Jパワー社長に加藤氏、脱炭素と経営若返りへ
はじめに
電源開発(Jパワー)は2026年1月30日、加藤英彰取締役常務執行役員(59歳)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表しました。菅野等社長(64歳)が健康上の理由で辞任を申し入れたことを受けた人事です。
Jパワーは日本の電力供給を支える主要企業であり、水力発電と石炭火力をそれぞれ900万kW超保有しています。カーボンニュートラル実現に向けた大きな転換期にある同社の経営を、新社長がどのように舵取りするのかに注目が集まっています。
新社長・加藤英彰氏の人物像
経営企画畑の経験豊富なリーダー
加藤英彰氏は1989年にJパワーに入社しました。社長秘書や原子力業務部長、経営企画部長などの要職を歴任し、2024年6月に取締役・常務執行役員に就任しています。
経営企画部門での経験が長い加藤氏は、同社のカーボンニュートラルに向けた行動計画「J-POWER BLUE MISSION 2050」や中期経営計画の策定に深く関わってきました。記者会見では「柔軟に変化に対応し、次の世代に向けての成長を図っていきたい」と抱負を述べています。
菅野社長の退任と経営の若返り
菅野等氏は2023年6月に社長に就任しましたが、就任から約3年での退任となります。健康上の理由による辞任であり、退任後は特別顧問に就く予定です。59歳の加藤氏への交代により、経営の若返りを図る狙いもあります。
Jパワーが直面する経営課題
石炭火力からの転換
Jパワーにとって最大の経営課題は、基幹電源である石炭火力発電の脱炭素化です。同社は900万kWを超える石炭火力発電所を保有しており、これをいかに脱炭素電源に転換するかが問われています。
具体的な取り組みとしては、松島火力発電所(長崎県)の2基を2024年度末に休廃止し、うち1基を水素を活用した仕組みに改造する計画が進行中です。また、CO2を回収して地下に埋める「CCS(Carbon Capture and Storage)」事業をENEOSホールディングス、JX石油開発と共同で2030年度までに開始する計画もあります。
石炭火力の代替としては、CCUS(CO2の回収・利用・貯留)の導入や、水素・アンモニアへの燃料転換などが選択肢として検討されています。
大間原発の行方
加藤新社長は記者会見で、建設中の大間原子力発電所(青森県)について重要な発言を行いました。2030年度の運転開始目標について「極めて難しい状況にある」と率直に認め、改めて新たな開始目標を公表する考えを示しています。
大間原発はフルMOX燃料(ウラン・プルトニウム混合酸化物燃料のみ)を使用する世界初の商用炉として計画されたものです。2008年に着工しましたが、2011年の東日本大震災後に工事が中断し、新規制基準への適合審査も長期化しています。完成すれば出力138.3万kWの大型原発となりますが、建設の遅延は同社の経営戦略にも影響を及ぼしています。
再生可能エネルギーの拡大
Jパワーは「BLUE MISSION 2050」のもと、再生可能エネルギーの拡大にも取り組んでいます。国内では水力発電を基盤としつつ、海外では洋上風力発電への投資を進めています。
英国では北海の「トライトン・ノール洋上風力発電所」に25%の持ち分で参画し、9,500kWの風車90基、総発電容量85.7万kWの大規模発電所が2022年4月に営業運転を開始しました。CO2フリー水素の製造・利用技術の開発にも注力しており、脱炭素社会の実現に向けた多角的なアプローチを展開しています。
株主との関係
Jパワーは英国の投資ファンドTCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント・ファンド)との関係でも注目されてきました。TCIは過去に期末配当に関する提案や社長解任の株主提案を行い、定時株主総会では否決されたものの、経営に対する外部からの圧力は継続しています。新社長のもとでの株主対応も重要な課題です。
注意点・展望
加藤新社長は、脱炭素の推進と安定供給の両立という難しい舵取りを求められます。石炭火力に大きく依存する同社の収益構造を維持しながら、段階的にクリーンエネルギーへ転換していく戦略が必要です。
大間原発については、新たな運転開始目標の公表が待たれますが、規制審査の状況次第では大幅な遅延も予想されます。完成の見通しが立たない場合、同社のエネルギーポートフォリオ戦略の見直しを迫られる可能性もあります。
また、世界的な脱炭素の潮流の中で、CCSや水素活用など新技術への投資判断が経営を左右するでしょう。加藤氏の経営企画部門での豊富な経験が、こうした戦略的判断にどう生かされるかが注目されます。
まとめ
Jパワーの社長交代は、日本のエネルギー業界が大きな転換期を迎えていることを象徴しています。加藤新社長には、石炭火力からの脱却、大間原発の行方、再生可能エネルギーの拡大、そして株主との対話など、多くの課題が待ち受けています。
経営企画部門で培った戦略的視点を持つ加藤氏が、Jパワーの脱炭素経営をどのように推進するのか。日本のエネルギー政策にも影響を与えうる同社の動向に、引き続き注目が必要です。
参考資料:
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