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by nicoxz

公務員共済が国内債券比率を2割に抑制、金利上昇の新たな圧力に

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はじめに

国家公務員の年金資産を運用する国家公務員共済組合連合会(KKR)が、国内債券の保有比率を大幅に引き下げていることが明らかになりました。2025年末時点の国内債券保有比率は19%と、基準とする25%を6ポイントも下回る水準です。背景には、インフレの定着観測に伴う金利上昇(債券価格の下落)があり、KKRは意図的に国内債券への投資を手控えています。年金基金のような大口の買い手が国内債券から距離を置く動きは、金利上昇をさらに加速させる要因となりかねません。日本の債券市場における構造的な変化を読み解きます。

KKRの運用方針転換と国内債券比率の引き下げ

KKRとは何か

KKR(国家公務員共済組合連合会)は、国家公務員が加入する共済組合の連合組織です。年金の管理・運用のほか、医療施設の運営や福利厚生事業なども手がけています。年金積立金の運用資産は数兆円規模にのぼり、日本の機関投資家の中でも存在感のある運用主体の一つです。

KKRの年金運用は、厚生年金保険法に基づく「モデルポートフォリオ」に準拠しています。このモデルポートフォリオは、世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や地方公務員共済組合連合会、私立学校教職員共済などと共通の枠組みで策定されています。現在の基本構成割合は、国内債券25%、国内株式25%、外国債券25%、外国株式25%の4資産均等配分です。

基準を大きく下回る国内債券比率

注目すべきは、KKRが2025年末時点で国内債券の保有比率を19%にまで引き下げた点です。基準の25%に対して許容される乖離幅は上下15ポイントですから、19%は許容範囲内ではあるものの、基準を6ポイント下回るアンダーウエイトの状態です。これは金利上昇局面において国内債券を保有し続けることで生じる評価損を回避するための判断と考えられます。

実際に、GPIFが公表した2025年度第3四半期(2025年10月〜12月)の運用状況によれば、国内債券のリターンはマイナス2.07%でした。日本銀行が2025年12月に追加利上げを実施し、政策金利を0.75%に引き上げたことが長期金利の上昇を後押しし、債券価格の下落を招いたためです。KKRとしても同様の環境下で損失拡大を抑えるべく、国内債券への配分を抑制する判断に至ったと見られます。

インフレ観測が運用判断を左右

日本では長年デフレが続いてきましたが、2022年以降はインフレが定着しつつあります。消費者物価指数は前年比2%を超える水準で推移しており、日銀もインフレ目標の持続的達成に自信を深めています。このインフレ環境の変化が、年金基金の運用判断に根本的な影響を与えています。

インフレが続く限り、日銀は金融緩和を縮小し、金利は上昇方向に向かいます。金利が上がれば既存の債券価格は下落するため、国内債券を大量に保有するリスクが高まります。KKRの国内債券比率引き下げは、こうしたマクロ経済環境の変化に対応した合理的な判断といえます。

日本の債券市場を取り巻く構造変化

日銀の国債買入れ減額が進行

日本の債券市場では、最大の買い手であった日本銀行が保有量の縮小を進めています。日銀は2024年7月に長期国債買入れの減額計画を決定しました。具体的には、月間の買入れ額を原則として四半期ごとに4,000億円ずつ減額し、2026年1〜3月には月3兆円程度とする方針です。さらに2026年4月以降は、減額幅を四半期ごとに2,000億円とし、2027年1〜3月には月2兆円程度まで縮小する計画が示されています。

日銀の国債保有残高が減少するということは、市場における最大の安定的な買い手が後退することを意味します。2025年以降、長期金利の指標となる10年物国債利回りは上昇基調を強め、2022年末の0.42%から2025年末には2.07%まで上昇しました。2026年1月には一時2.36%と、約27年ぶりの高水準に到達しています。

年金マネーの「債券離れ」が拡大

日銀だけでなく、年金基金による国内債券の購入意欲も後退しています。KKRの事例はその象徴ですが、GPIFも2014年の基本ポートフォリオ見直しで国内債券の比率を大幅に引き下げた経緯があります。かつて60%を占めていた国内債券比率は、2020年の見直しで現在の25%にまで低下しました。

また、もう一つの大口買い手である生命保険会社も、超長期国債への購入意欲が弱まっています。2025年度決算から全ての生保会社に適用される新たな健全性規制(経済価値ベースのソルベンシー規制)への対応が影響しているとされ、2025年12月には生損保が超長期国債を売り越す動きが見られました。

さらに、銀行セクターも超長期国債の主要な買い手とはいえない状況です。地方銀行を含め、2025年12月には10年未満の国債を大幅に売り越しています。結果として、超長期国債の主な買い手は海外投資家に集中しつつあり、12月には海外勢が超長期債を約1.2兆円買い越すなど、外国人投資家への依存度が高まっています。

需給バランスの変化がもたらす金利上昇圧力

こうした構造変化は、日本国債の需給バランスを根本的に変えつつあります。財政拡張によって国債の発行量が増加する一方で、日銀・年金基金・生保・銀行といった伝統的な買い手が軒並み後退しているためです。ニッセイ基礎研究所のレポートでは、「国債増発と日銀の保有減少分を主に銀行や海外投資家が引き受けてきたが、安定消化の観点からは過度な依存にはリスクがある」と指摘されています。

ピクテ・ジャパンの分析でも、2026年1月の利回り急上昇は、日銀の金融政策正常化と財政拡張への警戒感が重なった結果であると説明されています。30年物国債利回りは一時3.87%と1999年の発行開始以来の最高水準を記録しました。

注意点・今後の展望

KKRの国内債券比率引き下げは、一機関投資家の判断にとどまらず、日本の債券市場全体の構造変化を映し出しています。年金基金が国内債券を積極的に購入しなくなれば、国債の安定消化が難しくなり、金利上昇が加速するリスクがあります。金利上昇は政府の利払い費増大を通じて財政をさらに圧迫し、それがまた金利上昇期待を強めるという悪循環に陥る可能性もあります。

一方で、金利が十分に上昇すれば、国内債券の投資妙味が回復する局面も訪れるでしょう。ブルームバーグの報道によれば、10年物国債利回りが3%を超えた場合、GPIFが国内債券の配分比率を引き上げるとの観測もあります。年金基金が「買い手」として市場に復帰する水準がどこにあるのかが、今後の重要な注目点です。

また、2026年2月には長期金利が一時的に低下し、10年物国債利回りが2.1%台まで下がる場面もありました。米国の貿易政策を巡る不透明感から安全資産としての債券需要が高まったことや、インフレ率の鈍化が背景です。金利の方向性は必ずしも一方通行ではなく、マクロ経済の変動に応じて柔軟に変わり得る点にも留意が必要です。

まとめ

KKRが国内債券の保有比率を基準の25%から19%に引き下げた背景には、インフレ定着と金利上昇という日本経済の構造的変化があります。日銀の国債買入れ減額、生保の健全性規制対応、銀行の超長期債売り越しなど、複数の要因が重なり、日本国債市場の買い手構造は大きく変容しつつあります。年金マネーの「債券離れ」は金利上昇を加速させる要因となる一方、金利水準が十分に魅力的になれば買い手として復帰する可能性もあります。日本の金利環境が歴史的な転換期を迎えるなか、年金基金の運用動向は債券市場の行方を左右する重要な指標として注視されます。

参考資料

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