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by nicoxz

男性の時短勤務が広がる育児と仕事の新しい選択

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はじめに

男性の育児休業取得率が上昇する一方で、育休後の時短勤務を活用する男性はまだわずかです。給与やキャリアへの懸念、職場の理解不足など理由は様々ですが、「働き方は変えられない」と諦める前に立ち止まる必要があります。2024年度に男性の育休取得率が初めて40.5%を超え、2025年4月からは育児時短就業給付金が新設されるなど、制度面での追い風が吹いています。本記事では、時短勤務を活用しながら成果を出す男性たちの実践と、変わりつつある日本の育児支援制度について詳しく解説します。

男性育休と時短勤務の現状

育休取得率は上昇、しかし時短は少数派

2024年度の育児休業取得率は女性が86.6%、男性が40.5%となり、男性の取得率は前年度を10.4ポイント上回って過去最高を更新しました。2023年度の30.1%から大きく伸びており、政府が掲げる2025年50%、2030年度85%という目標に向けて着実に前進しています。

しかし、育休取得後の時短勤務となると状況は大きく異なります。育休を取得する男性は増えているものの、その後の働き方を変える男性は依然として少数派です。女性の90%以上が6カ月以上の育休を取得するのに対し、男性の約40%は2週間未満という短期間にとどまっています。

時短勤務を選ばない理由

男性が時短勤務を選択しない主な理由として、以下の点が挙げられます。新たに父親になった男性が育休を取得しなかった理由の調査では、「会社が準備できていなかった」(23.4%)、「会社が育休取得を望んでいないと感じた」(21.8%)、「収入減少が心配」(22.6%)が上位を占めました。

これらの懸念は時短勤務についても同様で、特に給与面での不安とキャリア形成への影響が大きな障壁となっています。時短勤務が長期化することで「マミートラック」(昇進や重要な業務から外される)を助長する恐れがあるという指摘もあります。

保育園落選とワンオペ育児の現実

育児と仕事の両立を困難にしているのが、保育園の入園問題です。2025年4月からは、育休延長の審査が厳格化され、「落選狙い」(意図的に倍率の高い保育園のみに応募して不承諾通知を得る)への対策が強化されました。

しかし、実際には遠方の保育園しか空きがない、あるいは配偶者が長時間労働で実質的にワンオペ育児になっているなど、育休を延長せざるを得ない切実な事情を抱える家庭も少なくありません。ある母親は「夫が深夜まで働き、実質的に一人で育児をしている状態で、保育園への送迎に時間がかかれば仕事との両立は極めて困難」と語っています。

2025年の法改正と新制度

育児時短就業給付金の新設

2025年4月から、「育児時短就業給付金」が新たにスタートしました。この制度は、2歳未満の子どもを育てながら時短勤務で働く従業員を対象に、時短勤務中の各月に支払われた賃金額の約10%を支給するものです。

この給付金は男女ともに対象となり、夫婦でうまく時短勤務を組み合わせれば、育児と仕事の両立による負担が減り、それぞれのキャリアを継続できる可能性が広がります。ただし、時短勤務を長期化させ、結果的にキャリア形成を阻害する「マミートラック」を助長する恐れがあることが懸念点として指摘されています。

柔軟な働き方の整備義務化

2025年4月の育児・介護休業法改正により、3歳以上小学校就学前の子どもを養育する従業員に対して、企業は以下のような柔軟な働き方を2つ以上提供することが義務付けられました。

  • フレックスタイム制度やシフト変更
  • テレワーク(月10日以上)
  • 新たな休暇制度(年10日)
  • 時短勤務制度の継続

また、2025年4月からは、3歳未満の子どもを持つ従業員が希望すればテレワークを認めるよう、企業に努力義務が課されました。2025年10月からは、3歳から小学校入学までの子どもを持つ従業員にも、2つ以上の柔軟な働き方を提供することが義務化されます。

育休給付の手取り10割化

政府は2025年度から育児休業給付の引き上げを予定しており、手取りが実質10割になる方向で検討が進んでいます。また、育休取得状況の公表義務は、従業員規模100名以上の企業に拡大される予定です。

これらの制度改正は、男女ともに育児とキャリア形成の両立を支援し、男性の育児参加を促進することを目的としています。

時短勤務で成果を出す実践例

日本企業の先進事例

日本IBM(日本アイ・ビー・エム) 時短勤務を積極的に導入しており、通常の60%や80%の勤務日数で仕事ができ、週休3日〜4日で働くことが可能です。育児や介護などで仕事の継続が難しくなった場合、フルタイムから時短勤務に切り替え、状況が変われば元のキャリアに復帰できる仕組みも用意されています。

パーソルテンプスタッフ 2015年に時短勤務者だけを集めた部署を開設し、時短勤務者が活躍できるように夕方以降の電話対応方法を変えるなど、業務改革を進めました。時短勤務であっても成果を出せる環境を整備することで、多様な人材の活用と生産性向上を両立させています。

労働時間短縮と生産性向上の関係

日本の建築設計コンサルタント企業のプロジェクト管理データを用いた研究では、労働時間の短縮によってチームの生産性が向上することが確認されています。特に、チームの主要メンバーの長時間労働がチーム全体の生産性を低下させており、労働時間が短縮されると労働者が疲労から回復し、エネルギーと集中力を高めて仕事に臨むため、逆の効果が見られました。

この研究結果は、時短勤務が単なる「働く時間を減らす」だけではなく、適切に実施すれば生産性向上につながる可能性を示しています。

育休取得男性のスキル向上

育休を取得した男性の多くが、育児経験を通じて多様な価値観を持つ人々への理解が深まったことに加え、時間管理能力やマルチタスク能力といったビジネススキルが向上したと実感しています。

優秀な社員の場合、短時間でも働いてもらい、育児や介護が一息ついた時点で復帰をしてもらえることは、企業にとっても生産性の点から大きなメリットがあります。

時短勤務を成功させるポイント

成果志向の働き方への転換

時短勤務で成果を出すためには、労働時間ではなく成果で評価される働き方への転換が不可欠です。限られた時間の中で最大の成果を出すために、優先順位の明確化、不要な会議の削減、業務の効率化などが求められます。

リモートワークとの組み合わせも効果的です。2025年4月の法改正により、3歳未満の子どもを持つ従業員へのテレワーク提供が努力義務化されたことで、通勤時間の削減と柔軟な勤務時間の設定が可能になります。

職場の理解と協力体制

時短勤務を成功させるには、職場全体の理解と協力が必要です。時短勤務者だけを集めた部署を作る、業務プロセスを見直す、夕方以降の連絡方法を変えるなど、組織全体での取り組みが重要です。

また、男性の育児参加を促進する企業では、働き方改革として労働時間の短縮に積極的に取り組んでいます。これは時短勤務を特別扱いするのではなく、全社的な働き方の見直しの一環として位置づけることで、時短勤務者への理解を深める効果があります。

夫婦での役割分担とキャリア設計

夫婦でうまく時短勤務を組み合わせることで、それぞれのキャリアを継続しながら育児との両立が可能になります。例えば、育休明けの最初の1年は夫が時短勤務、その後は妻が時短勤務に移行するなど、時期をずらして活用する方法もあります。

男性の育休取得は、女性の就業継続やキャリア形成を後押しする効果も期待されています。男性が積極的に育児に関わることで、女性のキャリア中断を防ぎ、夫婦双方のキャリア形成を支援することができます。

注意点と課題

マミートラックのリスク

時短勤務の最大の懸念は、長期化することで昇進や重要な業務から外される「マミートラック」に陥るリスクです。時短勤務であっても成果を出し、キャリアを継続するためには、本人の努力だけでなく、企業側の評価制度の見直しも必要です。

労働時間ではなく成果で評価する制度への移行、時短勤務者でも重要なプロジェクトに参加できる機会の提供、復帰後のキャリアパスの明確化などが求められます。

中小企業での導入の難しさ

2024年度の育休取得率を見ると、大企業では男性の取得率が上昇している一方で、中小企業では伸び悩んでいます。人手不足や業務の属人化が進んでいる中小企業では、時短勤務の導入自体が困難な場合も少なくありません。

中小企業での時短勤務推進には、業務の標準化、チーム制の導入、外部リソースの活用などが必要ですが、これには時間とコストがかかります。政府による中小企業向けの支援制度の拡充が求められています。

給付金制度の限界

育児時短就業給付金は時短勤務中の賃金額の約10%を支給するものですが、時短勤務による収入減を完全にカバーするものではありません。特に世帯収入が限られている家庭では、経済的な理由から時短勤務を選択できないケースもあります。

また、給付金の支給期間は2歳未満の子どもを持つ従業員に限られており、3歳以降の時短勤務には給付金がありません。育児と仕事の両立が困難な時期は子どもの年齢によって異なるため、より柔軟な支援制度が求められます。

まとめ

男性の育休取得率が40.5%を超え、育児参加の機運が高まる中、育休後の働き方として時短勤務を選択する男性はまだ少数派です。しかし、2025年4月からの育児時短就業給付金の新設や柔軟な働き方の整備義務化により、制度面での環境は整いつつあります。

時短勤務で成果を出すには、労働時間ではなく成果で評価される働き方への転換が必要です。日本IBMやパーソルテンプスタッフなどの先進企業の事例が示すように、適切な業務改革と組織全体の理解があれば、時短勤務は生産性向上にもつながります。

夫婦で時短勤務をうまく組み合わせ、それぞれのキャリアを継続しながら育児との両立を実現する。そんな新しい働き方の選択肢が、少しずつ現実のものとなってきています。給与やキャリアへの不安を完全に解消することは難しいかもしれませんが、「働き方は変えられない」と諦める前に、利用可能な制度と職場の理解を得る努力を重ねることが、育児と仕事を両立させる第一歩となるでしょう。

参考資料:

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