上場企業の7割が増益、AI投資の恩恵が幅広い業種に波及
はじめに
上場企業の業績が好調です。2025年4〜12月期決算を発表した東京証券取引所プライム上場企業のうち、約7割が最終増益となり、4年ぶりの高水準を記録しました。生成AI(人工知能)への投資拡大がもたらす恩恵は、半導体製造装置や素材だけでなく、データセンター向けインフラなど幅広い業種に波及しています。
資本効率改革による収益力の底上げも進み、米国の関税政策による影響を吸収する力が企業に備わっています。本記事では、好決算の背景とAI投資が日本企業にもたらす影響を解説します。
AI投資が企業業績を押し上げるメカニズム
ハイパースケーラーの巨額投資
好決算の原動力は、グローバルなAIインフラ投資の急拡大です。マイクロソフト、メタ、アルファベット、アマゾンの4社合計の設備投資額は、2024年に前年比59%増の2,227億ドルに達し、2025年はさらに46%増の3,252億ドルが計画されています。
エヌビディアの決算説明会では、2025年のAIデータセンター投資額が年初の4,000億ドル未満の予想から6,000億ドルへ上方修正されたと言及されました。2030年までに年間1兆ドルに到達するとの見通しもあります。
「期待」から「実収益」への移行
AIへの投資は「期待先行」の段階を脱し、実際の受注・売上・利益として企業業績に反映される「実収益フェーズ」に移行しています。日本企業にとっては、半導体製造装置、電子部品、素材、データセンター向け設備・空調・電力インフラなど、バリューチェーンの各段階で恩恵が広がっています。
好調な業種の具体的な動向
半導体製造装置:過去最高益が相次ぐ
半導体製造装置メーカーの業績は特に好調です。アドバンテストは2025年3月期の通期営業利益を2,260億円(前年比約2.7倍)に上方修正し、過去最高益を見込んでいます。東京エレクトロンも4〜12月期の連結経常利益が前年同期比65%増の5,213億円と大幅増益で、通期見通しも上方修正しました。
AI向けの先端半導体需要が検査装置やエッチング装置の受注を押し上げています。次世代の2nmクラス先端半導体の量産移行は2026年初旬と見込まれ、設備投資の拡大が今後も続く見通しです。
素材セクター:半導体材料が成長ドライバー
三井化学は2026年3月期の当期利益を前期比70.6%増の550億円と見込んでいます。半導体材料やメガネレンズ材料など成長分野が利益を押し上げる構図です。TOPPANホールディングスも、半導体製造装置向けフォトマスクやAIサーバー向けFC-BGA基板が堅調で、4〜12月期の営業利益は前年同期比34%増を記録しました。
データセンター関連:市場規模は2倍に拡大へ
国内データセンター市場は2022年の2兆938億円から、2027年には4兆1,862億円と約2倍に拡大する見通しです。年平均成長率は14.9%と高い成長が見込まれています。電力設備、空調、建設、通信インフラなど、データセンターの建設・運用に関わる幅広い業種に恩恵が波及しています。
注意点・今後の展望
AI一本足のリスク
好業績の裏側にはリスクもあります。半導体製造装置各社の「AI一本足」が強まっている点が懸念材料です。中国市場の減速や米インテル、韓国サムスン電子の不調もあり、AI以外の分野では投資に息切れ感が出始めています。
米関税の影響は限定的だが注意が必要
米国の関税強化の影響は現時点では限定的です。大企業の2025年度設備投資は前年比14.3%増と二桁成長を維持しています。ただし三井化学は関税による約80億円の減益影響を織り込んでおり、コマツは関税影響額を943億円と試算するなど、業種によっては無視できない規模です。
資本効率改革の継続
東京証券取引所が2023年に要請した「資本コストや株価を意識した経営」の取り組みが、企業の収益力底上げに寄与しています。配当性向の引き上げや自社株買い、政策保有株の売却など、ROE(自己資本利益率)改善に向けた施策が幅広い企業で進んでいます。
まとめ
上場企業の4〜12月期決算は、AI投資の恩恵が半導体からデータセンター、素材まで幅広い業種に波及した結果、7割が増益という好調な内容となりました。資本効率改革も企業の収益力を底上げしています。ただし、AI一本足のリスクや米関税の影響には引き続き注意が必要です。日本企業がAI時代の成長機会をどれだけ取り込めるかが、今後の業績を左右します。
参考資料:
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