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by nicoxz

40年国債利回り4%突破、海外投資家依存が招く金利急騰リスク

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はじめに

2026年1月20日、日本の40年物国債利回りが史上初めて4%の大台を突破しました。2007年の40年債発行開始以来、最高水準となるこの数字は、日本の債券市場が歴史的な転換点を迎えていることを示しています。

背景には、高市早苗首相が打ち出した食料品消費税の一時撤廃構想に対する財政懸念があります。与野党そろって消費税減税を公約に掲げる衆院選を控え、市場は日本の財政規律への不安を強めています。

さらに深刻なのは、超長期国債の買い手構造の変化です。従来、安定的な保有者だった生命保険会社や年金基金が購入を控える中、海外投資家のシェアが初めて過半を超えました。短期売買を主体とする海外勢への依存度上昇は、金利の急変動リスクを高めています。

40年国債利回り4%突破の衝撃

歴史的な高水準に到達

40年物国債利回りは1月20日、一時4.213%まで上昇し、2007年の発行開始以来の最高値を更新しました。この水準は、30年以上ぶりにあらゆる年限の国債利回りが4%を超えたことを意味します。

利回り上昇は超長期債にとどまりません。10年物国債利回りも2.38%と1999年以来の高水準に達し、20年物は3.47%まで急上昇しました。高市政権発足後の約3か月で、20年債と40年債の利回りは約80ベーシスポイント(0.8%)も上昇しています。

財務省入札の低調が示す需要不足

財務省が1月20日に実施した超長期国債の入札は需要が低調でした。機関投資家の買い意欲が弱まっていることが改めて浮き彫りになり、これが利回り上昇に拍車をかけました。

入札の不調は一時的な現象ではありません。2025年を通じて超長期債の入札は低調が続き、財務省は2026年度の発行計画で超長期債を全年限で減額する対応を迫られました。発行総額は17兆4000億円と前年度比7兆2000億円の減少で、2009年以来の低水準となっています。

海外投資家依存の構造的リスク

超長期債の買い手が過半を占める海外勢

日本証券業協会の統計によると、2025年通年で超長期国債の買い付け額において海外投資家が初めて過半を占めました。月次の国債売買全体でも、海外勢のシェアは約65%に達しています。

従来、超長期国債の主な買い手は国内の生命保険会社と年金基金でした。30年や40年という長い償還期限は、同様に長期の負債を持つ生保・年金のニーズに合致していたからです。しかし、その構図が大きく変わりつつあります。

生保・年金が買い控える背景

生命保険会社が超長期債の購入を抑制している主な理由は、新しい資本規制への対応です。2025年に施行された「経済価値ベースのソルベンシー規制(ESR)」により、保険会社は資産と負債の年限差(デュレーションギャップ)を縮めることが求められています。

日本経済新聞によると、主要生命保険10社は2025年度下期に国債保有額を減らす見込みで、半期ベースでは3期連続の減少となります。日本生命保険やかんぽ生命保険などの大手が減額方針を示しています。

金利上昇に伴う含み損の拡大も深刻です。大手生保4社の国債含み損は2025年9月末時点で11兆3000億円に達し、3月末から3割増加しました。これ以上の長期債投資は財務リスクを高めることになります。

不安定な市場構造への懸念

問題は、海外投資家の多くがディーリング(短期売買)目的で市場に参加していることです。長期保有を前提とする国内生保・年金とは異なり、相場変動時に一斉に売りに転じるリスクがあります。

ピクテ・ジャパンのレポートは「ディーリングベースで市場に参加している外国人の国債購入に依存する構造は不安定」と警告しています。財政懸念や金利上昇懸念が強まれば、海外勢が売りに転じ、金利が急騰するシナリオも否定できません。

消費税減税公約と財政への影響

与野党そろっての減税競争

今回の金利急騰の直接的な引き金は、高市首相が1月19日の記者会見で表明した食料品の消費税一時撤廃構想です。「飲食料品について2年間に限り消費税の対象としない」という方針は、年間約5兆円の財源を必要とします。

与党・野党ともに消費税減税を衆院選の公約に盛り込む構図が固まり、市場は財政規律の弛緩を懸念しています。自民党が国政選挙で消費税減税を公約にするのは初めてで、かつての「財政規律派」としての矜持が問われています。

財政拡張路線への市場の警戒

高市政権は就任以来、積極財政路線を掲げてきました。その結果、国債市場は財政拡張への警戒を強め、利回りは上昇基調が続いています。

シンガポール取引所(SGX)は、日本の長期国債先物の上場を決定しました。世界第3位の規模を持つ日本国債市場の取引が活発化していることへの対応ですが、裏を返せば、金利変動リスクのヘッジニーズが高まっていることを意味します。

注意点と今後の展望

金利上昇が財政を圧迫するリスク

国債利回りの上昇は、政府の利払い費を増加させます。財務省は超長期債の発行を減らし、短・中期債にシフトする方針ですが、これは金利上昇時の利払い負担増大リスクを高めることになります。

また、利回り上昇(価格下落)は金融機関の含み損をさらに拡大させ、金融システムへの影響も懸念されます。日本銀行が保有する国債にも含み損が生じており、金融政策の正常化を進める上での足かせとなる可能性があります。

市場参加者の見方

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントのシニア債券ストラテジスト、Masahiko Loo氏は「4%を超えた40年債利回りは、為替ヘッジベースで見れば、国内外の長期投資家にとって魅力的な水準になりつつある」と指摘しています。

しかし多くの市場参加者は、財政懸念やインフレ懸念がくすぶる中、利回り低下の余地は限られるとの見方を示しています。2月8日の衆院選結果と、その後の財政政策の方向性が、今後の金利動向を左右することになります。

まとめ

日本の40年物国債利回りが4%を突破したことは、単なる数字の問題ではありません。国債市場の構造が大きく変化し、安定的な買い手が細る中で、海外投資家への依存度が高まっているという現実を示しています。

投資家にとっては、日本国債のリスク・リターン特性を再評価する必要があります。財政規律への信認が揺らげば、さらなる金利上昇も視野に入れなければなりません。一方で、4%という利回りは長期投資家にとって魅力的な水準でもあり、投資判断は難しい局面を迎えています。

2月の衆院選後、新政権がどのような財政運営を行うのか。その答えが、日本国債市場の行方を決めることになるでしょう。

参考資料:

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