デトロイトモーターショー2026年の主役は大型車、EV後退鮮明に

by nicoxz

はじめに

2026年1月14日、第2次トランプ米政権発足後初となる北米国際自動車ショー(デトロイトモーターショー)がミシガン州デトロイトで開幕しました。会場となったハンティントン・プレイスには41のブランドが出展し、25日までの約2週間にわたって開催されます。

今回のショーで最も注目されるのは、電気自動車(EV)の存在感が大幅に低下し、代わりに大型ピックアップトラックやハイブリッド車(HV)が主役となっている点です。バイデン前政権下で進められたEV普及策がトランプ政権によって撤回されたことで、自動車業界全体の戦略が大きく転換しています。

本記事では、2026年デトロイトモーターショーの見どころと、その背景にある米国自動車産業の変化について詳しく解説します。

トランプ政権によるEV政策の転換

EV補助金の廃止と市場への影響

2025年9月30日、トランプ政権はEV購入補助を正式に終了しました。バイデン前政権が導入したインフレ削減法(IRA)に基づくEV税額控除が廃止され、新車・中古車・商用車購入者向けの優遇措置がなくなりました。

この政策変更により、テスラをはじめとするEVメーカーは大きな打撃を受けています。主力車種は実質的に約2割の値上がりとなり、消費者の購買意欲に影響を与えています。さらに、2026年度予算法案にはEV登録料として1台当たり年間250ドル(ハイブリッド車は100ドル)の支払い義務が盛り込まれ、EVオーナーの負担増が見込まれます。

EV市場の見通し下方修正

ブルームバーグNEFの最新予測によると、2030年時点における米国の乗用車・小型トラック販売に占めるEVの割合は27%にとどまる見通しです。2024年時点の予測値48%から大幅な下方修正となっており、トランプ政権の政策がEV普及にブレーキをかけていることは明らかです。

自動車業界のアナリストは「2026年における最大の変化は電動化戦略の見直しである」と指摘しています。連邦政府の税制優遇がなくなり、規制環境が変化したことで、各メーカーは実際の市場需要に合わせた戦略調整を迫られています。

大型車とハイブリッド車が主役に

ピックアップトラック市場の好調

今回のデトロイトショーで最も目立つのは、フォードやGMが展示する大型ピックアップトラックです。2025年の米国自動車市場では、トラックとSUVが引き続き好調な販売を記録しました。

フォードは2025年通年で220万4,124台を販売し、前年比6%増を達成しました。特にF-Seriesピックアップは8.3%の成長を記録し、49年連続でトラック販売台数1位を維持しています。セグメントシェアではF-Seriesが33%、シボレー・シルバラードが25%、ラム・ピックアップが18%、GMCシエラが16%と、ビッグスリーの大型トラックが市場を独占しています。

GMも2025年に市場シェアを約17%に拡大し、シボレー・エクイノックスやシルバラード、GMCシエラといったSUVとピックアップが販売を牽引しました。フルサイズSUV市場では、シボレー・タホとGMCユーコンが2007年以来最高の販売台数を記録し、51年連続で市場リーダーの地位を維持しています。

ハイブリッド車への回帰

EVの存在感が低下する一方で、ハイブリッド車への関心が急速に高まっています。フォードの販売担当者は「他の自動車メーカーが特定のパワートレインに集中している中、アメリカの消費者は選択の自由を求めている」と述べています。

フォードF-150ハイブリッドは2025年に過去最高の84,934台を販売し、前年比15%増という好調な成績を収めました。アメリカで最も売れるハイブリッドピックアップとして、その地位を確立しています。

今回のショーでは、ガソリン車、ハイブリッド車、EVの各パワートレインを体験できる2つの屋内テストトラックが設置されており、来場者は加速性能やブレーキ性能、乗り心地を実際に比較することができます。

2026年北米カー・オブ・ザ・イヤー受賞車

EVは受賞を逃す

デトロイトショー開幕に合わせて発表された2026年北米カー・オブ・ザ・イヤー(NACTOY)の結果も、業界トレンドの変化を象徴しています。カー部門はドッジ・チャージャー(195票)、トラック部門はフォード・マーベリック・ロボ(277票)、ユーティリティ部門はヒュンダイ・パリセード(270票)がそれぞれ受賞しました。

過去3年間はEVが少なくとも1部門で受賞していましたが、今年は3部門すべてでガソリン車またはハイブリッド車が選ばれました。これは「電動化革命」への期待が後退し、消費者や業界の関心が従来型パワートレインに回帰していることを示しています。

受賞車の特徴

トラック部門を制したフォード・マーベリック・ロボは2025年に過去最高の155,051台を販売し、コンパクトピックアップ市場での人気を証明しました。フォードは2021年以降、トラック部門で優勝を独占し続けています。

ユーティリティ部門のヒュンダイ・パリセードは、3列シートを備えたファミリー向けSUVとして高い評価を受けました。4万ドル未満の価格設定と新たに追加されたハイブリッドパワートレインが、価値・技術・効率のバランスとして評価されています。

各メーカーの出展戦略

フォードの展示内容

今回のショーで唯一の新車発表を行うのはフォードです。ブロンコSUVに関するニュースを発表するほか、オフロードラインナップについても言及する予定です。特別仕様の2026年型マスタング、リフレッシュされたSUVやピックアップの展示に加え、ブロンコのオフロード体験エリアも設置されています。

フォードは2026年にF-150およびスーパーデューティの生産を増加させる計画を発表しており、好調な需要に応える姿勢を見せています。一方で、EV版ピックアップであるF-150ライトニングの生産は停止され、2030年までに航続距離拡張型電気自動車(EREV)に置き換えられる予定です。

GMの展示内容

GMは、シボレー、ビュイック、GMC、キャデラックから約50台の車両を展示し、「製品ラインナップの幅広さ」をアピールします。昨年のショーではEVポートフォリオを強調していましたが、今年は戦略を転換しています。

注目の展示車両は、アメリカ建国250周年を記念した限定版シボレー・シルバラードです。売上の一部は救急隊員を支援するチャリティに寄付されます。

トヨタ・その他

トヨタは26台の車両を展示し、2026年型RAV4小型SUVのアップデートモデルを目玉として紹介します。スバルは今年から新たに企業展示に参加し、27ブランドが出展する大規模なショーとなりました。

また、2026年の新企画として「ミシガン・オーバーランド・アドベンチャー」が設置されています。カスタムビルドのトラックやオフロードSUV、冒険仕様の車両や遠征装備が展示され、フォード、シボレー、GMC、ジープ、ラム、トヨタ、INEOS、スバル、AEVの車両がメインを務めます。

日本メーカーへの影響と今後の展望

ハイブリッド戦略が奏功

トランプ政権のEV政策転換は、ハイブリッド技術で先行してきた日本メーカーにとって追い風となる可能性があります。トヨタやホンダはハイブリッド車への早期投資の恩恵を受け、影響は比較的小さいと予想されています。

一方で、2025年に実施された自動車関税(当初27.5%から15%に引き下げ)は日本メーカーの収益に影響を与えています。スバルは大幅な利益減少、マツダは赤字転落となりました。メガバンク幹部は「トランプ関税危機を独力で乗り切れるのはトヨタだけ」と厳しい見方を示しています。

今後の注意点

短期的には、EV関連の開発コストや罰金負担の軽減により、自動車メーカーの利益率改善が期待されます。しかし中長期的には、BEVへの投資優先度が下がり、ハイブリッド車や高効率内燃機関車への投資が進む可能性があります。

2026年から開始されるUSMCAの見直し協議では、域内で生産された部品比率のさらなる引き上げや基準の厳格化が議論される見込みです。各メーカーは生産やサプライチェーン構造の再定義を検討する必要があります。

まとめ

2026年デトロイトモーターショーは、米国自動車産業の大きな転換点を象徴するイベントとなりました。トランプ政権のEV補助金廃止と環境規制緩和を背景に、大型ピックアップトラックやハイブリッド車が主役となり、EV一辺倒だった近年のトレンドからの揺り戻しが鮮明になっています。

フォードやGMといったビッグスリーは、引き続き好調なトラック・SUV市場を牽引しながら、EV戦略の見直しを進めています。日本メーカーにとっては、ハイブリッド技術の強みを活かせる環境となりつつありますが、関税や為替リスクへの対応は引き続き課題となります。

消費者にとっては、ガソリン車、ハイブリッド車、EVと多様な選択肢が用意される状況が続きそうです。自動車購入を検討している方は、各パワートレインのメリット・デメリットを比較し、自身の使用環境に合った選択をすることが重要です。

参考資料:

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