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by nicoxz

トランプ氏が外交メッセージを暴露、マクロン氏のG7提案が波紋

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はじめに

2026年1月20日、トランプ米大統領は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で異例の投稿を行いました。フランスのマクロン大統領やNATOのルッテ事務総長から受け取った私的なテキストメッセージのスクリーンショットを公開したのです。

マクロン氏はトランプ氏に対し、22日にパリで主要7カ国(G7)首脳会議を開催することを提案していました。ウクライナ、デンマーク、シリア、ロシアの代表者との協議を行い、夕食も共にしようという内容です。仏大統領府はこのメッセージが本物であることを認めました。

首脳間の私的なやり取りを公開するという極めて異例の行動の背景には、グリーンランドの領有をめぐる欧米の深刻な対立があります。公の場では対立を演じながらも、水面下では融和を図る欧州指導者たちの姿が浮き彫りになりました。

公開されたメッセージの内容

マクロン氏からのメッセージ

ワシントン・ポスト紙によると、マクロン氏のメッセージは「My friend(友よ)」という呼びかけで始まり、グリーンランド問題をめぐって欧州各国が公式に行っている批判とは対照的に、丁寧な口調で書かれていました。

メッセージの中でマクロン氏は「シリア問題では完全に一致している。イランに関しても素晴らしいことができる」と述べ、協調姿勢を示しました。しかし続けて「グリーンランドであなたが何をしているのか理解できない」と率直な疑問を呈し、その直後に「素晴らしいことを一緒に築こう」と提案しています。

具体的には、ダボス会議後にパリでG7会合を開き、ウクライナ、デンマーク、シリア、ロシアの代表者との協議を行うことを提案。さらにトランプ氏の帰国前に夕食を共にすることも持ちかけました。

ルッテNATO事務総長からのメッセージ

トランプ氏はNATOのマーク・ルッテ事務総長からのメッセージも公開しました。NATOはこのメッセージが本物であることを認めています。

ルッテ氏は「Dear Donald(親愛なるドナルド)」という呼びかけで始まり、シリア、ガザ、ウクライナにおけるトランプ氏の行動を称賛。「グリーンランドに関して前進する方法を見つけることにコミットしている」「お会いできるのを楽しみにしています。マークより」と締めくくりました。

ルッテ氏はさらに、ダボス会議での自身のメディア対応において、トランプ大統領の取り組みを強調すると約束していました。

公式発言との落差

欧州の公式な強硬姿勢

フォーチュン誌は「欧州指導者たちの私的メッセージは、グリーンランドをめぐる公式な強硬姿勢とは全く異なるトーンだった」と報じています。

デンマークと8つのNATO同盟国は「北極の忍耐作戦」として、グリーンランド防衛のための軍事増強を実施しました。デンマークのピーター・ボイセン将軍は「グリーンランドを防衛する準備ができている」と宣言しています。

マクロン氏自身も、1月8日には米国が同盟国を「徐々に見限り」、国際ルールから「離脱」していると警告し、トランプ政権下の米国政策を「これまでで最も強い言葉で」批判したとAFP通信は報じています。

水面下での融和姿勢

しかし私的なメッセージでは、両指導者ともトランプ氏に対して丁寧で協調的な姿勢を示していました。フランス当局者はグリーンランドについて「国家の主権と領土保全の尊重は譲れない」としながらも、私的なチャンネルでは対話の継続を模索していることが明らかになりました。

NBCニュースは「水面下では公式な批判よりも穏やかなトーンが見られる」と分析しています。

グリーンランド問題の深刻化

トランプ氏の強硬姿勢

トランプ氏はグリーンランドの獲得を「国家安全保障上の優先事項」と位置づけ、軍事力の行使も排除しない姿勢を示しています。ホワイトハウスのレビット報道官は「北極地域で敵対勢力を抑止するために不可欠」と説明しました。

グリーンランドには米国のピトゥフィック宇宙基地があり、北極上空からのミサイル攻撃に対する防衛の最前線として機能しています。トランプ氏は自身の「ゴールデン・ドーム」対ミサイル構想に不可欠だと主張しています。

欧州8カ国への関税威嚇

トランプ氏は1月20日、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フランス、英国、オランダ、フィンランドの欧州8カ国に対し、2月1日から10%、6月1日からは25%の関税を課すと表明しました。これはグリーンランド防衛のための軍事演習を実施した国々への報復措置です。

トランプ氏の反応

マクロン氏のG7会合提案に対し、ホワイトハウス当局者はフォックス・ニュースに対して「現時点でパリへの訪問予定はない」と回答しました。

トランプ氏は代わりに、ルッテNATO事務総長との電話協議を経て、スイス・ダボスでの関係者会合には同意したと投稿しました。「グリーンランドは国家および世界の安全保障にとって不可欠だ。後戻りはあり得ない」と強調しています。

ダボス会議の緊張した空気

過去最大規模の開催

世界経済フォーラム(WEF)年次総会は1月19日に開幕し、各国首脳や企業経営者ら約3000人が参加する過去最大規模となりました。23日まで「対話の力」をテーマに議論が行われますが、皮肉にも米欧間の対話は危機的状況にあります。

トランプ氏は21日に演説予定で、6年ぶりの現地参加となります。一方、EU各国首脳はグリーンランド問題への対応を協議するため、会議の場を活用しています。

ウクライナ問題は後退

フィナンシャル・タイムズ紙によると、EU首脳らはウクライナと和平プロセスに関する議論を急遽縮小し、グリーンランド問題を中心議題に据えています。トランプ政権の予測不能な動きへの対応が最優先課題となっている状況です。

注意点と今後の展望

外交慣例の逸脱

首脳間の私的なやり取りをSNSで公開するというトランプ氏の行動は、外交慣例から大きく逸脱しています。今後、各国指導者がトランプ氏との私的なコミュニケーションに慎重になる可能性があります。

一方で、この「暴露」は欧州指導者たちの「二枚舌」を世界に示す効果もありました。公の場では強硬姿勢を示しながら、私的には融和を図る姿勢は、国内の対米強硬派からの批判を招く可能性もあります。

マクロン氏の戦略

ロシアの政治専門家ドミトリー・ススロフ氏は、マクロン氏の狙いを「トランプ氏に欧州と、そして西側の集団的な枠組みの中で交渉を行わせること」と分析しています。G7へのロシア招待構想も含め、マクロン氏は崩壊しつつある西側の結束を立て直そうとしているという見方です。

グリーンランド問題の行方

デンマーク政府は「根本的な見解の相違がある」としながらも、外交的解決を模索する姿勢を示しています。元駐仏米国大使ニック・バーンズ氏は「鉱物資源へのアクセスと軍事基地という、トランプ政権が求めるものを得る方法はある。それはデンマークを尊重し、外交的に協力すること」と指摘しています。

まとめ

トランプ氏による私的メッセージの公開は、グリーンランドをめぐる欧米対立の複雑な様相を浮き彫りにしました。公式には対立を演じながらも、水面下では対話を続ける欧州指導者たちの姿が明らかになりました。

マクロン氏のパリG7提案は現時点で実現の見通しが立っていませんが、ダボス会議での非公式協議を通じて、何らかの妥協点が模索される可能性はあります。

グリーンランド問題は、単なる領土問題を超えて、米欧同盟関係の根幹を揺るがす事態に発展しています。今後の展開は、NATO同盟の結束と国際秩序の行方を左右することになるでしょう。

参考資料:

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