年比6,336人増
現役生は減少した一方、既卒生が大幅に増加しました。この既卒生の増加は、新課程への移行年度である2025年度入試で浪人を選択した受験生が、2026年度に再挑戦している可能性を示しています。
新学習指導要領の導入により、2025年度から「情報I」が新科目として加わりました。既卒生にとって新科目への対応は大きな負担となり、2025年度の浪人生は不利な状況に置かれていました。しかし1年間の準備期間を経て、2026年度には新課程に対応した既卒生が増加したと考えられます。
新課程2年目:情報Iの定着
情報Iとは
2022年度から高等学校で必修科目となった「情報I」は、2025年度の共通テストから出題科目に加わりました。2026年度は新課程2年目となり、受験生にとっても情報Iへの対応が定着しつつあります。
情報Iは以下の4つの分野で構成されています。
- 情報社会の問題解決
- コミュニケーションと情報デザイン
- コンピュータとプログラミング
- 情報通信ネットワークとデータの活用
試験時間は60分で、4つの大問があります。第1問と第2問では全範囲の知識が問われ、第3問と第4問ではプログラミングに関する理解力が問われます。
国公立大学での扱い
国公立大学の多くは、情報Iを受験必須科目としています。6教科8科目(または7教科8科目)体制となり、受験生の負担は確実に増加しました。
一方、私立大学では情報Iを選択科目として扱う大学が多く、大学・学部によって対応が分かれています。日本大学では2026年度入試から多くの学部で「情報I」を選択科目として導入しました。
情報Iの導入は、単なる受験科目の追加ではなく、デジタル社会で必要なリテラシーを高校段階から育成する狙いがあります。プログラミング的思考やデータ分析能力は、今後あらゆる分野で求められるスキルとなるでしょう。
Web出願導入の背景と意義
デジタル化による効率化
共通テストのWeb出願導入には、いくつかの背景があります。
高校側の事務負担軽減 従来、高校は受験生からの出願書類を取りまとめ、大学入試センターに郵送する作業を担っていました。数百人規模の受験生を抱える高校では、この作業は大きな負担でした。オンライン化により、高校側の事務作業は大幅に削減されます。
受験生の利便性向上 受験生は自分のペースで出願でき、入力内容の確認や修正も容易になりました。郵送の遅延リスクもなくなり、期限ぎりぎりでもオンラインで確実に出願できます。
処理の迅速化と正確性 紙の願書では、手書きの文字が読み取りにくいなどのトラブルが発生する可能性がありました。デジタルデータであれば、処理の自動化が進み、ミスも減らせます。
課題とデジタルデバイド
一方で、Web出願にはいくつかの課題も指摘されています。
デジタル環境の格差 すべての受験生が自宅にパソコンやプリンターを持っているわけではありません。インターネット環境が十分でない地域も存在します。こうしたデジタルデバイドが、受験機会の不平等につながる懸念があります。
操作ミスのリスク 高校を通じた出願では、教員がチェック機能を果たしていました。個人での出願では、入力ミスや手続き漏れのリスクが増加します。特に顔写真のアップロードや受験票の印刷など、慣れない作業でトラブルが発生する可能性があります。
受験票印刷の失敗 受験票は自分で印刷する必要がありますが、プリンターの故障や用紙切れ、印刷設定の誤りなどで当日までに準備できないケースも想定されます。大学入試センターは印刷に関する注意事項を詳細に提示していますが、受験生の自己責任が増大しました。
大学入試のデジタル化の今後
他の入試への波及
共通テストでのWeb出願成功は、他の大学入試にも影響を与える可能性があります。既に多くの私立大学では独自にWeb出願を導入していますが、システムの標準化や共通化が進めば、受験生にとってより使いやすい環境が整うでしょう。
将来的には、成績データの電子化、合否通知のオンライン化、入学手続きのデジタル化なども進むと予想されます。大学入試全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、今後加速していくでしょう。
CBT導入の可能性
さらに先を見据えると、共通テスト自体をCBT(Computer Based Testing)化する議論もあります。コンピュータ上で試験を実施すれば、採点の自動化、結果通知の迅速化、出題形式の多様化などのメリットがあります。
ただし、全国で同時に数十万人が受験する共通テストをCBT化するには、膨大なインフラ整備が必要です。セキュリティ対策、公平性の担保、トラブル時の対応など、解決すべき課題は多く残されています。
注意点と今後の展望
受験生が注意すべきポイント
Web出願を利用する今後の受験生は、以下の点に注意が必要です。
早めの準備 マイページ作成や顔写真の準備は、期限に余裕を持って行いましょう。直前になって慌てると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
受験票の印刷確認 受験票は必ず事前に印刷し、内容を確認してください。印刷環境がない場合は、コンビニプリントなど代替手段を早めに確保しましょう。
メールの確認 大学入試センターからの重要な連絡はメールで届きます。迷惑メールフォルダに入らないよう設定し、定期的にチェックしてください。
制度改善への期待
初年度のWeb出願では、おそらく様々な課題が浮き彫りになるでしょう。大学入試センターには、受験生からのフィードバックを真摯に受け止め、システムの改善を継続的に行うことが求められます。
特にデジタル環境に恵まれない受験生への配慮、分かりやすいマニュアルの提供、トラブル発生時のサポート体制の充実などが重要です。
また、高校や予備校との連携も必要です。高校は出願の取りまとめからは解放されますが、受験生へのガイダンスや操作支援など、新たなサポート役割が求められるでしょう。
まとめ
2026年度の大学入学共通テストは、初のWeb出願導入により、日本の大学入試制度の大きな転換点となりました。49.6万人の志願者がオンラインで出願し、自分で受験票を印刷するという新方式を経験しました。
既卒生の大幅増加は、新課程への移行期における浪人生の動向を示しており、情報Iへの対応も2年目で定着しつつあります。Web出願は高校の負担軽減や処理の効率化というメリットがある一方、デジタルデバイドや受験生の自己責任増大という課題も抱えています。
今後、共通テストのデジタル化はさらに進展し、他の大学入試にも波及していくでしょう。受験生にとって公平で利便性の高いシステムへと進化させるためには、継続的な改善と丁寧なサポートが不可欠です。
大学入試のDXは始まったばかりです。デジタル技術を活用しながら、すべての受験生に平等な機会を提供する入試制度の構築が、今後の重要な課題となります。
参考資料:
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