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by nicoxz

川崎重工、発電エンジン・タービン全機種を水素対応へ

by nicoxz
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はじめに

川崎重工業が2030年までに、非常用を除く発電用エンジンとガスタービンの全機種を水素燃料に対応させることを明らかにしました。100%の水素を使えるようにシステムを変更し、天然ガスに自由な割合で混ぜられるようにします。

顧客が水素の利用量を調整できる仕組みとして提案することで、水素の普及を後押しする狙いです。出力別で約10機種ある発電用のレシプロエンジンやガスタービンを、2030年までに順次刷新していきます。

この記事では、川崎重工の水素発電技術、その特徴と意義、そして日本の水素エネルギー政策との関連について解説します。

川崎重工の水素対応計画

全機種の水素燃料対応

川崎重工は、出力5〜8メガワット級のレシプロエンジンや、1,500〜30,000キロワット級の中小型ガスタービンなど、約10機種の発電用設備を展開しています。これらの機種を2030年までに順次、水素燃料に対応させていく計画です。

最大の特徴は、100%水素による稼働を可能にする点です。従来の天然ガス焚き発電設備を、本体の大規模な改造なしに水素混焼へ移行でき、さらに水素の割合を顧客のニーズに応じて自由に調整できるようになります。

混焼から専焼へのロードマップ

川崎重工は段階的に水素対応を進めています。

現在までの実績:

  • 2023年度:ガスタービン全機種で水素30%混焼対応を完了
  • 2025年9月:水素30%混焼可能な大型ガスエンジンを世界初で販売開始

今後の計画:

  • 2026年度:30メガワット級ガスタービンで水素100%発電実証(ドイツ)
  • 2030年頃:大型機種の水素専焼技術を商品化

既設の発電所であっても、水素混焼率が30%までなら小規模な改造で対応可能とのことです。

技術的な特徴

DLE燃焼器の採用

川崎重工は、窒素酸化物(NOx)の排出量を抑えられるDLE(ドライ・ローエミッション)燃焼器を搭載した製品を展開しています。

DLE燃焼器を搭載した天然ガス焚きガスタービンは、全ての機種でガスタービン本体を改造することなく水素混焼に対応できます。これにより、既存のインフラを活用しながら脱炭素化を進められます。

マイクロミックス型燃焼器の開発

混焼率のさらなる向上や専焼に向けては、新たな「マイクロミックス型」燃焼器の開発を進めています。

この方式は、シャープペンシルの芯ほどの小さなノズルから燃料を小分けに噴出して燃焼させるもので、NOx発生量の抑制と発電効率の向上を両立させることができます。

大型ガスエンジンの100%水素燃焼

川崎重工は2024年10月、5メガワット以上の大型ガスエンジンにおける水素100%燃焼技術の開発を発表しました。天然ガスを燃料とした場合と同じ出力を維持したまま、安定した運転が可能であることを確認しています。

2030年頃の商品化を目指して、製品実装への最適化と設計を進めています。

グローバル展開

欧州市場への進出

川崎重工は欧州で水素タービン市場の開拓を進めており、2030年に欧州市場で2割のシェアを目指しています。

2023年11月からドイツでの実証研究を開始し、水素燃焼対応可能な30メガワット級ガスタービン発電設備「L30A」の設計・製造を進めています。2026年度中に水素と天然ガスの混焼、および水素100%による発電実証運転を開始する予定です。

ベルギーでの実績

2024年2月には、ベルギーでガスタービンコージェネレーションシステムの水素混焼改造工事を完了し、営業運転を開始しました。欧州での実績を着実に積み上げています。

日本の水素エネルギー政策との関連

2050年カーボンニュートラル

日本は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。2030年度の温室効果ガス排出量を2013年度比46%削減し、さらに50%の高みに挑戦することを目標としています。

この目標達成において、水素は鍵となるエネルギー源と位置づけられています。多様な資源から製造でき、再生可能エネルギーによる水の電気分解や、化石燃料とCO2の貯留・再利用技術を組み合わせることで、カーボンフリーなエネルギーとして活用できます。

2030年の水素・アンモニア発電目標

政府は2030年度の発電量のうち1%を水素・アンモニア由来とすることを目指しています。火力発電については、安定供給を確保しつつ、燃料を水素・アンモニアに転換させることで脱炭素化を図る方針です。

川崎重工の取り組みは、この政策目標の実現に直接貢献するものといえます。

第7次エネルギー基本計画

2025年2月に発表された「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度のエネルギーミックスとして、再エネ4〜5割程度、原子力2割程度、火力3〜4割程度の見通しが示されています。

火力発電の脱炭素化には、水素・アンモニアへの燃料転換が欠かせません。川崎重工のような機器メーカーの技術開発が、この転換を支える重要な役割を担っています。

導入のメリットと課題

メリット

段階的な移行が可能: 既存の発電設備を活用しながら、水素の混焼率を徐々に高められます。初期投資を抑えつつ脱炭素化を進められる点が大きな利点です。

燃料調達の柔軟性: 天然ガスと水素を自由な割合で混合できるため、水素の供給状況や価格に応じて燃料構成を調整できます。

技術的な信頼性: 川崎重工は長年の発電設備製造の実績があり、既存技術をベースとした水素対応により信頼性を確保しています。

課題

水素の供給インフラ: 水素発電の普及には、安定した水素供給インフラの整備が不可欠です。製造、輸送、貯蔵のサプライチェーン全体での最適化が求められます。

コスト: 現時点では水素のコストは天然ガスより高く、経済性の改善が普及の鍵となります。

グリーン水素の確保: 現在の水素の多くは化石燃料から製造される「グレー水素」です。真の脱炭素化には、再生可能エネルギーで製造する「グリーン水素」の拡大が必要です。

まとめ

川崎重工が発電用エンジンとガスタービンの全機種を水素対応させる計画は、日本の2050年カーボンニュートラル実現に向けた重要な一歩です。

100%水素での稼働から、天然ガスとの自由な混合まで対応できる柔軟性は、水素普及の過渡期において大きな価値があります。顧客は水素の供給状況に応じて燃料構成を調整でき、段階的な脱炭素化を進められます。

欧州市場での2割シェア獲得を目指すなど、グローバル展開も視野に入れた川崎重工の取り組みは、日本の脱炭素技術の国際競争力向上にも貢献するものと期待されます。

参考資料:

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