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by nicoxz

ロンドン中国メガ大使館計画に反対デモ、判断期限迫る

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はじめに

2026年1月17日、ロンドン中心部で約1500人が参加する大規模な反対デモが実施されました。抗議の対象は、中国政府が計画するヨーロッパ最大規模の「メガ大使館」建設計画です。香港からの移住者や地域住民らが「No to Chinese embassy」と声を上げ、中国国旗に抗議の意思を示しました。

この建設計画は2018年に発表されて以来、安全保障上の懸念から3度にわたり承認が延期されてきました。英政府は2026年1月20日を最終的な判断期限としており、労働党政権の対中政策が試される局面を迎えています。本記事では、計画の詳細、反対運動の背景、そして英国が直面する外交的ジレンマについて解説します。

中国メガ大使館建設計画の全貌

旧王立造幣局跡地の巨大プロジェクト

中国政府は2018年、ロンドン中心部のロイヤルミントコート(旧王立造幣局)の敷地約2万平方メートルを約3億1200万ドル(約460億円)で購入しました。この場所はロンドン塔やタワーブリッジといった観光名所に近く、金融街シティーにも隣接する一等地です。

計画では、現在ロンドン市内に分散している7つの中国外交施設を統合し、ヨーロッパ最大規模の大使館を建設する予定です。最も注目されているのは、200室以上の地下施設が含まれている点です。報道によれば、これらの地下施設には高性能コンピューターを収容できる換気システムが備えられており、スパイ活動の拠点になる可能性が指摘されています。

重要インフラとの危険な近接性

安全保障専門家が最も警戒しているのは、大使館予定地が重要通信インフラに極めて近いことです。具体的には、金融街シティーとカナリーワーフを結ぶ光ファイバーケーブルが敷設されており、一部の地下施設はこれらのケーブルからわずか90センチメートル(3フィート)の距離に位置すると報じられています。

英国の経済と国家安全保障にとって極めて重要なこの通信網へのアクセスが可能になれば、情報収集活動のリスクは飛躍的に高まります。複数の安全保障専門家は、この計画を「完全に狂っている」「国家安全保障上の悪夢」と厳しく批判しています。

反対運動の高まりと多様な懸念

香港移民コミュニティの危機感

デモの中心となったのは、香港の民主化運動を経て英国に移住した人々です。2020年の香港国家安全維持法施行以降、多くの香港人が英国に避難しましたが、中国大使館の巨大化は「国境を越えた弾圧」のリスクを高めると懸念しています。

参加者の一人は「メガ大使館ができれば、中国政府による監視と威圧が強化される」と訴えました。実際、中国当局は海外在住の反体制派に対する圧力を強めており、大使館の規模拡大はその活動拠点となる可能性があります。デモでは「Free Hong Kong」の旗が多数掲げられ、人権と自由への強い思いが示されました。

地域住民の不安

ロイヤルミントコート周辺には約300人の住民が暮らしており、住民協会を結成して建設計画に反対しています。彼らの懸念は、中国政府が地主としての権力を行使し、地域コミュニティに影響を及ぼすことです。

また、大使館が完成すれば、警備上の理由から周辺道路の通行規制や監視カメラの増設が予想され、住環境の悪化も懸念されています。住民の一人は「私たちの日常生活が外国政府の都合で制限されることは受け入れられない」と述べています。

政治的な対立の激化

保守党党首のケミ・バデノック氏はデモに参加し、労働党政権に対して計画の却下を強く求めました。「中国政府は英国議員に対する嫌がらせや制裁を行ってきた。そのような国に巨大な拠点を与えるべきではない」との主張です。

一方、労働党内部でも意見は分かれており、複数の議員が首相に書簡を送り、安全保障上のリスクを警告しています。米国の共和党上院議員マイク・バンクス氏も、英国政府に対して計画を阻止するよう求める声明を発表するなど、国際的な圧力も高まっています。

英国政府のジレンマと判断の行方

対中関係改善と安全保障のバランス

労働党のキア・スターマー政権は、対中関係の改善を外交政策の一つの柱としています。経済協力の拡大やグローバルな課題での協調を重視する立場から、大使館建設の承認は中国との関係改善を示す象徴的な措置となり得ます。

しかし、英国の情報機関MI5をはじめとする安全保障当局は、中国によるスパイ活動のリスクを繰り返し警告してきました。特に近年、中国による産業スパイや政治介入の事例が相次いでおり、国内世論は警戒を強めています。

承認延期の経緯

当初2025年9月に設定されていた判断期限は、安全保障上の懸念を理由に3度延期されました。この異例の対応は、政府内部でも意見が分かれていることを示唆しています。報道によれば、英国の情報機関は「リスクは管理可能」との見解を示しているとされますが、その根拠や具体的な対策については公表されていません。

2026年1月20日の判断期限を前に、スターマー首相は難しい選択を迫られています。承認すれば国内の反発と安全保障リスクに直面し、却下すれば中国との関係悪化が避けられません。

国際的な文脈と今後の展望

欧州における中国の外交戦略

中国は近年、ヨーロッパ各国で大使館の拡張や新設を進めています。これは単なる外交機能の強化だけでなく、影響力拡大の一環と見られています。ロンドンのメガ大使館計画も、この戦略の重要な一部です。

欧州各国は、経済的利益と安全保障上の懸念の間で揺れ動いています。ドイツやフランスも中国との関係で同様のジレンマに直面しており、英国の判断は他国の政策にも影響を与える可能性があります。

今後の注目点

1月20日の政府判断が承認となった場合でも、建設着工までには詳細な安全対策の策定や地域との協議が必要となります。一方、却下された場合、中国政府がどのような対抗措置を取るかが注目されます。

また、この問題は英国国内の政治対立をさらに深める可能性があります。保守党は労働党政権の対中政策を批判材料とし、次期選挙での争点の一つとなるかもしれません。

まとめ

ロンドン中国メガ大使館建設計画は、現代の国際関係が抱える複雑な課題を象徴しています。経済的相互依存と安全保障上の対立、人権と外交、地域コミュニティと国家戦略——これらの要素が絡み合い、簡単な解決策は存在しません。

1月20日の英国政府の判断は、単に一つの建設計画の承認・却下にとどまらず、今後の対中政策の方向性を示す重要な指標となるでしょう。国際社会は、英国がどのような選択をするのか、そしてその判断が他国にどのような影響を与えるのかを注視しています。

市民の声、安全保障の要請、外交的配慮——これらをどのようにバランスさせるかが、民主主義国家としての英国の真価を問う試金石となります。

参考資料:

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