2026年衆院選の争点、与野党が消費税減税で競い合う理由
はじめに
2026年1月19日、高市早苗首相が衆議院解散を正式に表明する見通しです。1月23日召集の通常国会冒頭で解散に踏み切り、1月27日公示、2月8日投開票という日程が軸となっています。
この衆院選で最大の争点となりそうなのが「消費税減税」です。与党の自民党・日本維新の会連立政権だけでなく、立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」も食料品の消費税率ゼロを掲げる方針を示しています。
本記事では、各党の消費税政策の違いと、なぜ今このタイミングで減税論が急浮上しているのかを詳しく解説します。物価高に苦しむ家計への影響も含め、選挙の投票判断に役立つ情報をお届けします。
高市首相の解散戦略と高支持率の背景
なぜ通常国会冒頭での解散なのか
高市早苗首相が早期解散を決断した最大の理由は、内閣支持率の高さにあります。読売新聞の世論調査では、2025年10月の政権発足時に71%を記録し、12月時点でも73%と7割台を維持しています。
通常、政権発足から時間が経過するにつれて支持率は低下する傾向があります。野党の準備が整う前に選挙を行うことで、自民党の議席増を狙う戦略とみられています。また、衆院選に勝利すれば、政権基盤を強化した上で中長期的な政策に取り組めるというメリットもあります。
少数与党からの脱却を目指す
現在の自民党・日本維新の会連立政権は、衆院ではぎりぎり過半数を確保していますが、参院では6議席が不足する「少数与党」の状態です。この不安定な政権運営を解消するためにも、衆院選での大勝が必要とされています。
ただし、早期解散には課題もあります。2026年度予算案の審議が遅れることで、国民生活に影響が出る可能性があるためです。「高校無償化」の拡充や「年収の壁」引き上げなどの政策が、暫定予算での対応を余儀なくされる恐れがあります。
与党連立の食料品消費税ゼロ案
自民・維新の連立合意を振り返る
2025年10月に自民党と日本維新の会が署名した連立政権合意書では、「飲食料品について2年間に限り消費税の対象としないことも視野に、法制化を検討する」と明記されました。これは維新が以前から主張してきた政策です。
日本維新の会の藤田文武共同代表は2026年1月17日、次期衆院選の公約に食料品の消費税率ゼロを盛り込む考えを表明しました。「物価高で家計が非常にいたんでいる」として、2年間の時限措置を強く訴える方針です。
自民党内の慎重論と積極論
自民党の鈴木俊一幹事長は1月18日、時限的な「食料品の消費税率ゼロ」を衆院選公約に盛り込むことに前向きな姿勢を示しました。「連立合意に書かれたことを誠実に実現するのが基本的な立場だ」と述べています。
興味深いのは、高市首相自身の発言です。2025年11月の衆議院予算委員会で「恒久財源5兆円を自由に使えるとしたら何に使いたいか」と問われた際、「自民党に怒られるかもしれないが、今だったら食料品の消費税をずっとゼロにする」と本音を漏らしていました。
一方で、首相は2024年の自民党総裁選では「即効性がないと考えた」として消費減税に否定的な見解を示していた経緯もあり、政策転換の背景には選挙戦略も影響しているとみられます。
野党陣営の動き:新党「中道改革連合」の誕生
立憲民主党と公明党の歴史的合流
2026年1月15日、立憲民主党の野田佳彦代表と公明党の斉藤鉄夫代表が党首会談を行い、新党結成で合意しました。翌16日には共同記者会見で新党名「中道改革連合」(略称:中道)を発表しています。
野田代表は「高市政権の下で政治が右に傾く中、公明党が連立を解消したことは大きな転機だ。中道勢力が政治のど真ん中に位置づけられるチャンスが来ている」と語りました。
公明党の斉藤代表も「右傾化が進む政治状況のなか、中道主義の大きなかたまりをつくる」と呼応し、安全保障政策や憲法改正などで高市政権への対抗軸を打ち出す狙いを示しています。
中道改革連合の消費税政策
新党「中道改革連合」は、基本政策に物価高対策として食料品にかかる消費税率ゼロを盛り込む方向で調整しています。ただし、与党との差別化として「赤字国債に頼らない財源確保」を前提条件としている点が特徴です。
立憲民主党はもともと、2025年参院選で「食料品の消費税率を2026年4月から原則1年間ゼロにする」という公約を掲げていました。公明党との合流により、この政策がさらに現実味を帯びてきています。
国民民主党は不参加を表明
国民民主党の玉木雄一郎代表は、立憲民主党の安住淳幹事長から新党への参加を呼びかけられたことを明らかにしましたが、「そういった動きには与しない」として参加を辞退しました。
衆院選後の政界再編では、右派・左派双方に影響力を持つ国民民主党がキャスティングボートを握る可能性も指摘されています。
財源問題:年5兆円の減収をどう補うか
減税の規模と影響
食料品の消費税率をゼロにした場合、年間約5兆円規模の税収減が見込まれます。これは国の一般会計歳入の約4%に相当する大きな額です。
与党案では、選挙後に召集される特別国会に消費税減税を盛り込んだ税制改正案を提出し、早ければ2027年1月から減税を実施する案が浮上しています。2年間の時限措置とすることで、財政への影響を限定的に抑える狙いがあります。
各党の財源確保策の違い
財源の確保方法は各党で異なります。中道改革連合は「赤字国債に頼らない」姿勢を明確にしており、他の歳出削減や富裕層への課税強化などで財源を捻出する考えとみられます。
一方、与党側は具体的な財源について明確な説明を避けており、選挙後の議論に持ち越す可能性があります。財政規律を重視する声と、物価高対策を優先する声の間で、選挙後も議論が続くことが予想されます。
注意点・今後の展望
消費税減税の落とし穴
消費税減税は一見、家計への恩恵が大きいように見えますが、いくつかの注意点があります。
まず、軽減税率が適用されない外食や酒類は対象外となる可能性があります。また、時限措置の場合、期限切れ後に税率が戻ることへの心理的抵抗から、駆け込み需要と反動減が発生するリスクもあります。
さらに、消費税は社会保障財源として位置づけられているため、減税が年金や医療制度に与える影響についても慎重な検討が必要です。
選挙後の政局シナリオ
2月8日の投開票後、いくつかのシナリオが考えられます。自民・維新連立が大勝した場合、食料品消費税ゼロは実現に向けて動き出すでしょう。しかし、中道改革連合が善戦した場合、政策の優先順位や財源の確保方法をめぐって与野党間の駆け引きが激化する可能性があります。
いずれにせよ、消費税減税という方向性自体は与野党で一致しており、実施時期や範囲、財源の議論が選挙後の焦点となりそうです。
まとめ
2026年衆院選は、与野党ともに消費税減税を公約に掲げる異例の選挙戦となります。高市首相率いる自民・維新連立は食料品の時限的消費税ゼロを検討し、新党「中道改革連合」も同様の政策を打ち出しています。
有権者にとっては、単に減税の有無だけでなく、実施時期、期間、財源確保の方法まで含めて各党の政策を比較検討することが重要です。2月8日の投票日に向けて、各党の具体的な公約発表に注目していきましょう。
参考資料:
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