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by nicoxz

コナズ珈琲新業態で何が変わる都市型ノーズコーヒーの勝算再点検

by nicoxz
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はじめに

トリドール傘下のKONA’Sが、ハワイアンカフェ「コナズ珈琲」の新ブランドとして「KNOWS COFFEE」を立ち上げました。1号店は2026年3月18日にイオンモール津田沼Southに開業し、5月下旬にはイオンレイクタウン内で2号店も予定されています。コナズ珈琲がこれまで強みとしてきたのは、広いロードサイド店で過ごす“いちばん近いハワイ”という非日常体験でした。そこから駅直結の商業施設へ軸足を広げるのは、単なる新店ではなく、出店モデルの転換として見るべき動きです。

背景には、喫茶業態の売上が堅調に推移する一方で、建設費や賃料、人件費の上昇が続く外食市場があります。大箱の郊外店だけでは取り込みにくい通勤客や短時間利用の需要をどう拾うか。この記事では、KNOWS COFFEEの特徴、トリドールの狙い、市場での勝算と注意点を整理します。

KNOWS COFFEEは何が新しいのか

ロードサイドの非日常から、駅直結の日常利用へ

KONA’Sの公式発表によると、KNOWS COFFEE 1号店は新津田沼駅直結、JR津田沼駅から徒歩7分のイオンモール津田沼Southに入り、営業時間は朝7時から夜10時、55席です。コンセプトは「いちばん近いサンセット」で、コナズ珈琲の「いちばん近いハワイ」から一段、日常側へ寄せています。阿部和剛社長も、これまでの“非日常の感動”に対し、新業態では“日常の余白”に寄り添うと説明しています。

この違いは立地だけではありません。コナズ珈琲は車で行く郊外型の滞在需要を取り込みやすい一方、KNOWS COFFEEは通勤前、買い物の合間、短時間の休憩、テイクアウトといった都市型需要に向けた設計です。日本食糧新聞も、KNOWS COFFEEを「コナズ珈琲より小型の55席」で、テイクアウトを充実させた日常使い可能なブランドと紹介しています。つまり新業態の本質は、世界観を薄めることではなく、利用シーンを細かく刻むことにあります。

コーヒーとパンケーキを残しつつ、オペレーションを軽くする

ブランドの核は維持されています。公式リリースでは、ハワイコナ100%のハンドドリップ、コナブレンド、ハワイアンティー、アサイーボウル、ライブ感のあるパンケーキバーが打ち出されています。ハワイらしさを保ちながらも、サラダ、サンド、テイクアウト向け商品を厚くしている点は、従来の滞在型レストランより回転と日常利用を意識した構成です。

この商品設計は、ロードサイド大型店の再現ではなく、都市型への翻訳とみるのが自然です。駅前や商業施設では、長時間滞在だけでなく、朝需要、単身利用、持ち帰り需要への対応が収益を左右します。55席という規模感に加え、スタンディングを含むカウンター席を置いたのも、短時間利用を取り込むための調整と考えられます。

トリドールはなぜ今、新業態を出すのか

コナズ珈琲は好調だが、次の成長には都市型が必要

コナズ珈琲はすでに小さなブランドではありません。KONA’Sの2月発表では国内51店舗、トリドールの2024年12月時点の決算説明資料でも48店舗まで増えています。しかもトリドールのIRでは、コナズ珈琲の新店や改装店が好調で、板橋店は国内有数の高売上店になったと説明されています。コナズ珈琲は、丸亀製麺に次ぐ国内成長ブランドの一つとして位置づけられているとみてよいでしょう。

ただし、IR資料を読むと、成長の前提条件が変わってきたことも見えてきます。トリドールは、建設費や賃料の上昇を踏まえつつ、選別的な新規出店で高収益立地を取る方針を示しています。さらに、中期的にはロードサイドとビルトイン型の両方で出店を進める考えも示しています。ここから逆算すると、KNOWS COFFEEはコナズ珈琲本体では収まりにくい駅ナカ、駅前、商業施設の需要を取り込むための別フォーマットだと考えるのが自然です。

市場環境も都市型カフェに追い風と逆風を同時にもたらす

市場全体を見ると、カフェ需要は底堅いです。全日本コーヒー協会によると、日本の2025年のコーヒー消費量は39万7272トンで、世界4位の水準です。日本フードサービス協会の2025年年間調査でも、喫茶業態は売上が前年超えを続け、客単価は年間で8.6%上昇しました。2025年12月単月でも喫茶売上は前年比108.2%、客単価は108.5%です。

一方で、追い風だけではありません。客単価上昇は、値上げや原材料高を反映した側面も大きく、消費者がいつまで高単価を受け入れるかは別問題です。コーヒー豆の調達価格、人件費、都市部賃料が重い環境では、広い空間をぜいたくに使う店ほど採算管理が難しくなります。だからこそ、ブランド体験を残しつつ面積、席数、商品構成を最適化した新業態に意味があります。

さらに立地面でも、イオンモール津田沼Southは約50の専門店で構成される新施設で、駅接続と日常来店の両方を備えています。新規商業施設の開業タイミングに合わせて入ることで、ブランド認知を一気に上げやすい利点もあります。コナズ珈琲本体の世界観ではやや重い立地でも、KNOWS COFFEEなら成立しやすい可能性があります。

注意点・展望

注意点は三つあります。第一に、ブランドの差別化が曖昧になるリスクです。コナズ珈琲と何が違うのかが伝わらなければ、既存客には縮小版、新規客には中途半端なハワイアンカフェに見えかねません。第二に、ハワイコナを前面に出す以上、原材料コストの管理が難しいことです。第三に、商業施設依存が強まると、館の集客や賃料条件に収益が左右されやすくなります。

ただ、展望はあります。KONA’Sは3月時点で2号店をイオンレイクタウン内に予定しており、再現性の検証を急いでいる段階です。もし駅直結やモール内で朝需要、テイクアウト、単身利用をうまく取れれば、コナズ珈琲本体とは別の出店パイプラインを持てます。トリドールにとっては、既存ブランドの人気を生かしながら、より多くの都市立地に入れる意味が大きいはずです。

まとめ

KNOWS COFFEEは、コナズ珈琲の人気に乗った派生ブランドというより、成長の次の一手としての都市型フォーマットです。駅直結55席、朝7時開店、テイクアウト強化という設計は、ロードサイド型では拾いにくかった日常需要を取り込むためのものです。

読者が押さえるべきポイントは、新業態の成否が「コナズらしさを残しながら、どこまで日常使いに落とし込めるか」にかかっていることです。2号店以降で立地が広がれば、トリドールはハワイアンカフェを郊外レジャー型から都市生活型へ広げることになります。外食の新業態として見るべき論点は、メニューの珍しさより、出店モデルの転換にあります。

参考資料:

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