日立が純利益7600億円に上方修正、最高益を更新へ
はじめに
日立製作所が2026年3月期の連結純利益予想を7,600億円に上方修正しました。前期比23%増で、3期ぶりに過去最高益を更新する見通しです。今期2度目の上方修正となり、さらに最大1,000億円の自社株買いも発表しました。
好調の最大の要因は、AI関連のデータセンター向け需要が急拡大する送配電事業です。世界的な電力インフラ更新需要も追い風となり、エナジー事業が日立の業績を力強く押し上げています。本記事では、決算の詳細と成長ドライバーであるエナジー事業の動向を解説します。
第3四半期決算の全体像
過去最高の売上収益を記録
2026年3月期第3四半期(2025年10〜12月)の売上収益は2兆7,143億円で、四半期ベースとして過去最高を更新しました。第3四半期累計(4〜12月)の連結最終利益は前年同期比48.2%増の6,385億円に大幅拡大しています。
通期の純利益予想は従来の7,500億円から7,600億円に引き上げられ、前期(6,157億円)からの増益率は23.4%に拡大しました。事前の市場予想をも上回る水準です。
セグメント別の動向
好調のエナジー事業に加え、モビリティセクターやデジタルシステム&サービス(DSS)セクターも堅調に成長しました。コアフリーキャッシュフローもエナジー事業の前受金による効果で834億円の大幅増加となり、こちらも過去最高を達成しています。
エナジー事業がけん引する成長
AIデータセンターが変える電力需要
日立の業績を最も強く押し上げているのが、送配電設備を中心としたエナジー事業です。世界的なAIデータセンター建設ラッシュにより、電力インフラへの需要が急拡大しています。
IEAの予測によれば、世界のデータセンター・AI・暗号資産を合わせた電力消費量は、2022年の460TWhから2026年には最大1,050TWhへと倍増以上になる可能性があります。2025年から2030年にかけて最大125GWのAIデータセンターが新設されるとの見通しもあり、これはスペインの総発電設備容量に匹敵する規模です。
日立エナジーの大型投資
日立エナジーは、こうした需要に応えるために90億ドル規模のグローバル投資を進めています。米国では10億ドル超を投じて電力インフラ製造体制を拡充中で、バージニア州サウスボストンには4億7,500万ドルを投じた大型変圧器製造施設を新設します。2025年中に着工し、2028年の操業開始を目指しています。
変圧器市場は2024年の480億ドルから2030年には670億ドルへの成長が見込まれ、大型変圧器の納期は80〜120週間に及ぶほど需要がひっ迫しています。日立エナジーの供給能力拡大は、この需要を取り込むための戦略的な布石です。
次世代技術への取り組み
日立はNVIDIAが発表した800V直流電力供給アーキテクチャの構築もサポートしています。「グリッド・トゥ・ラック」と呼ばれるアーキテクチャにより、エネルギー損失と冷却負荷を低減し、ハイパースケールAIデータセンターの迅速な展開を可能にします。
国内では、Jパワーとの間でAI用データセンター構築に関する覚書を締結しました。カーボンニュートラル電源と日立のOT・AI技術を組み合わせ、GXとDXを同時に実現する取り組みです。
株主還元の積極姿勢
5000億円の還元計画を完了、追加1000億円
日立は株主還元約5,000億円の自己株式取得計画を2025年12月に完了しました。さらに2026年1月30日から4月30日の期間で、最大1,000億円・3,000万株の追加取得を発表しています。
成長投資と株主還元を両立させる姿勢は明確で、エナジー事業の利益拡大がこれを可能にしています。キャッシュフローの改善も著しく、持続的な還元強化の裏付けとなっています。
注意点・展望
日立の業績好調はエナジー事業への依存度が高まっていることの裏返しでもあります。AIデータセンター需要は構造的な成長トレンドですが、投資サイクルの波や地政学リスクには注意が必要です。
また、市場予想を下回った点にも留意すべきです。通期純利益7,600億円はQUICKコンセンサスの予想には届かなかったとの見方もあり、市場の期待値は既に高い水準にあります。
今後の焦点は、変圧器をはじめとする送配電設備の供給能力をいかに早く拡大できるかです。納期が80〜120週間に及ぶ現状では、製造能力の増強スピードが業績拡大のボトルネックとなり得ます。2028年の米国新工場稼働に向けた進捗が中期的な成長を左右するでしょう。
まとめ
日立製作所の2026年3月期は、AIデータセンター向け送配電需要の急拡大を背景に、純利益7,600億円で3期ぶりの最高益更新が見込まれます。今期2度目の上方修正に加え、最大1,000億円の追加自社株買いも発表し、成長と還元の両立を鮮明にしました。
エナジー事業の構造的な追い風は当面続く見通しですが、製造能力の拡大ペースと市場の高い期待値とのギャップには注目が必要です。
参考資料:
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