Research

Research

by nicoxz

FedExが米政府を提訴、関税返還訴訟の波紋

by nicoxz
URLをコピーしました

はじめに

2026年2月23日、米物流大手フェデックス(FedEx)が連邦政府を相手取り、支払済みの関税全額の返還を求める訴訟を提起しました。これは、2月20日に米連邦最高裁判所が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税を違法と判断したことを受けた動きです。

フェデックスは2026年6月期通期で関税関連の損失が約10億ドル(約1,500億円)に達する可能性があると警告しており、今回の訴訟は企業側の反撃の狼煙となっています。日本企業を含む世界中の輸入事業者が同様の動きを検討しており、返還請求の総額は最大1,750億ドル(約26兆円)規模に膨らむ可能性があります。

この記事では、フェデックスの訴訟の詳細、日本企業の動向、そして今後の返還プロセスについて解説します。

フェデックス訴訟の全容

訴訟の背景と請求内容

フェデックスはニューヨークの国際貿易裁判所(CIT)に訴状を提出し、米国、米税関・国境取締局(CBP)、および同局長官のロドニー・スコット氏を被告として名指ししました。訴状では、IEEPAに基づき違法に徴収された関税の「全額返還」を求めています。

フェデックスは国際物流のリーダーとして、日々膨大な量の荷物を米国に輸入しています。トランプ政権がIEEPAを根拠に発動した相互関税やフェンタニル関税により、同社は輸入品一つひとつに対して追加の関税負担を強いられてきました。同社は訴状の中で「重大な損害を被った」と主張しています。

最高裁判決が開いた道

2月20日の最高裁判決は、6対3の評決でIEEPAが大統領に関税を課す権限を与えていないと判断しました。この判決は「解放の日」関税をはじめとする、IEEPA に基づいて発動されたすべての関税を無効としました。

ただし、最高裁は既に徴収された関税の返還方法については具体的な指針を示しませんでした。この点が現在の大きな争点となっています。判決は事案を国際貿易裁判所に差し戻し、返還の問題を審理するよう命じました。

日本企業の動向と訴訟の広がり

日本企業9社が先行して提訴

実は、最高裁判決に先立ち、日本企業の米国法人9社がすでにIEEPA関税の返還を求める訴訟を起こしていました。豊田通商、住友化学、リコーなどの米国子会社が、ニューヨークの国際貿易裁判所にトランプ政権の関税の違法性を訴えていました。

これらの企業は、米国での事業活動において多額の関税負担を強いられており、法的手段による救済を模索してきました。最高裁の違法判決は、これらの訴訟にとって追い風となっています。

世界規模で広がる返還請求

フェデックスだけでなく、米小売大手コストコ、化粧品メーカーのレブロン、眼鏡メーカーのエシロール・ルックスオティカ、川崎重工業の米国法人(カワサキ)、缶詰食品のバンブルビーなど、多くの企業が関税返還を求める訴訟を提起しています。

最高裁判決前の時点で、すでに2,000社以上の輸入事業者が国際貿易裁判所に訴訟を提起していたとされます。判決後はこの流れがさらに加速しており、フェデックスは主要企業として初めて判決後に訴訟を提起した企業の一つです。

返還プロセスの課題と見通し

巨額の返還金をめぐる不透明感

CBPのデータによると、2025年12月中旬時点でIEEPA関税として約1,335億ドルが30万1,000社以上の輸入事業者から徴収されています。2026年2月20日の判決時点までの推計では、徴収総額は少なくとも1,600億ドルに達するとみられます。

ペンシルベニア大学ウォートン校の予算モデル分析では、IEEPA関税の撤回により最大1,750億ドルの返還が発生する可能性があると試算しています。これは米国の財政にとって極めて大きな負担となります。

返還手続きの二つのルート

輸入事業者が関税返還を受けるためには、主に二つの方法があります。

第一の方法は、CBPへの行政上の異議申立て(プロテスト)です。輸入品の関税が「確定(リキデーション)」された日から180日以内に異議を申し立てる必要があります。IEEPA関税が付された最初の輸入品は2025年12月中旬頃から確定が始まっており、最初の異議申立て期限は2026年6月中旬になる見込みです。

第二の方法は、国際貿易裁判所への訴訟提起です。フェデックスが選択したこのルートでは、裁判所にCBPへの返還命令を求めます。法律専門家によると、CBPが行政的な返還手続きを確立するよう裁判所が命じた場合、個別の異議申立てが不要になる可能性もあるとされています。

注意点・展望

代替関税の発動

トランプ大統領はIEEPA関税の無効化に対応し、1974年通商法第122条に基づく10%の暫定輸入追加税を2026年2月24日から150日間(7月23日まで)の期間限定で発動しました。これにより、関税自体がなくなったわけではありません。

ただし、第122条による関税は最大150日間に限定されており、延長には議会の承認が必要です。税率もIEEPA関税時代の国別高率関税(一部は25%以上)と比較すると10%と低く設定されています。

企業が取るべき対応

法律専門家は、輸入事業者に対して訴訟とCBPへの異議申立ての両方を並行して進めることを推奨しています。返還プロセスがどのように確定するかは依然として不透明であり、複数の手段で権利を保全することが重要です。

返還の実現には数か月から数年かかる可能性があり、即座に資金が戻ることは期待しにくい状況です。

まとめ

米最高裁のIEEPA関税違法判決を受け、フェデックスを先頭に関税返還を求める訴訟が急増しています。日本企業9社も先行して提訴しており、返還請求の総額は1,750億ドル規模に達する可能性があります。

トランプ政権は代替の10%暫定関税を発動していますが、IEEPA関税として徴収済みの1,600億ドル超の返還問題は未解決のままです。輸入事業者は、CBPへの異議申立てと訴訟の両面から権利保全を進めることが求められています。今後の国際貿易裁判所の判断やCBPの対応方針が、この問題の行方を左右することになります。

参考資料:

関連記事

最新ニュース