衆院選2026神奈川10区、タワマン住民の浮動票争奪戦の行方
はじめに
2026年2月8日投開票の衆院選で、神奈川10区(川崎市川崎区・幸区)が注目を集めています。この選挙区は、連立を組む自民党と日本維新の会の前職同士が激突する、県内唯一の「与党対決」選挙区です。
川崎市はタワーマンションの建設ラッシュにより人口が増え続けており、2024年には155万人を突破しました。JR川崎駅周辺や武蔵小杉には、東京への通勤者が多く住む「神奈川都民」と呼ばれる層が集まっています。
こうした浮動票をいかに取り込むかが勝敗を左右します。本記事では、神奈川10区の選挙区事情と各候補者の戦略を詳しく解説します。
神奈川10区の選挙区特性
タワマン林立で人口増続く川崎市
日本の多くの市町村が人口減少に苦しむ中、川崎市は例外的に人口増加を続けています。2024年には市制100周年を迎え、人口は155万人を突破しました。
人口増をけん引しているのが、市内各所に建設が相次ぐタワーマンションです。タワマンは1棟完成すると人口が500〜1,000人単位で増加するため、街の様相が急速に変わっています。
特に武蔵小杉駅周辺は象徴的です。かつて「工場の街」だった駅前は、2002年からの再開発で2008年に初のタワーマンションが誕生。現在は100戸を超えるタワマンが計画含め15棟以上あり、世帯数は5,000を超えています。
「神奈川都民」が多い選挙区
川崎市の特徴は、東京との結びつきの強さです。2020年の統計によると、東京都へ通勤・通学する15歳以上就業者・通学者の割合は42.3%に達します。横浜市よりも東京志向が強く、「神奈川都民(川崎都民)」と呼ばれる層が非常に多いのです。
昼夜間人口比率は87.3で、政令指定都市でありながら東京のベッドタウンとしての性格が強いことを示しています。武蔵小杉駅からは相互直通を含めて13路線・292駅にアクセス可能で、都心への通勤利便性は抜群です。
平均年齢40代半ばの現役世代が中心
タワマンに住む層は、30代〜40代の働き盛り世代が中心です。共働きで子育て中の家庭も多く、生活コストや教育環境に関心が高いとされます。
一方で、地元との結びつきは比較的薄く、町内会や地域活動への参加率は低い傾向があります。こうした特性から、支持政党を持たない「浮動票」が多い選挙区と見られています。
与党同士が激突する異例の構図
自民・田中和徳氏(10期)の戦略
自民党から出馬するのは、10期のベテラン田中和徳氏(神奈川県連会長)です。復興大臣、環境副大臣、財務副大臣などを歴任し、長年この選挙区を守ってきました。
田中氏は地元での活動を重視し、JR川崎駅での朝の街頭活動を続けています。10期で築いた人脈と経験を強みに、「地元で顔の見える政治家」として活動してきたことをアピールしています。
維新の金村氏と与党同士で戦うことについて、田中氏は「与党といっても(従来と)それほど構図は変わらないのではないか」と冷静に受け止めています。初めて与党として衆院選に挑む維新に対し、「それほど気にはしていない」との姿勢を見せています。
維新・金村龍那氏の挑戦
日本維新の会からは、金村龍那氏が出馬します。1979年生まれの金村氏は、城島光力元財務大臣の秘書や児童発達支援施設代表を経て政界入り。2021年の衆院選で初当選し、2024年の選挙では田中氏に約6,000票差まで迫りました。
過去2回続けて小選挙区で敗れ比例復活で当選してきた金村氏にとって、今回は「3度目の正直」です。「自民の古い政治と呼ばれている部分に対して、維新のアイデンティティーや価値観を主張していきたい」と意気込んでいます。
金村氏は「安定を選びたいなら自民。改革を前に進めてほしいなら維新」と、有権者に選択を迫る戦略を取っています。
その他の候補者
国民民主党の山口翔平氏(新人)、共産党の中野智裕氏(新人)、参政党の橋本公夫氏(新人)も出馬を予定しており、計5人の争いとなる見込みです。
中道改革連合(立憲民主党と公明党による新党)は、神奈川10区での候補擁立を見送っており、この選挙区では与党同士の対決が主軸となります。
浮動票を巡る各党の政策アピール
減税実績を強調する与党
自民党は、電気・ガス代の補助や給付金など、これまでの物価高対策の実績をアピールしています。消費税については、日本維新の会との連立合意で「2年間限定で食料品の消費税ゼロ」を視野に入れた法制化を検討するとしており、具体的な減税策を打ち出しています。
維新は「改革政党」としてのアイデンティティを前面に出し、自民党との違いを強調。藤田文武共同代表は「無制限な減税は論外だ。市場から信認を得られない」と指摘し、財政規律を重視する姿勢も示しています。
社会保険料への関心
消費税だけでなく、社会保険料の負担も選挙の争点として浮上しています。健康保険や年金の保険料は給料から天引きされるため負担増に気づきにくく、「隠れ増税」とも呼ばれています。
タワマンに住む30代〜40代の現役世代にとって、社会保険料の負担は切実な問題です。各党がこの層にどうアピールするかが、浮動票の行方を左右する可能性があります。
国民民主党の玉木代表は「後期高齢者医療制度への拠出金にメスをいれないと若い人の保険料負担は減らない」と主張。現役世代への負担軽減を訴えています。
選挙の見どころと今後の展望
与党対決の行方
神奈川10区は、自民党と維新が連立を組みながら同じ選挙区で戦うという、全国的にも珍しい構図となっています。神奈川県内では6選挙区で同様の与党対決が予定されており、その中でも神奈川10区は「最注目区」と言われています。
過去2回の選挙では田中氏が小選挙区で勝利してきましたが、その差は縮まってきています。今回、維新が初めて与党として臨む選挙で、どのような結果が出るか注目されます。
浮動票の行方
タワマン住民を中心とする浮動票層は、政策の中身で投票先を決める傾向があります。物価高対策や社会保険料の負担軽減など、生活に直結するテーマでの各候補者のアピールが鍵を握るでしょう。
また、「安定の自民」か「改革の維新」かという選択肢の提示が、有権者にどう響くかも注目ポイントです。
投票率への影響
1月27日公示、2月8日投開票という真冬の選挙日程は、36年ぶりの異例のスケジュールです。寒さや天候が投票率に影響を与える可能性があり、浮動票層の動向が読みにくくなっています。
まとめ
神奈川10区は、タワマン開発で人口が増え続ける川崎市の特性と、与党同士が激突する異例の構図が重なり、2026年衆院選で最も注目される選挙区の一つとなっています。
東京への通勤者が多い「神奈川都民」と呼ばれる浮動票層を、10期の実績を持つ田中氏(自民)と、改革を訴える金村氏(維新)がどう取り込むか。減税や社会保険料など、現役世代に響く政策アピールの成否が勝敗を分けそうです。
有権者にとっては、同じ与党でも政治姿勢が異なる候補者から選べる貴重な機会です。各候補者の政策をよく比較し、投票先を決めることが重要です。
参考資料:
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