衆院選で与野党が消費減税を競う、財源めぐる論争も
はじめに
2026年2月8日投開票が見込まれる衆議院選挙に向けて、与野党各党が消費税減税を公約に盛り込む検討を進めています。自民党は日本維新の会との連立合意を踏まえ、食料品の時限的な消費税ゼロを掲げる案があります。一方、新党「中道改革連合」は安全保障法制を「合憲」とする最終調整に入りました。
高市早苗首相は19日夕に記者会見し、解散の理由と訴える政策を説明する予定です。首相は23日召集の通常国会の冒頭で衆院解散に踏み切る方針で、戦後最短クラスの短期決戦となります。
本記事では、各党の消費税減税政策、新党の動向、そして財源をめぐる論争について詳しく解説します。
自民・維新の食品消費税ゼロ構想
連立合意に基づく政策
自民党と日本維新の会が2025年10月に交わした連立政権樹立の合意書には、「飲食料品については2年間に限り消費税の対象としないことも視野に法制化の検討を行う」と明記されています。これにより、食料品の消費税率を時限的にゼロにする政策が現実味を帯びてきました。
自民党の鈴木俊一幹事長は1月18日のNHK番組「日曜討論」で消費税減税に言及し、維新との連立合意書に触れて「誠実に実現していくのが基本的な立場だ」と強調しました。時限的な「食料品の消費税率ゼロ」を衆院選の公約に盛り込むことに前向きな姿勢を示しています。
維新の主張と条件
日本維新の会の藤田文武共同代表は1月17日、次期衆院選の公約に食料品の消費税率ゼロを盛り込む考えを示しました。「2年間に期間を限定したゼロは我が党がずっと言ってきた。強く訴えていきたい」と述べ、その理由として「物価高で家計が非常にいたんでいる」と説明しています。
同時に藤田代表は「無制限な減税は論外だ。市場から信認を得られない」と指摘し、期限を設ける必要があるとの認識を示しました。財政規律を維持しながら家計支援を行うという難しいバランスを求めています。
現金給付の中止
注目すべきは、自民と維新が物価高対策の現金給付を中止する方針を固めたことです。連立政権合意書では、自民党が2025年7月の参院選で掲げた物価高対策の現金給付を「行わない」と明記しています。代わりに、食料品の消費税率ゼロを物価高対策の柱として位置づけています。
新党「中道改革連合」の動向
立憲・公明による新党結成
2026年1月16日、立憲民主党と公明党の衆議院議員により新党「中道改革連合」が結成されました。略称は「中道」で、野田佳彦代表と斉藤鉄夫代表が共同で記者会見を行いました。
公明党は2025年10月、野党時代を含め26年間続いた自民党との自公連立政権を解消しており、今回の新党結成は政界再編の象徴的な出来事といえます。
安全保障法制を「合憲」に
新党「中道改革連合」は安全保障法制について「合憲」とする最終調整に入りました。19日に公表する基本政策の最終案によると、安保法制が定める存立危機事態での自国防衛のための自衛権行使は「合憲」と認める方針です。
これは旧立憲民主党の立場からすると大きな転換です。集団的自衛権の限定行使に道を開くことになり、安全保障政策における現実路線への転換と評価できます。
国民民主党は不参加
新党への参加を呼びかけられた国民民主党の玉木雄一郎代表は、1月15日に不参加の意向を表明しました。玉木代表は「もともと安全保障政策とか原子力政策で一致できなくて、我々はある意味別の道を歩き始めた」と説明しています。
また「選挙のたびに政策をころころ変えたり、理念が変わることから脱しようと、そういう古い政治から脱しようということで、2020年覚悟を決めて15人の仲間で今の国民民主党をつくった」と述べ、政策の一貫性を重視する姿勢を示しました。
「選挙互助会」批判
自民党の鈴木俊一幹事長は1月16日、新党について「基本政策が後回しになった選挙互助会のような組織だ」と批判しました。立憲民主党衆議院議員の原口一博も党執行部を批判し、新党に参加せず自身の政治団体を政党化する意向を示すなど、党内にも不満がくすぶっています。
消費税減税の財源問題
巨額の財源が必要
消費税は国の一般会計において最大の税収源です。令和6年度当初予算では、租税及び印紙収入約69.6兆円のうち消費税収が約23.8兆円(21.2%)を占めており、所得税や法人税を上回っています。
食料品の消費税率をゼロにした場合でも数兆円規模の減収が見込まれます。2年間の時限措置であっても、その財源をどう確保するかは大きな課題です。
国債増発のリスク
財源を国債増発で賄う場合、複数のリスクが指摘されています。
- 不安定な財源: 市場環境によっては国債が売れなくなる可能性がある
- インフレ懸念: 財政膨張がインフレを加速させるリスク
- 利払い費の増加: 金利上昇局面では財政負担が拡大
- 財政規律への信認低下: 格付機関が財政リスクを注視
日本の国債残高はすでに1000兆円を超えており、金融政策の転換もあって国債金利は上昇傾向にあります。財務省は2026年度の国債発行計画で超長期債の発行額を減らすとしており、金利上昇への警戒感が高まっています。
世論の反応
日本経済新聞社とテレビ東京の2025年5月の世論調査では、「赤字国債を発行してでも消費税減税」に賛成する人は38%にとどまり、財源なき減税に対する世論の慎重さがうかがえます。
一方で国民民主党の玉木雄一郎代表は、時限的な消費税率引き下げの財源について「ちゅうちょなく赤字国債を発行したらいい」と主張しており、各党の立場は分かれています。
高市首相の解散表明
19日夕に記者会見
高市早苗首相は19日夕、首相官邸で記者会見し、23日に召集する通常国会の冒頭で衆院を解散すると正式に表明する予定です。衆院選は「1月27日公示―2月8日投開票」の日程が見込まれており、解散から投開票までの期間は16日と戦後最短クラスの短期決戦になります。
首相は「自民と維新の政策合意の内容などをしっかり進めるにあたり国民の審判を得る必要がある」と説明しています。参院で与党が過半数を割り込む中、高い内閣支持率を追い風に衆院選に勝利し、政権基盤を強化したい考えです。
野党の批判
中道改革連合の斉藤鉄夫代表(旧公明党代表)は「国民生活をないがしろにした大義なき解散だ。2026年度予算案の年度内成立は与党にとって最大の仕事だ」と批判しています。通常国会冒頭の解散は1990年以来36年ぶりであり、予算審議を棚上げにする形となることへの反発が出ています。
注意点・今後の展望
減税の恩恵と副作用
食料品の消費税ゼロは、物価高に苦しむ家計を直接支援する効果があります。特に低所得層ほど消費支出に占める食料品の割合が高いため、逆進性の緩和にもつながります。
しかし、時限措置の終了後には消費税率が元に戻るため、その時点で再び家計負担が増加します。また、食料品の定義や軽減税率との整合性など、制度設計上の課題も残されています。
短期決戦の影響
今回の衆院選は解散から投開票まで16日という短期決戦となります。各党が掲げる消費税減税策の詳細や財源論について、十分な議論が行われないまま投票日を迎える可能性があります。
有権者としては、各党の公約を表面的な「減税額」だけでなく、財源の裏付けや持続可能性の観点からも検討することが重要です。
まとめ
2026年2月の衆議院選挙に向けて、与野党がそろって消費税減税を公約に掲げる異例の展開となっています。自民・維新連立は食料品の2年間消費税ゼロを検討し、新党・中道改革連合も家計への分配重視を打ち出しています。
一方で、巨額の財源確保や国債増発に伴うリスクについては、各党の説明が十分とはいえません。高市首相は19日夕の記者会見で解散の大義を説明する予定ですが、有権者は政策の詳細と財政への影響を冷静に見極める必要があります。
短期決戦となる今回の衆院選は、消費税政策と財政規律の両立という難題に各党がどう向き合うかを問う選挙となりそうです。
参考資料:
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