エプスタイン文書300万ページ追加公開、米司法省が作業完了を宣言
はじめに
2026年1月30日、米司法省は少女買春などの罪で起訴され拘留中に死亡した富豪ジェフリー・エプスタイン氏に関する捜査資料の追加公開を行いました。今回公開されたのは約300万ページの文書に加え、約18万点の写真と約2,000本のビデオです。
ブランチ司法副長官は記者会見で、資料の精査は終了したと述べ、これをもって「エプスタイン文書透明化法」に基づく公開作業は完了したとの立場を示しました。これまでの公開分と合わせ、合計約350万ページが公開されたことになります。
エプスタイン事件は、権力者と性犯罪の関係を浮き彫りにした米国史上最大級のスキャンダルです。今回の大規模公開により、事件の全容解明がどこまで進むのか注目が集まっています。
エプスタイン文書公開の経緯
超党派で成立した透明化法
エプスタイン文書の公開は、議会の強い要請によって実現しました。2025年11月18日、米下院は「エプスタイン文書透明化法」を427対1という圧倒的な賛成多数で可決しました。上院も全会一致で承認し、トランプ大統領が翌日に署名して法律が成立しています。
この法律は、議会が設定した期限(2025年12月19日)までにすべてのファイルを公開することを求めていました。しかし、司法省はこの期限に間に合わず、数百人の弁護士を動員して記録の確認と墨消し作業を行ったと説明しています。
公開された文書の規模
司法省が保有するエプスタイン関連文書は合計約600万ページに及びます。このうち約350万ページが今回までに公開されました。残りの約300万ページは、児童性的虐待に関する素材や被害者のプライバシー保護を理由に非公開とされ、さらに約20万ページは法的特権に基づき非公開となっています。
今回の公開分には、FBI捜査官による被害者への聞き取り記録(302フォーム)が多数含まれています。プライベートジェットや各地の邸宅を利用した組織的な搾取の実態が、被害者の詳細な証言とともに記録されています。
公開文書で明らかになった内容
著名人との関係を示す記録
今回の文書には、エプスタイン氏と世界的な著名人との関係を示す記録が多数含まれています。英国のアンドリュー王子に関する文書のほか、イーロン・マスク氏、ビル・ゲイツ氏、ハワード・ラトニック商務長官、オバマ政権の法律顧問だったキャシー・ルームラー氏などとの新たなやり取りが確認されました。
特に注目を集めたのは、イーロン・マスク氏に関する記録です。2013年12月のメールのやり取りでは、マスク氏がエプスタイン氏の島を訪問する計画が議論されており、「ELON MUSK TO ISLAND DEC. 6TH」というGoogleカレンダーのエントリーも含まれていました。マスク氏はこれまで、エプスタイン氏と島を訪れたことはないと否定しています。
組織的な犯罪の実態
FBIの聞き取り記録からは、エプスタイン氏の犯罪が個人的なものではなく、高度に組織化されたシステムであったことが改めて浮き彫りになっています。複数の邸宅やプライベートジェットを利用したネットワークの存在が、被害者の証言によって詳細に語られています。
公開への批判と論争
「不十分」との声
文書公開をめぐっては、その範囲が不十分だとする批判が相次いでいます。ロー・カンナ下院議員は、600万ページ超のうち約350万ページしか公開されていない点を問題視し、「残りが非公開とされている理由について疑問が残る」と指摘しました。
ブランチ司法副長官は「エプスタインに関する超極秘の文書を隠しているわけではない」と反論し、「著名人や政治家の名前は公開されたファイルにおいて墨消しされていない」と説明しています。しかし、議会の一部からは「トランプ政権は法律に従っていない」との厳しい批判も出ています。
被害者の懸念
文書公開をめぐっては、被害者サイドからも不満の声が上がっています。被害者の名前が公開される一方で、加害に関与した人物の名前が保護されているケースがあるとの指摘です。被害者のプライバシー保護と事件の透明性確保のバランスが改めて問われています。
注意点・今後の展望
政治的な影響
エプスタイン文書に名前が登場する著名人にとって、今回の公開は政治的・社会的なリスクをもたらします。特に現政権の要職に就く人物の名前が含まれている場合、議会での追及が避けられない可能性があります。
ハワード・ラトニック商務長官の名前が文書に含まれていたことは、今後の政治的な焦点になり得ます。ただし、文書に名前が記載されていることが直ちに犯罪への関与を意味するわけではない点には注意が必要です。
司法手続きの行方
司法省は文書の精査作業を完了したとしていますが、エプスタイン事件に関連する司法手続きがすべて終結したわけではありません。文書公開を受けて新たな捜査や訴訟が提起される可能性も残されています。
また、非公開とされた300万ページ近い文書について、今後議会やメディアからさらなる公開を求める圧力が高まることも予想されます。
まとめ
米司法省によるエプスタイン文書の大規模公開は、この事件の全容解明に向けた重要な一歩です。合計350万ページの公開により、著名人との関係や組織的な犯罪の実態に新たな光が当たりました。
一方で、600万ページ中の半数近くが非公開のままであり、公開の範囲が十分かという議論は続いています。被害者のプライバシー保護と透明性の確保という、相反する要請のバランスも引き続き課題です。エプスタイン事件が社会に投げかける問いは、文書公開後も解消されることはなさそうです。
参考資料:
- DOJ concludes Epstein files review with release of 3.5 million records(Axios)
- Massive trove of Epstein files released by DOJ(CBS News)
- DOJ releases final 3 million pages of the Epstein files(NPR)
- DOJ releasing 3 million pages of Epstein files(ABC News)
- Department of Justice Publishes 3.5 Million Responsive Pages(DOJ)
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