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by nicoxz

JR東日本とJAL包括提携:鉄道×航空で地方誘客

by nicoxz
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はじめに

JR東日本と日本航空(JAL)が、旅客分野で包括提携することが明らかになりました。両社は旅行商品の共同開発や、鉄道と航空のチケット一体化を目指します。

日本人旅行者が減少傾向にある中、これまで旅客輸送で競い合ってきた両社が協業に転じることになります。特にインバウンド(訪日外国人)客向けの移動利便性を高め、観光の国際競争力を底上げする狙いがあります。

本記事では、提携の背景や具体的な協業内容、そして日本の観光産業への影響を解説します。

提携の概要と検討体制

役員参加の検討組織を発足

両社は提携に向け、それぞれの役員が参加する検討組織を発足させました。100以上のテーマで協業の可能性を探るとされています。

鉄道会社と航空会社がここまで本格的に協業を検討するのは、日本では珍しい取り組みです。「空」と「陸」の移動を担う両社が垣根を越えることで、利用者にとってより便利な移動環境が実現する可能性があります。

第一弾は地方創生

協業の第一弾として、地方創生に関連する取り組みが予定されています。訪日外国人客を東京や大阪といった大都市だけでなく、地方へ誘導することが主眼となります。

日本の観光業界では、オーバーツーリズム(観光公害)が深刻化する一方、地方の観光地は集客に苦戦しています。鉄道と航空のネットワークを組み合わせることで、この課題解決に貢献することが期待されます。

チケット一体化の構想

航空便と鉄道の「コードシェア」

最も注目されるのが、鉄道と航空のチケット一体化構想です。利用者が1回の予約で航空便と鉄道移動を完結できるようにする計画で、2029年度以降の導入を目指すとされています。

これは、航空会社同士で行われている「コードシェア」に近い形になると見られます。航空便の予約をする際に、目的地として鉄道の駅を設定できるようなイメージです。

海外の先行事例:フランス「TGV Air」

実は海外では、このような鉄道と航空の連携サービスがすでに存在します。フランスの「TGV Air」がその代表例です。

フランス国鉄(SNCF)と各航空会社が提携し、利用者はパリまでの航空券に加え、シャルル・ド・ゴール空港から地方のSNCF駅までのTGV(高速鉄道)チケットを一体的に購入できます。

このサービスでは、航空便と列車の接続が保証され、どちらかが遅延した場合は次便への振り替えが可能です。さらに、列車区間もマイルの積算対象となります。

JR東日本とJALの提携も、このような形を目指している可能性があります。

これまでの協業実績

MaaS分野での連携(2021年〜)

実は、JR東日本とJALの協業は今回が初めてではありません。2021年には、MaaS(Mobility as a Service)の推進・社会実装に向けた連携が発表されています。

出発地から目的地までをシームレスに移動できる社会の実現を目指し、両社は垣根を越えた取り組みを進めてきました。今回の包括提携は、この流れを大きく発展させるものといえます。

JAL MaaSとえきねっとの連携(2025年〜)

2025年9月には、JALの「JAL MaaS」とJR東日本の「えきねっと」が連携を開始しました。JALの自社サイトからJR東日本の新幹線などのチケットを予約購入できるようになっています。

これにより、航空機と新幹線の乗り継ぎがしやすくなり、利便性が向上しました。JAL MaaSはこれまでに東京メトロや京浜急行電鉄など66社と連携していますが、JR東日本との連携は今回が初めてでした。

貨物分野の協業「JAL de はこビュン」

旅客だけでなく、貨物分野でも協業が進んでいます。2026年1月13日には、新輸送サービス「JAL de はこビュン」の販売が開始されました。

これは、JR東日本グループの列車荷物輸送サービス「はこビュン」と、JALグループの国際線航空貨物輸送を組み合わせたサービスです。新幹線の高頻度・定時性と航空便の長距離高速輸送を組み合わせ、地方の特産品を海外へ迅速に届けることができます。

商品化第一弾として、福井県の「越前がに」をはじめとした水産品を台湾まで輸送し、「ホテルメトロポリタン プレミア 台北」で福井県の食のPRを実施しています。

提携の背景:変わる旅行市場

日本人旅行者の減少

両社が協業に踏み切る背景には、日本人旅行者の減少があります。少子高齢化や可処分所得の伸び悩みにより、国内旅行市場は縮小傾向にあります。

従来は競合として市場を奪い合ってきた両社ですが、市場全体が縮小する中では協業によるパイの拡大が合理的な選択となります。

インバウンド需要の高まり

一方で、インバウンド市場は急成長を続けています。円安の追い風もあり、訪日外国人数は過去最高水準で推移しています。

このインバウンド需要を取り込むためには、外国人旅行者にとって使いやすいサービス設計が不可欠です。航空便と鉄道のチケットを一体的に購入できれば、日本旅行のハードルは大きく下がります。

地方誘客の課題

訪日外国人の多くは、東京・大阪・京都といった「ゴールデンルート」に集中しています。これらの地域ではオーバーツーリズムが問題化する一方、地方の観光地は恩恵を十分に受けられていません。

JR東日本は東日本エリアに広大な鉄道ネットワークを持ち、JALは国内外に航空路線を展開しています。両社のネットワークを組み合わせることで、外国人旅行者を地方へ誘導しやすくなります。

注意点と今後の展望

実現までの課題

チケット一体化の実現には、システム連携や運賃精算の仕組みなど、クリアすべき課題が多くあります。特に、遅延時の補償や接続保証をどこまで行うかは重要なポイントです。

フランスのTGV Airでは接続保証があり、遅延時の振り替えが可能ですが、同様のサービスを日本で実現するには相応の準備期間が必要です。2029年度以降という目標は、決して余裕のあるスケジュールではありません。

競合他社への影響

JR東日本とJALの提携が成功すれば、他の鉄道会社や航空会社も追随する可能性があります。JR西日本とANA、JR九州とスカイマークなど、さまざまな組み合わせが考えられます。

日本の交通業界全体で、モーダル連携(異なる交通手段間の連携)が進む契機となるかもしれません。

観光立国への貢献

日本政府は観光立国を掲げ、インバウンド拡大を推進しています。鉄道と航空の連携強化は、この政策目標に沿った動きです。

移動の利便性向上は、日本の観光競争力を高める重要な要素です。今回の提携が成功モデルとなれば、日本の観光産業全体の発展に寄与することが期待されます。

まとめ

JR東日本とJALの包括提携は、日本の交通業界にとって画期的な動きです。これまで競合してきた両社が協業し、チケット一体化や旅行商品の共同開発を目指します。

インバウンド客の地方誘致を主眼に、100以上のテーマで協業を検討していく予定です。実現すれば、訪日外国人にとって日本国内の移動がより便利になり、地方観光の活性化にもつながります。

2029年度以降のチケット一体化に向けて、今後の具体的な進展に注目が集まります。

参考資料:

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